世間に転がる意味不明:2024年問題は解決したのか(5.都市計画という長期目線)
■はじめに
2024年当初の人手不足問題がクロースアップされ、その中でバス運転手やタクシードライバーの不足の問題があった。バズの運転手不足の問題は金剛バスの廃止などが契機になり自動運転などの取り組みが進められた。タクシーに関しては、特にオーバーツーリズムの問題と併せてライドシェアの展開として話題に上った。
しかし、最近ではこうした問題に関しての報道をみなくなった。はたして2024年問題は解決したのだろうか。こうした視点で、現時点(2025/06/01)で整理できる範囲でまとめてみたい。論点は数多くあるので、連作とする。「2024年問題は解決したのか(n.***)で表記する。
なお、文章作成にあっては生成AIとの質問と回答の繰り返しで得た情報を利用している。
ここに書かれていることを鵜呑みにせず、自分でも調べてほしい。
■長期的視点の政策が有効である理由
前回、既存の特定の団体が持つ、利害関係に基づいた施策は対処療法的であり、根本の問題を解決しないと言う視点で、最後に問題点を指摘した。一般的に、都市計画は長期視点で発想され、時代に合わせて技術進化が行なわれれば柔軟な計画変更のあり得ることが利点となるだろう。自動運転技術の進歩は既存の枠組みも進化させるかもしれない。
○ 宇都宮LRT、2024年も大ヒットのワケ! 累計乗客数ついに「600万人」突破、成功要因を今さらながら徹底解剖する
2024.12.14
宇都宮LRTでは、すべての列車がバリアフリー型の超低床車両「HU300形」(HUは芳賀、宇都宮の頭文字)で運行されており、低いホームからスロープを使って無段差で乗降できる。車内もフルフラットで、貫通路を含めて段差がなく、誰でも快適に乗り降りできる構造になっている。
・・・
宇都宮LRTの特徴的な点は、混雑対策として採用されている独自の方式だ。宇都宮LRTはワンマンカー(車掌なし)でありながら、
「全ドアから乗降可能」
となっている。国内の多くの路線バスや路面電車では、ワンマン運転の場合、運賃が均一で前払いの場合は前ドアから、運賃が変動し後払いの場合は後ドアから乗車し、整理券を取るかICカードをタッチして車内に入るのが一般的だ。そして、降車時は逆側のドアを使うことが多い。しかし、混雑時には乗降口が詰まり、遅延の原因となっていた。
https://merkmal-biz.jp/post/81417/3
宇都宮LRTは、メディアでもだいぶ取り上げられており、その成功は他の地方自治体でのベンチマークになるかもしれない。しかし、宇都宮LRTは突然敷設されたわけではなく、宇都宮市が長年進めてきた街作り構想の一環である。
運賃精算の電子マネーの利用、自動運転技術の進展、各種モニターシステムでの監視技術、運行管理システムのIT化など様々な技術発展は後押ししている。しかし長期目線での思考があっての結果であることを忘れてはならない。
■できない理由を探すのではなく
ライドシェアのように対処療法的な施策では、目の前の問題(例えば利用者の伸び悩み)がクローズアップされ、長期的な課題(ドライバー不足に対する政策評価)が後回しになる。
長期視点での政策は、課題に対して方向性の合意形成が採りやすい。
たとえば、自動運転は現在の技術では、どうしても不測の事態に対応しきることは難しいと感じる。異常時には停止を前提にした運行の受容、保険などの整備が必要だが、こうした視点での議論は、長期的であるからこそ、今はできる/今はできないという視点で行なうことができる。
近年では、技術的な完全性を追い求めるのではなく、異常時には安全に停止するという設計思想を前提とした制度設計・社会受容・保険の枠組み作りが進められている。
例えば下記が上げられるだろう。
① 「Fail-Safe」設計の前提化と制度整備
・国土交通省の対応(日本)
2023年に施行された「レベル4解禁」制度(特定自動運行)では、運行計画の中に**「異常時のフェイルセーフ対応」**が必須要件として明記。
例:「異常を検知した際は安全な場所で停車し、遠隔監視センターが状況判断を行う」など。
事前審査の際に、異常検知・回避・停止・再起動プロセスの設計が厳しく評価される。
・海外の例(EU・米国)
欧州では「安全優先アーキテクチャ(Safety First for Automated Driving)」をベースに、「最終的には止まれる車が安全な車」という思想が業界で共有。
米国NHTSAも、2024年ガイドラインで「Minimal Risk Condition(最小リスク状態への移行)」を義務化。
② 異常停止時の「サービス品質の担保」という新課題
異常時停止が想定されることで、以下の問題が実運用で浮上している:
バスが止まり、乗客が下車できない or 待機を強いられる。
停車中に他の車両と干渉(渋滞・二次事故のリスク)。
利用者が不安・不満を抱える(特に高齢者)。
そのため、
「遠隔からの早期対応・切替判断」が可能な運行管制センターの設置(例:川崎市・つくば市など)、利用者への「異常時プロトコル説明とUI対応」(車内音声案内・緊急停止ボタンなど)が実証段階で標準装備されつつある。
③ 保険制度・責任分担の整備
・日本国内の整備状況
2023年以降、「自動運転専用保険商品(東京海上・損保ジャパンなど)」が登場。
通常の自動車保険とは異なり、システム・遠隔運用者・製造者の過失も保険対象に含める設計。
国交省の指導により、「事故の原因調査と責任所在分析」の枠組み(事故後ブラックボックス開示義務)も整備されつつある。
・民間事業者の試み
トヨタは自社運用の自動運転サービス(e-Palette)において、完全自動運転中の事故に対しては「企業責任で全額補償」する方針。
一部の実証地域(例:三重県・志摩市)では、自治体・保険会社・通信事業者が「責任共担型運行モデル」を構築。
④ 社会受容のための現実的運行哲学
現時点で主流になりつつある運行思想は以下の通り。
「人間でも回避できない事象は、自動運転車にも避けきれない」
したがって、「止まること自体を失敗とせず、それを安全確保の基本」とする社会の合意形成が不可欠。
この考え方は、特に高齢者や交通弱者の移動手段として導入される際に、「失敗の許容度」を社会的に受け入れることが鍵になる。
総括としては以下が言える。
解決は「止まらない運行」ではなく「止まっても破綻しない運行」
項目 現状の整備状況
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フェイルセーフ設計 制度化済・運行審査で義務化
異常時UI・通知体制 実証で実装中(標準化の余地あり)
保険・責任制度 商用レベルで設計進行中
社会受容 実証地域では進展、一方で都市部では不安も根強い
■ 問題の本質:長期的視点と短期的視点
民間事業と公共事業との差異を考える際には時間軸も配慮に入れるべきである。
民間の事業は原則は単年度の視点での活動になる。もちろん、赤字になったからと言ってすぐに撤退するわけではなく、ある程度の猶予期間はあるものの、事業の中止は主に経済的な視点であり、赤字になれば縮小すると言うよりは撤退が視野に入る。
ところが、公共事業ではそう簡単には行かない。
近年、話題となった宇都宮のLRTにしても、母体となる都市計画の青写真があり、修正はあるものの長期視点での活動になる。市民という視点が入るにしても長期目線での意思決定である。
技術的・経済的な制約があるにしても、交通政策が都市計画と連携するのであれば単純な政策変更は煩雑になる。しかしこれは、スピード感に欠けるという欠点はあるものの、合意形成を慎重に行なうことができるというメリットと、技術の進歩に併せて立ち位置を変えられるというメリットもある。
ライドシェアと自動運転バスの進捗の違いはここに出るだろう・
2025/06/09