未来への手がかり:メタル回線の終焉と無線の世界(過去・現在・未来)
■時代の流れ
なるほどと言う記事を見た。
○NTT、固定電話の銅回線35年廃止を表明 代替手段を提供
2025年8月6日
NTTは6日、固定電話サービスに使用している銅回線(メタル回線)を2035年までに廃止する方針を正式に表明した。設備の老朽化や人口減で維持負担がかさんでおり、光回線や携帯電話の電波を使う代替サービスに段階的に置き換える。
携帯電話の普及を受け、固定電話の契約数は1997年11月の6322万件をピークに、25年6月には1130万件にまで減った。今後も減少傾向が続く見通しで、NTTはかねて35年ごろに設備の維持限界を迎えるとしていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC069DL0W5A800C2000000/
誤解されるが、アナログ回線がなくなりデジタル回線に全面移行と言うことではない。すでに、多くはデジタル回線に移行しており、メタル回線とは異なる分野の話なので注意すること。
さて、メタル回線について言えば、それは、アナログ電話やISDN、ADSLといった通信技術のインフラとして、長年にわたって日本の通信を支えて来ており、下記の歴史的な特徴がある。
①アナログ電話・ISDN時代(〜2000年代前半): この時期は、電話やデータ通信の基盤として、メタル回線が全国津々浦々まで広く普及していた。
②ADSL時代(2000年代前半): 光回線が普及するまでの間、既設のメタル回線を活用したADSLが、月額定額で常時接続できるブロードバンドサービスとして急速に普及した。
③光回線時代(2000年代後半〜): 光ファイバー(FTTH)による高速通信が主流になり、メタル回線の利用者は減少傾向にある。
従って、基幹的な通信網は光ファイバーに取って代わると言うことになり、通信速度の高速化、安定化が促進されるというように、先の記事を読むことはできる。
しかし、今時の家には固定電話そのものを置くことは少なくなり、携帯電話のみと言うことも珍しいことではなくなっている以上、NTTも戦略を変えざるを得なくなるだろう。
無線を前提とした設備投資なども優先して行くことになる。仮に、スターリンクのように衛星からのワイヤレス通信のインフラを手にすることができれば、海上や山奥などの基地局がおけない地域のカバリングもできる。
公衆電話に置く電話機自体をワイヤレスにして、ソーラーパネルで充電するようにすることで場所に依存しないインフラ整備もできる。可能性はいくらでも考えつく。
■感傷にふける
今年で70歳になる。この時間の流れで消えていったモノ、形が変ったモノなど数知れない。
今時、ダイヤルを回すタイプの電話など「見たことがない」若者も多いだろう。
・和文タイプ
かつて、契約書などは「和文タイプライター」で一文字一文字うち、製作していた。
これが「ワードプロセッサー」が登場し、しかも卓上型になったのは画期的だった。しかし、パソコンで「一太郎」などのソフトウエアが出てくると、これらの機器の活躍する場は少しずつ減ってきて、いまや希少な製品になっているだろう。
いまでは、書類は紙ですらなくなっている。
・フロッピーディスク
1980年代の記憶媒体というとフロッピーディスクであり、その大きさも8インチであった。小型化、大容量化は進み、MD、ZIP、USBメモリーなど様々な形態が現われては消えていった。今では、クラウド上に保存することも行なわれるようになり、そこを介してのデータ交換をするので、媒体の差し込み口すらないパソコンも出てきている。
町の中から無くなっているお店も多い。
「テーラー」などは見かけなくなったし、「街の映画館」も激減した。
スーツなどは廉価で大量販売する店が台頭したし、映画などもネットで見ることが多くなっている。
昔はこうだったよなと感傷に浸ることも多い。
■AI時代の新しいビジネス
こうしたノスタルジーについて考えて行く中で、かつてのビジネスの新しい形も想像できる。
百科事典を覚えているだろうか。50年ほど前には、ある種のステータスとして家庭には全30巻前後の百科事典がおかれていた、今では、そうした百科事典を置く家はないだろう。こうした百科事典は、専門家が調査をして原稿を書き、精査した上で形になる。信頼性はあるだろうが、紙面が限られており、また、発刊したときの情報ではあるが、最新版ではない。
これが、変ってきたのは、百科事典がデジタル化し始めた(マイクロソフトのエンカルタなどが先駆けか)、1990年代以降だろうか。ウィキペディアなどが注目され始めたのは2000年頃からだろうか。
こうしたオンラインの百科事典は、ダイナミックな改訂が容易である一方で、編集者の専門性が担保されないという懸念もある。
その特性を比較すると以下のようになるだろうか。
項目 紙の百科事典 オンライン百科事典
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情報の鮮度 数年遅れ 即時更新
信頼性 高(専門家監修) ばらつき(オープン編集型は特に)
アクセス性 本棚の前で物理的検索 デバイスから瞬時に検索
所有感 高(文化的価値あり) 無形(利用権)
コスト 高額(数十万円) 無料〜低額サブスク
信頼性は、修正機能が内在していれば良いだけであり、こうした辞書のオンライン化は今後も進められるだろう。
しかし、百科事典を「情報の倉庫」から「知的な聞き手」へ」進化させるという発想で考えると別の景色が見えてくる。
1. 従来の百科事典
ユーザーがキーワードを正確に入力して調べる前提
情報は整理されているが、「相手が本当に知りたいこと」を推測しない
例えば、アヘン戦争も、第二次世界大戦も、記事としては別々で関連づけは弱い
2. 「対話型百科事典」の姿
ユーザーの質問の背景や文脈を探る
例:
ユーザー「日本はなぜ第二次世界大戦に参入したのか」
百科事典「直接の要因のほか、長期的背景としてアヘン戦争後の国際秩序の変化も関心がありますか?」
関連事象や因果関係を提示して、ユーザーの関心を広げる
一問一答ではなく探究のプロセスを伴走する
こうした、AIを活用した百科事典を作り上げることで新たな価値を生み出せるのではないだろうか?
■変化を楽しもう
驚くほどいろいろなモノが変化している。
もちろん変化しないものもある。しかし、昨日とは違う新しい何かを考えつく面白さも感じ取って欲しい。メタル回線が光ファイバーに取って代わられるではない。有線が無線に取って代わられるとしたときに、我々の生活はどのように変って行くのだろう。
こうした事の変化を楽しんで欲しい。
2025/08/1