戦略人事:避けられない職能給から職務給への転換(常態化するリストラ)


■常態化するリストラ

◇日産、世界で2万人規模の人員削減検討…従業員数の15%に相当する追加リストラ
2025/05/12

 経営再建中の日産自動車が、世界で2万人規模の人員削減を検討していることが、12日わかった。連結従業員数の15%程度にあたる。昨秋時点では9000人の削減を公表しており、1万人超を追加する方向だ。世界的な販売不振に陥る日産は、従来の再建策では不十分とみて、追加リストラの策定を急いでいる。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250512-OYT1T50160/

日産自動車とホンダの統合話が出ていた頃から日産の業績悪化が問題視されていた。無策とまでは云わないものの起死回生の施策などを聞くこともなくやはりと思うような展開である。

近年の企業の業績悪化は、短時間で企業環境が変る事への対応の遅れが致命的になる傾向が強い。日産だけが特別なわけではなくどのような企業であってもこうした急激な業瀬kの悪化によりリストラが起きうる。

もっとも、こうしたリストラは単に業績が悪くなるという外圧で起きるわけではなく、戦略的な方向性として実施される場合もある。

◇ パナソニックHDの早期希望退職募集 2012年以降の国内募集で最大規模、13年ぶり募集5,000人台
2025/05/09

 パナソニックホールディングス(株)(TSRコード:570191092)は5月9日、国内外で1万人規模の人員削減を発表した。国内は5,000人規模の見込みで、早期希望退職数では2012年のルネサスエレクトロニクスの募集人数5,000人(応募者数:7,511人)以来、13年ぶりの5,000人台となる。

2025年の上場企業の「早期・希望退職募集」は5月9日現在、今回のパナソニックHDを含め14社が判明、募集人員は合計で6,773人に達する。さらに、2024年11月にグローバルで9,000人規模の削減を発表した日産自動車の詳細がこれから発表される予定で、事業構造改革に伴う大型募集が本格化してきた。

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201380_1527.html

2024年問題で人手不足という一方で、戦略的な人材の選別も行なっている事は、その対象が高齢者を狙い撃ちしていることからもうかがい知れる。

◇ マツダ、希望退職500人募集 50~61歳の正社員が対象
2025年04月22日

マツダは22日、500人の希望退職者を募集すると発表した。勤続年数5年以上の50~61歳で、国内外の工場勤務を除く正社員が対象。今年6月から来年12月にかけて最大4回の申請を受け付ける。退職金の割り増しや再就職の支援などを行う。
制度の名称は「セカンドキャリア支援制度」。マツダで積み重ねた経験やスキルを生かし、社外での活躍を目指す社員の選択を後押しする。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025042200909

■日本型雇用の崩壊

◇ 「人員は少し足りないぐらいがちょうどいい」
 1万人削減のパナソニックHD楠見社長
2025/5/9

パナソニックホールディングス(HD)は9日、経営改革の一環としてグループ人員を1万人削減すると発表した。営業・間接部門を中心に業務効率を見直し、2027年3月期までに国内、海外でそれぞれ5千人規模の削減を実施。人員の適正化により700億円の収益改善を見込む。
グループ全体の従業員数は25年3月末時点で約20万8千人で、1万人の人員削減は約5%にあたる。業務効率化に加えて、収益改善が見通せない赤字事業の終息や拠点統廃合、国内での早期希望退職の募集によって人員を削減する。

人員適正化に関して楠見社長は「人員は少し足りないぐらいがちょうどいい。余裕のある人員数は人が成長する機会を奪っていると考えている」と述べ、収益改善に向け、断固たる姿勢で人員削減する方針を示した。

https://www.sankei.com/article/20250509-E46PQUCRKFP7LDXZQZZLCO3ZFU/

まったく、これは本音なのだろう。
AI時代になれば、それを使いこなす人材が必要になり、人材要件のポートフォリオも変更されてゆくだろう。その中核はジョブ型雇用であり、職能資格制度は維持できなくなり職務給への移行を余儀なくされる。政府の施策もこれを後押ししているように見える。

◇職務給(厚生労働省資料)
 職務給は「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」として、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「成長分野への労働市場円滑化」と並び、三位一体の労働市場改革の柱の1つとされています。 職務の内容や重要性などを基に給与水準が決められますが、その形態や位置づけは企業によって様々です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syokumukyu.html

職能資格制度は、新卒一括採用・年功賃金・終身雇用などの人材定着を前提とした制度であり、組織の安定性に寄与する優れた制度であっただろう。しかし、サプライチェーンがグローバル化し、経営環境の変化の速度が上がっている中で、事業の再構築は頻繁に要求される中で「能あるものに職を、功あるものに碌を」を明確化しなければならず、その一つの表れが職能給から職務給への転換とジョブ型雇用への移行だろう。

しかし、こうした事は諸刃の剣のようなものだろう。「能あるものに職を、功あるものに碌を」は否定はしない。しかし。そこに乗り遅れた人には下船を強要し、今ある人たちにはプレッシャーをかけ続けるだろう。

また、そうした事に対応でき無い人々に諦めの感情をもたらすことも良いことだとは思えない。

◇ 「仕方ない」 「まだ頑張る」 1万人規模の人員削減 パナソニック製造拠点の従業員
2025/5/10

パナソニックホールディングス(HD)がグループの経営改革の一環で、1万人規模の人員削減に踏み切る方針を明らかにした9日、群馬県大泉町に製造、開発拠点を置く傘下の事業会社で働く従業員に動揺が広がった。「この流れは仕方ないと感じる」「まだまだ頑張りたいが…」などと先行きへの不安や戸惑いを口にした。

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/671540

■戦略人事の方向性(キャリアに真剣に向き合うこと)

一定程度の規模(例えば500人以上の従業員を抱える企業)では今までの年功型の賃金体系は維持が難しい。こうした「能あるものに職を、功あるものに碌を」といった企業の施策は、それに適応できない(特に50歳以上)人材に対してリストラせざるを得ない状況になりかねないし、今の若手も常にプレッシャーの中で働くことになり息苦しくなるのではないかと考えている。これを解決する主体として人事部は重要な役割を担う。

人事部は、一つ一つの戦術を丁寧に対応してゆかなければならない。
説くにキャリアについては、真剣に対応することが求められる。
ChatGPTに少しアドバイスをお願いした。

1. 中高年層へのキャリア支援と再配置
多くの企業では、年功型賃金制度から成果主義への移行に伴い、中高年層の活用方法を再考しています。例えば、ある保険会社では、45歳以上の社員を対象に「キャリア転進支援制度」を導入し、社外での再就職を支援しています。この制度では、転籍先の企業開拓や特別支援金の支給、資格取得奨励金の提供などが行われています。

2. 成果主義導入による若手社員への影響とその対策
成果主義の導入は、若手社員にとってモチベーション向上の要因となる一方で、過度なプレッシャーや競争意識の高まりによる離職リスクも指摘されています。日本マクドナルドでは、成果給制度を導入したものの、ベテラン社員が若手の育成を疎かにし、結果として優秀な人材の不足に直面しました。この反省から、定年制を再導入し、バランスの取れた人事制度への見直しが行われました。

3. キャリア自律支援の推進
企業は、従業員が自らのキャリアを主体的に設計・実行する「キャリア自律」を支援する取り組みを進めています。ライオン株式会社では、ミドルシニア層の活性化を目的に、職務変化への適応支援やスキルアップのための研修プログラムを導入しています。これにより、年齢に関係なく活躍できる環境づくりを目指しています。

また次のように釘も刺された。

「成果主義=リストラの加速」という見方は一面的です。実際には、成果主義の導入が必ずしもリストラを伴うわけではありません。例えば、武田薬品工業では、2003年に一般社員の年功賃金を廃止し、職務給に一本化しました。この改革は、個人の業績を賞与に反映する仕組みを取り入れることで、従業員のモチベーション向上と組織の生産性向上を図ることを目的としています。

また、成果主義の導入が若手社員に過度なプレッシャーを与えるとの懸念もありますが、適切な評価制度やサポート体制を整備することで、健全な競争環境を築くことが可能です。重要なのは、成果主義を導入する際に、企業文化や従業員の多様性を考慮し、柔軟な制度設計を行うことです。

どうだろう。参考になったかな。

2025/05/13