「ポジティブなひとだけがうまくいく 3:1の法則」 バーバラ・フレドリクソン 2012年
注:●は本文より引用
《ポジティブと言う言葉》
経営マネジメントに関わり、そのソリューションを思考する際に、「ポジティブ」という言葉を良く聞く。最も代表的な用語は「ポジティブシンキング」であろう。また、知古の経営コンサルタントは「企業を元気にする」と言うことを主眼に「ポジティブ」を主眼とした活動をしていた。
もっとも、それは心の持ちようであり、コップの水が半分満たされている特に、「まだ」と考えるか「もう」と考えるかでその人の性向が分かるという。あなたはどちらだろうか。
・まだ半分残っている
・もう半分しかない
最も私は「コップはいつも満たされているさ。水と空気でね」というのがお気に入りなんだが。
ものは考えようと言うことにも近いかもしれない。
何をやっても旨く行かない ・・・ うまくいっていることもある
時間が無い ・・・ まだ余裕がある(コップの水は半分)
部下が言うことを聴かない ・・・ 一生懸命やってくれているじゃないか
こうした気持ちの持ち方で、その後の行動も左右されルカもしれないと言うことがこの本では随所にその記載が見られる。
●ポジティビティの真理の第一は、私たちの心と精神を解放し、受容性と創造性を高めてくれることです。
●ポジティビティは私たちを成長させてくれます。・・・身の安全を感じたときや、なにかに満足したときの良い気分が、①祖先たちの精神の働きを広げ、②身体的、社会的、知的、心理的リソースの形成を促し、長い時間をかけて彼らによりよい変化を起こさせてきた。(※理論的背景)
そしてポジティブの反対がネガティブであり、以下のようにその功罪などが記述されている。
●私の提唱した説は次のような内容です。ネガティブ感情は、「何ができるか?」と考える思考の範囲をせまくしてしまいますが、ポジティブな感情は、それを広げる働きをする。
《3:1と言う比率の意味合い》
もっともポジティブな感情だけを持ちなさいと言っているわけではない。
●ポジティブ感情とネガティブ感情は、異なる時間尺度の上で意味を持つと言うことです。危機に臨んだときにネガティブ感情は思考を狭めることは、ある意味その瞬間を生き延びるために有効でした。一方、ポジティブ感情によって広げられた思考は、もっと長い時間尺度において別の形で有効に作用したのでしょう。
表題の「3:1の法則」は、ポジティブな感情とネガティブな感情の比率の比率になる。
彼らの実験や実証が正しいかどうかはともかく、下記は納得がある。
①ネガティブな感情を持つことよりポジティブな感情を持つ方が良い未来が得られる。
●より多くのポジティビティを持っている人は、逆境にあっても解決策を複数考えつく
②そのためにはポジティブ/ネガティブな感情を計測する
●少しの間、身の回りを見回し、次のようなことを考えてみてください。「この状況の良い点は何か」、「今の自分の状況で恵まれていると思う点は何だろう」・・・自分に「うまくいっていることは何か」と訊ねただけで鍵が開きます。
③ネガティブな感情を無くすのではなく減らす
書籍の表題にあるように、ポジティビティとネガティブな感情は、どれも有用な感情であるとしており、そのためにネガティブな環境をゼロにするのではなく、程度を減らしてゆくという考え方が有益である。
《ポジティブ比率の計測》
では、どのように計測するのだろうか。
そのために、本書では以下のような計測方法を提示している。
ポジティビティ比の自己診断
「過去24時間にどんな感情を味わいましたか」
0:全く感じなかった
1:少し感じた
2:中くらいに感じた
3:かなり感じた
4:非常に強く感じた
で下記を評価します。
1.面白い、愉快、馬鹿げていておかしい、と最も感じたことは
2.怒り、いらだち、深い
3.恥辱、屈辱、不真面目
4.畏敬、脅威、驚嘆
5.軽蔑、さげすみ、見下す気持ち
6.嫌悪、嫌気、強い不快感
7.最も恥ずかしかったこと、人目が気になったこと、赤面したこと
8.感謝、ありがたい気持ち、嬉しい気持ち
9.罪の意識、公開、自責の念
10.憎しみ、不信、疑惑
11.希望、楽観、勇気
12.最も鼓舞され、高揚感を覚え、元気づけられたこと
13.興味、強い関心、好奇心
14.うれしさ、喜び、しあわせ
15.愛情、親しみ、信頼
16.誇り、地震、自分への信頼
17.悲しみ、落胆、不幸
18.おびえ、恐怖、恐れ
19.安らぎ、満足、平穏
20.ストレス、緊張、重圧感
ポジティビティ
1,4,8,11,12,13,14,15,16,19
ネガティブ
2,3,5,6,7,9,10,17,18,20
ポジティビティは2以上
ネガティブは1以上
数の比率を計算する。
(以上)
ポジティブな感情よりもネガティブな感情をピックアップしやすいことが分かる。
また、この24時間でと言うことであれば該当しない感情もあるかもしれない。
何をピックアップするのかは個人ごとに変ってくるだろう。
また、同じ個人であっても、陽によって変ってくるかもしれない。
ようは、自分自身の気持ちに向き合うことであろう。
《日常の行動変容》
ポジティブな感情としては下記が上げられている。
ポジティブ感情の代表的な感情
① 喜び
② 感謝
③ 安らぎ
④ 興味
⑤ 希望
⑥ 誇り
⑦ 愉快
⑧ 鼓舞
⑨ 畏敬
⑩ 愛
それぞれをどう定義するかは本書を見てもらいたいが、概ね。当たり前の解釈とかけ離れている分けではない。こうした感情を感じたときに素直に「ポジティブ」である事を自覚することが望ましい。それは良い方向性での行動変容につながる。
●上質の繋がりは生命力をもたらします。
①相手を尊重する
心遣い、思いやりを持ち、肯定的に受け入れる
②相手を支援する
相手が成功するように手助けをする
③相手を信頼する
相手が自分を裏切らないことを信じ、それを態度に表す
④関係を楽しむ
何かの成果を求めず、単純に楽しい時間をともに過ごす
しかし、注意が必要とも言う。なぜなら、我々の身の回りにはネガティブな感情を引き起こすことを意図とした環境もあるからだ。
●映画、テレビ、ゲームなどに出てくる暴力は、人々の関心を捉え、興味をかき立てるために使われます。・・・暴力だけではありません。メディアの中には、痩せていること、セクシーなこと、美しさ、人種などに関する暗黙の偏見が充満しています。
おそらくは、人というものが容易にネガティブなものに傾きがちになるというのは原罪のようなものかもしれない。だからこそ、意識的にポジティブな気持ちを保持することが大切なのだと思う。
《書評として》
この書籍をどういう理由で手に入れたのかを思い出すことはできない。もともと、一人でいろいろな事をしているために、啓蒙めいた書籍を求めていた時期がある。そのため、ポジティブシンキングなども書籍を読んでいたし、一方では「心理学的」アプローチも模索していた時期が重なっていたのかもしれない。
とはいえ、今となってはこの本で書いてある事は特別なものでもない。
必要なことは突き詰めれば上記に集約される。
興味のある人は手に取ってもらっても良いが、良書かと言われると躊躇する。
そんな程度の本である。
馬鹿にしているのではない。いったん読んでしまえば、それは当たり前のことだとかんじるということだ。
2025/05/26