世間に転がる意味不明:すぐには毀損されないブランド価値に安住することの危険(パナソニック、郵政の不正に思う)
2024年度を振り返って。
■無くならない不正の連鎖
一昨年の「ダイハツ」の不正問題は、会社の規模の大きさもあり衝撃的であった。
こうした不正は、少なからず景気全般への影響も時間差で出てくることになり、看過できない事項であろう。
○広告景気年表 電通 2024年
住宅着工は前年比3.4%減と2年連続の減少。新車販売は前年比7.5%減と2年ぶりのマイナス。登録者が5.6%減、軽自動車が10.7%減。販売台数は442万でダイハツの認証不正が影響し減少。百貨店は6.8%増で4年連続の増加。スーパーも2.7%増と5年連続のプラス。コンビニも1.1%増と4年連続のプラス。失業率は年平均2.5%と微減。12月の失業者数は154万人で前年同月に比べ2万人減少となり、5か月連続の減少。
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_nenpyo.htm
様々な要因が重なって景気は変動するので、景況感の悪化は単純に判断できないが、こうした大手の不祥事は全体として良い結果を生み出さないコトは自明であろうと思う。にもかかわらず、不正の報道が続くことが止められない。
そしてそのほとんどに「組織風土」が指摘されている。
○川重に「不正当然の風土」 裏金で調査結果、社長ら処分
2024年12月27日
調査結果は、川重が委嘱した外部弁護士3人で構成する特別調査委員会がまとめた。不正は「遅くとも約40年前から」と認定。確認できた2023年度までの6年間で約17億円の架空取引を行って契約にない物品を購入したほか、捻出した裏金を隊員の接待や一部の隊員と従業員の私物購入に充てていた。
調査結果は不正の原因として、潜水艦修理部門の「コンプライアンス(法令順守)軽視」「事なかれ主義」も指摘した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024122700858
こうした組織風土が現場のコンプライアンスをゆがめる。
下記もその一例であろう。
○ カナデビアの船舶エンジン不正、当時の会長・社長ら黙認
2025年3月25日
カナデビア(旧日立造船)は25日、子会社2社が船舶用エンジンの燃費データを改ざんしていた不正について、弁護士で構成する特別調査委員会がまとめた報告書を公表した。2015年には当時の会長や社長が報告を受けたにもかかわらず黙認したと指摘した。現場への様々なプレッシャーが改ざんを常態化させたとしている。
あわせて再発防止策もまとめた。品質保証部門の人員増強や取締役会の監督機能の強化などを柱としている。
同日、大阪市内で開いた記者会見で桑原道社長は「ステークホルダーの信頼を大きく損ね、ご迷惑をおかけした。深くおわび申し上げる」と謝罪した。この問題が発覚して約8か月後にようやく記者会見を開いたことについては「当時、不確実な情報しか持っていなかった。相当の調査をして開いた方が良いと判断した」と弁明した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2569H0V20C25A3000000/
■巨大組織の風土改革の難しさ
郵政事業については、かんぽの不正、下請法違反、低迷での配送など不祥事はとどまるところが見えず、コンプライアンス意識の低さを露呈してきている。
○ 郵便局のゆうちょ顧客情報流用、「998万人」に拡大 投信も国債も
2025年3月18日
郵便局の窓口では、金融商品を売り込む顧客を物色するため、ゆうちょの貯金額や満期時期などを使って顧客をリスト化する行為が横行していた。非公開金融情報を同意なく他の業務などに使うのは保険業法や銀行法違反にあたる。
https://www.asahi.com/articles/AST3L2J1WT3LULFA013M.html
こうした結果、社長交代という事態にもなっている。
経営者が「コンプライアンス」を口に出したところで、文化が変らなければ実効性はない。
一方で、経営トップがこれを語らない限り文化も変えようがない。
評価は難しいが、下記の様なコミットメントも重要であろう。
○三菱電機グループサステナビリティレポート2021
また、この度は、一連の品質不適切事案につきまして、多くのステークホルダーの皆さまに多大なる社 会ガバナンスステークホルダーの皆さまには、より透明性を高めた品質管理に関する当社グループの取組を示しご迷惑をお掛けしていることを、あらためて深くお詫び申し上げます。当社は、2021年10月1日に、外部専門家で構成する調査委員会より、一部の品質不適切事案に関する調査報告書を受領しました。この調査報告書を真摯に受け止め、品質風土、組織風土、ガバナンスの「信頼回復に向けた3つの改革」を進めてまいります。これらの改革は、重要な道のりの最初の一歩に過ぎません。私はこの改革を、全従業員が共通の目標に向かって一致団結する契機にしたいと考えております。私たちは、これらの課題に真正面から取り組むことをお約束いたします。改革は短期では達成できません。本質的な改革を着実に前に進めていくために、様々なステークホルダーの皆さまとの対話を深めることが重要です。
https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/sustainability/download/csr/pdf/sr2021_all.pdf
■巨大すぎるが故のフットワークの悪さ
しかし、こうしたコミットメントは組織全体を揺るがすような事態にならなければ難しいのではないかと危惧する事例もある。それがパナソニックである。
パナソニックに関しての不正の報道が目につく。
○パナソニック、業務用空調機器の公共建築協会評価実施要領への不適合と仕様未達について発表
2024年12月26日
パナソニック株式会社 空質空調社が製造、販売している業務用空調機器の設備用床置タイプにおいて、一般社団法人公共建築協会(以下、公共建築協会)(※1)の評価実施要領の不適合があったことが判明しました。
・事案(1) : 公共建築協会へ評価申請時に提出した試験成績書において、本来は実測値を使用すべきところ、計算に基づく値を記載していました。
・事案(2) : 改めて公共建築協会に提出した試験成績書の全項目について実測したところ、一部機種において暖房能力や消費電力を満たしていないことが分かりました。また、公共建築仕様(※2)以外の設備用床置タイプの一部機種においても、カタログに記載している暖房能力や消費電力が未達であることが判明しました。
これを受け、本日、公共建築協会より評価書効力の一時停止とする通知を受領しましたので、お知らせいたします。
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP684588_W4A221C2000000/
○ パナHD系、国内工場ISO認証取り消し 材料に続き部品も
2025年2月21日
パナソニックホールディングス(HD)傘下の電子部品事業会社、パナソニックインダストリーは21日、顧客が求める品質に満たない電子部品を製造する問題が発覚した伊勢工場(三重県玉城町)について、国際標準化機構(ISO)の認証が取り消されたと発表した。電子材料を手掛ける国内工場に続き、部品工場も処分を受けた。
伊勢工場が手掛ける半導体デバイスなどの製造について、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証が21日付で取り消された。電子材料を製造する郡山工場(福島県郡山市)など国内4工場のISO認証はすでに取り消されている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF219DC0R20C25A2000000/
これだけではない。検索すれば色々出てくるであろう。
しかし、気になるのは、一体どこが全体としての方向性についてコミットするのだろう。少なくとも、私が資料を(簡単かもしれないがざっと)見ている限り見つからない。
ビッグモーターのような例は、特殊な例ではあるがブランドの既存は徐々に聞いてくることがある。それは、単純に業績かもしれないが、人々の心に残ることにより、求心力の低下を招き、人材獲得の難しさ(採用率の低下、離職率の増加)につながるかもしれない。それはほんの少しの変化でしかない。気がついたときには遅いと認識すべきであろう。
2025/03/31