世間に転がる意味不明:2024年問題は解決したのか(1.ライドシェア)
■はじめに
2024年当初の人手不足問題がクロースアップされ、その中でバス運転手やタクシードライバーの不足の問題があった。バズの運転手不足の問題は金剛バスの廃止などが契機になり自動運転などの取り組みが進められた。タクシーに関しては、特にオーバーツーリズムの問題と併せてライドシェアの展開として話題に上った。
しかし、最近ではこうした問題に関しての報道をみなくなった。はたして2024年問題は解決したのだろうか。こうした視点で、現時点(2025/06/01)で整理できる範囲でまとめてみたい。論点は数多くあるので、連作とする。「2024年問題は解決したのか(n.***)で表記する。
なお、文章作成にあっては生成AIとの質問と回答の繰り返しで得た情報を利用している。
ここに書かれていることを鵜呑みにせず、自分でも調べてほしい。
■ 普及への疑念
「うまくいっているか?」と言う疑念を持ったのは、モビリティを扱うメディアでの下記の記事が考えるきっかけであった。
○ タクシー不足は嘘だった!? 全国でたった80万人しか使わなかった「日本版ライドシェア」の致命的誤算【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(29)
2025.5.27
2024年4月、政府主導で始まった日本版ライドシェアは、導入から1年が経っても全国で利用が低迷している。多くの地方都市では、ドライバーが集まらず、そもそもサービス開始にすら至っていない。各地で苦戦が続いている状況だ。
・・・
日本の地方都市で移動手段の不足を解決するには、今のように民間事業者に丸投げするだけでは限界がある。欧米のパラトランジットのように、国家が責任を持って移動を補償し、安心して誰もが移動できる仕組みを整えるべきだ。これは公共事業であり、公共投資として捉える必要がある。
https://merkmal-biz.jp/post/93814
2024年問題として人手不足が取り上げられ、タクシードライバーやバス運転手などの不足感が前面に出てきたのが思い出される。金剛バスの運行停止や、オーバーツーリズムによる観光地でのタクシー不足などが盛んにニュースでも取り上げられた。
その解決の切り札として取り上げられたのが「ライドシェア」であり「自動運転バス」であった。では、盛んに取り組んだ「ライドシェア」は問題を解決したのかと言えばそうではないようだ。とはいえ、まだ取り組みを進めている自治体もあり、評価は難しい。
そうした中で、現状を報じた下記の記事は参考になる。
○ 日本版ライドシェア開始1年 全国で導入 利用伸びない地域も
2025年4月14日
タクシー会社が運営主体となり、一般ドライバーなどが有料で人を運ぶ「日本版ライドシェア」のサービスが始まって4月で1年となり、すべての都道府県で導入され運用が広がっています。一方、地方では松山市などで利用が伸びていないところもあり、各地で普及を進めることができるか課題も出ています。
開始から1年となる中、今では、すべての都道府県で導入され、900以上のタクシー会社が運行の許可を得るなど、運用が全国的に広がっています。
一方、このうち、2024年12月に運行が始まった松山市など4つの市や町からなる「松山交通圏」では、2025年3月中旬までの、車両1台の1時間当たりの運行回数の平均は0.1回にとどまっています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250414/k10014778451000.htm
■ライドシェはうまくいったのか
こうした問いに、残念ながら「成功した」というニュースは見られない。
開始直後から思うように利用者は伸びず、結果としてその政策を見直すという報道が目につく。下記がその代表であろう。
○ 神奈川版ライドシェア、本格実施ならず「試行運行」に 市議会で異論
2024年12月13日
かなライドは、三浦市内の夜間の交通手段を確保するのが目的で、県と市が事業費を負担し、4月17日から実証実験が始まった。市はその後、タクシー会社を実施主体とした独立採算による本格実施をめざしていた。
ただ、市議会総務経済常任委員会での審議では、採算面で難色を示す声があがった。
市側は午後8~9時台を中心に1日平均約4回の利用があり、乗客の9割以上が「また利用したい」と回答していることから、「市内のタクシー不足に有効と評価している」と説明した。
これに対し、議員からは「平日の状況からすると毎日稼働する意義が感じられず、土日のみの稼働でまかなえるのでは」「現状では本格実施をするまでの成果が出ていない。(予算を伴うことに)市民の納得が得られないのではないか」といった指摘が相次いだ。
https://www.asahi.com/articles/ASSDD460LSDDULOB001M.html
○三浦市ライドシェア 本格導入→試行に 市議会の反発受け転換
2024年12月13日
自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」を巡り、三浦市は12月17日から実施予定だった本格導入を「試行」に切り替えた。市の財政負担に市議会から「市民が納得しない」との反発を受けてのもので、市が実施主体となるスキームは変わらない。
https://www.townnews.co.jp/0501/2024/12/13/763959.html
盛んに報道されていたライドシェアに関して、ではその後どうなったのかと言う記事は、少なくとも全国紙などでは取り上げられることはないなかで少し否定的な記事になる。。
これだけを取り上げて、ライドシェア」が失敗したとは断定するべきではないだろう。
今でも、「ライドシェア」に取り組む自治体は存在する。
先のNHKの記事でも、下記の記載がある。
ドライバー不足を背景に、タクシー会社が研修や運行管理などを行う運営主体となり、一般のドライバーなどが有料で人を運ぶ「日本版ライドシェア」は、2024年4月に、東京23区と武蔵野市、三鷹市などからサービスが始まりました。
車両1台の1時間当たりの運行回数は、ほかにも、「富山交通圏」で0.3回、「沖縄本島」で0.1回、「長崎交通圏」で0回などと、利用が少ない地域も多くあり、全国の平均でも0.3回にとどまっているのが現状です。
一方、「大都市部」では、「東京23区と三鷹市、武蔵野市」が1.5回、「札幌交通圏」が1.7回、「名古屋交通圏」が1.7回などと、利用が伸びている地域もあります。
■問題は何か
問題としては以下のようなことが指摘されている。
三浦市の例がティピカルなので整理する。
① 稼働率の低さ
三浦市の「かなライド」実証では、
・1日あたり稼働台数:約2.2台
・1日あたり利用回数:約3.7回
と一台あたりの稼働が非常に少ない
② 運賃収入の限界
地方では移動距離が短く、運賃単価が低いため、1日数件の乗車ではドライバーや会社の人件費・維持費をカバーできない。これは三浦市だけの問題ではない。地方が抱える問題でもあり、事実地方でのタクシー会社の倒産は続いていると聞く。
③ 運行管理コスト
「日本版ライドシェア」はタクシー会社が運行管理を担う必要があるため、人件費やシステム費など固定コストが高い。
したがって、そもそも経営基盤の薄い地方のタクシー会社が生き残る処方箋がなければライドシェア自体が成立しない。
④ ドライバーの供給制限
自家用車を用いた一般ドライバー(いわゆる“副業型”)を広く活用できれば効率は上がるが、現行制度では自由な参入が制限されている。すなわち、普及そのものを阻害する要因が含まれている。
すなわち、民間ビジネスと同じような論理を持ち込んだことが問題なのだと感じる。
当たり前の話であるが、民間ビジネスは以下のような特性がある。
①利益が出なければ維持できない
利益は、売上と費用の差分である。
売上は乗客数や走行距離、稼働率などで決定される。
費用は、タクシー用の車の維持費、ドライバーの賃金などで決定される。
しかし、地方都市や過疎地などではそもそも乗客は少なく、収益は見込めない。
また、都市部のようにタクシー過多の地域は稼働率が見込めない。
単にライドシェアを前面に出しても利益増強の決定打にはならない。
②単年度決算である
もちろん、投資という側面は長期的であり、当然償却という形で捉えられるが、「ライドシェア」は投資ではなく、その場で収益があげるための施策である。今年はダメでも来年派などと言うことはない。したがって、今年dの収益が見込めないのであれば、次年度のライドシェアに対する姿勢は消極的になる。
これ以上の民間事業者の参入は期待できない。
確かに、現時点でも参入の動きはある。
○ 夜間の需要増加、運転手不足解消へライドシェア 北上市のタクシー2社が7月上旬に開始予定
2025.06.02
岩手運輸支局は30日、北上市の平和タクシー、安全タクシーに対し「日本版ライドシェア」の運行を許可した。夜間の需要増への対応で、2社とも7月上旬にサービスを始める予定。県内では下閉伊郡に続いて2例目となる。
日本版ライドシェアは、一般のドライバーがタクシー会社の管理の下で客を有料で運ぶ仕組み。2社は事業の許可を受け、同市内で午後5時~翌午前8時台に運行する予定。
2社の小原勇二代表取締役によると、同市では大規模工場建設などの影響で夜間の乗客が増えている一方、運転手不足でタクシーの供給が追いつかず、ライドシェアの導入を決めた。
https://www.iwate-np.co.jp/article/2025/6/1/183783
しかし、そもそもタクシー運転手が不足する状況を補うという点で、一般の人が有効であれば、そういう事例が報道されているだろう。焼け石に水の感は抜けない。
■ 進化の方向性
一方で、タクシーに関して期待できる変化(進化)もみられる。
(1)配車サービスと効率化
ライドシェアの議論が進む中で利用者へのインタフェースとしてスマホアプリが注目されるようになった。現在でも、「タクシーGo」た「S:RIDE」など、地方都市などでは盛んに見かけるものであり、その利用者も多いと聞く。
利用者にとっての利便性向上だけでなく、配車をするタクシー会社にとっても「空車」を減らせるメリットもあるだろう。また、GPCによる位置の特定ができることは、タクシーの空白地帯を無くすという使い方もできるだろう。
ナビの進化は、道を知らなければ運転できないという状況を減らすことができる。実際、タクシーに乗車するとナビを設定するという場面には良く出くわす。
(2)規制緩和
国土交通省は2021年11月からタクシーの相乗りサービス制度を導入し、2022年11月1日から運用が開始された。この制度では、タクシー会社が契約した配車アプリを通じて、目的地の近いユーザー同士をマッチングして相乗りさせる仕組みになっている。
相乗りサービスを利用する場合は、アプリストアで「タクシー 相乗り」などのキーワード検索をしてヒットするアプリを使用する。アプリによっては、ユーザーの個人情報を登録したり、運賃の按分をアプリ上で提示したりする運用により、相乗りしたユーザー間におけるトラブルを防ぐようなシステムになっている。
これは、配車サービスをもっと進化させたものと考えられ、実際に動き始めていると聞く。
○「タクシー相乗りサービス」が登場、料金は? 東京の湾岸エリアで始まる
2024年12月07日
タクシー配車アプリ大手のGO(東京都港区)は12月11日、日本交通の子会社であるハロートーキョー(東京都江東区)と協業し、相乗りサービス「GO SHUTTLE(ゴーシャトル)」を開始する。まずは豊洲や勝どきなど湾岸エリアで展開し、ユーザーの利便性向上や乗務員不足の解消を目指す。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2412/07/news071.html
○半額でタクシー相乗り 都内で新サービス―GO
2024年12月10日
タクシー配車アプリを手掛けるGO(東京)は10日、1台のタクシーに複数の顧客が乗り合わせる相乗りサービス「GO SHUTTLE(ゴーシャトル)」を、都内の一部地域で11日から開始すると発表した。料金は通常のタクシーに比べ約5~6割に抑えられるという。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024121000831
■まとめ
ITを使うことにより、運行の効率性を高めることができる。
また、規制を緩和することで、タクシーの安全性や利便性の向上、参入障壁の排除なども可能である。
例えば、今では行き先やルートなどはナビで設定する。昔のように「道を知っていなければ」タクシードライバーになれないというのは時代遅れであろう。
GPSを基に、運行した距離を自動計算することで、現在のメーターの装備を義務づけなければ、タクシー用の乗用車の値段は下がり、投資の負担が減るだろう。
すべてキャッシュレスにすれば、少なくとも「売上金の強奪」は防げるだろう。
こうした事に対しての規制を緩和がタクシー会社の負担を減らすことができる方向性になる。
また、現在は、タクシー会社がライドシェアのドライバーを抱えることになるが、
・乗用車の所有と保守
・タクシードライバーとしての適性訓練
・配車などのマッチング管理
・ソフトウエアの供給
などは別々の主体が行なえば良い。
規制緩和が必須である。
2025/06/02