「Employee Happiness 社員幸福度 株式会社ピアズ 桑野隆司」2018年
株式会社「ピアズ」は2016年度日本経営品質賞を受賞した企業である。
●2005年に名古屋で創業した「ピアズ」は、通信キャリアの店舗コンサルティングや。セールスプロモーションを主とする企業です。
とあるように、ターゲットとしている業種は「通信キャリア」であり、この時点では成長を続けており、他社の規範となる企業といえる。
私自身は日本経営品質賞とも多少の関わりがあり、「ピアズ」に訪問・見学しており、経営者の方ともお話を聞く機会があった。
本書の表題に「10年連続黒字」とあるが、かれが順風満帆であったわけではなく、「ピアズ」の前身となる企業では大きな挫折を経験しているし、操業時から何も苦労をしていないわけではない。
●2度の失敗を繰り返したからこそ、私はたくさんのことを学びました。ひとつは、お金では人は動かせないと言うことです。そしてもう一つは「組織づくり」というのは「仲間づくり」だと言うことです。
(中野注:動かないという意味ではない。お金の力で人がいやがる仕事を強制できないという意味である。)
●企業の経営陣が利己的な人間だったらどうでしょう。自分たちの会社を大きくするためだけ、お金儲けのためだけに動いていたとしたら。利己的な経営者と利己的な社員は、いつか衝突し、うまくいかなくなります。
「仲間づくり」はこうした中で彼らが重視する方向性であり、それの試行錯誤の中で生み出されたのが「ハピネスサイクル」であろう。(中野注:私が見学した時点ではこのような用語は使っていなかった。)
・ポリシーを伝え社員をしあわせにする。
・ES→EHが上がる
・風土が良くなる
・CSが上がる
・業績が上がる
(注記:「ハピネスサイクルとは何か」については本書を読んでもらえれば良い)
この中で、大切にしているものを表す言葉が随所に出てくる。
●私は「経営者とは社員に対して常に片思いをしているようなもの」と考えています。
●「経営者は社員をしあわせにする義務がある」「マネージャーは部下をしあわせにする事が仕事である」
●会社をアウェイからホームへ・・・早く家に帰りたい、残業したくない、休みがたくさん欲しいと思う人がいるのは、その人たちにとっては会社は「ホーム」ではなく「アウェイ」な場所になっているからです。
残念ながら、本書の施策を真似しても旨く行くわけではない。
サンクスカードなども、これをすれば成功を約束されているわけではない。しかし、満足ではなく感動を」というコンセプトは自分の会社の独自性を生み出す源泉になり得る。
(中野のあとがき)
私自身は2000年頃から日本経営品質賞のセルフアセッサーとなり、しばらく前までは審査員としての活動をしていた。その過程で、日本経営品質賞の受賞組織や優れた企業の講演や企業見学なども行なっており、その縁で入手した本の一つである。
経営をどのように舵取りをしようかと迷っている経営者には一読して欲しい。
すべてをまねることはしなくとも良い。経営には独自の文化観や価値観がある。それを損なわない答えは経営者自身しか見つけられない。それでもヒントになりうる良い本だと思う。
2025/05/06