「コンサルタントの考える作法」 樋口陽介 2009年
注:●は本文より引用
■■■ フレームワーク
この書籍は、コンサルタントになるためのノウハウなどが記載されているわけではない。
結論から言えば、ビジネスマンとして必要な所作などが記載されている。
ビジネスマンとしての能力として下記があげられている。
●ものを考えるための4つの力
(論理力)
・検討対象を正しく分類・整理する
・MECE(もれなくダブり無く)
(分析力)
・仮説を立てて検証し、関係構造を読み解く(経口、壮観、因果、特異点)
(伝達力)
・伝える内容を吟味し、説明の道筋を構築する
・相手にあせて伝えきる
(創造力)
・新たな関連、組合わせを見いだす(抽象化、転換、反転、援用)
そしてこれに必要な様々なフレームワークについて記述されている。
基本的な軸はロジカルシンキングであり、重要な思考としてMECE(漏れがなくダブりがない)を挙げている。
その他に聞き覚えがあるフレームワークとしては「3C分析」、「マーケティングの4P」などがあり、イシューツリーやバーバラミントのピラミッドが照会されている。
最もこうしたフレームワークはコンサルタントの専売特許ではない。私自身は現在ISO9001(品質マネジメントシステム)の審査員をしているし、少し前までは日本経営品質賞の審査員wも務めていた。そうした中で、品質保証に関わる分析手法や問題解決技法は当然の知識であり、経営戦略に関わる様々なフレームワークも教養として知っていなければならない事項だった。
従って、この書籍で述べられることで目新しいことはない。
■■■ 思考の作法
それでも、フレームワークを知っているからと言って、上記の「ものを考えるための4つの力」が磨かれるわけではない。
体系的な思考のメソドロジーを磨く必要がある。
もっとも有効なのは「哲学的アプローチ:であろうか。
本書の中ではデカルトの「方法論序説」から以下のような方法論のエキスを示している。
①私が明化の真理であると認めるものでなければ、いかなる事柄も、これを真理として認めないこと
②検討しようとする難問を理解するために、多数の小部分に分割すること
③最も単純なものから、順序よく複雑なものの認識へ向かうこと。前後の秩序のない事物のあいだに秩序を設けること。
④最後に、完全に列挙し、広く再検討すること
すなわち、ゼロベース思考、イシューツリーの利用、MECEの原則である。
これを念頭に置きながら
●「だからなんなの?」、「それで何が言えるの?」という仮説形成と「なぜそうなるの?」、「それ良いの?」という仮説検証を何度も繰り返す
ことの重要性を説く。
素直にこれは納得できる。
■■■ 言葉
もう一つなるほどと思ったのは、語彙を豊富にしろと言った一節である。
語彙を豊富にするためには、単位専門書だけでなく幅広いものを知ることが必要になる。
●知らないことは思考から落ちる
こうした語彙への関心は、表現力の差や思考の拡張能力の差に表われるかもしれない。
我々は安易に「単元止め」をしがちだが、それもいさめる。
●一般に、拡散思考をするには「同士で考える」と効果的です。
・経費の削減 ➡ 経費を減らす
・売上の増大 ➡ 売上を増やす
・コミュニケーション能力の向上 ➡ コミュニケーション能力を高める
●さらに「~きる」、「~まくる」と言う言葉を使うと思考はいっそう広がります。
・経費の削減 → 経費を減らす → 経費を減らしきる
・売上の増大 → 売上を増やす →裏下を増やしまくる
したがって、これを実現しようとすれば中途半端な対策ではできない。
より訴求力を高め、高い成果を求める動機付けになる。
■■■ 書評として
帯に「思考のレッスン67!」と記載されているが、いわゆるワークブックではないし、従って研修用テキストにはならない。
それでも、ビジネスに携わると言うことではしっかり理解しておく必要がある。
フレームワークについて言えば、より使い勝手の良いツールも出てくるであろう。
生成AIがさらにこれを支援してゆく。
しかしその中で、思考能力を高めなければ良いアウトプットは出せない。
再掲するが下記をもっと重視すべきである。
●「だからなんなの?」、「それで何が言えるの?」という仮説形成と「なぜそうなるの?」、「それ良いの?」という仮説検証を何度も繰り返す
2025/05/27