「コーチングが人を活かす 鈴木善幸」 2013年


「コーチングが人を活かす 鈴木善幸」 2013年

本社にはコーチングを担う人々へのアドバイスが詰まった一書である。
具体的なアドバイスは50のスキルとしてそのポイントを示している。

●質問し、応えを受け取ったことを伝え・・・
●相手の話を質問によって、自分の中で「絵」になるまで具体化していく。
●「おはよう」の一言さえ、関係を作るチャンスにできる
●未来についてできるだけ具体的なイメージを描かせる

本を一貫して流れる考え方は「言葉のキャッチボール」を重視すると言うことだ。
もっとも、その通りにしたら旨く行くかと言えば疑問符がつく。

「どうしたら良いか分からないんです」
「ではその答えを見つけるためにはどんな行動がとれますか」

と言うことをアドバイスするが、こうした応答と質問をしたところで、問題が解決するとは限らない。同様に下記なども分かるが、「それでどうした」という感が抜けきらず、納得性が低い

「人の話を聞くときに、自分の内側に意識を向けてみてください。そこに何らかの「反応」を見つけたら、是非それを言葉にして相手に伝えてみてください。」

もともと、コーチングを生業としたかった訳ではなく、当時話題になっていた「コーチング」という言葉に引かれただけである。この本は「コーチング」に関するマニュアル本でもないし指針を示しているわけでもない。

示される50のポイントで納得できるものもほとんどない。
とはいえ、なるほどなと思うセクションもある。

●理想の状態を10点満点として居間の状態を採点させる。

これは、かつて経営品質賞の審査において経営者インタビューで使ったテクニックの一つであり、今でもISO9001の審査で使うことがある。

こうした質問をすることで、
・何を目指しているのか
・何ができていて何ができていないか
。次の一手(施策)は何を考えているのか
・それはうまく行くという確信を持てるのか

と言う会話につながる。
また、ISO9001の審査で、これは維持したいと思うこともあり「SKILL41:褒め続ける」も有効だと思う。

目をひいた箇所に下記がある。

●多くの若者は「目標を達成して、それで?」と思っています。だから目標を達成したらそれはどんな「いいこと」を自分にもたらしてくれるのかと言うことも含めて、目標についてたくさん。呆れるくらい誰かと話す必要があります。そうしてはじめてその人は目標というものに意識が集中し「やってみようか」と思うのです。

「多くの若者」というステレオタイプ的な物言いは好きではない。しかし、目標という言葉を安易に使っている事例も多い。審査では限られて時間しかなく踏み込めないが念頭に置いておきたい本ではある。

とはいえ、内容は常識的な文言の連なりである。私には手元に置いておく価値も無いので断捨離します。

2025/04/05