世間に転がる意味不明:法令遵守と中小企業への対峙(第三者によるCSRの評価)
■中小企業に対する保護の動き
2024年から2025年にかけての中小企業に対する保護の強化は一つの流れになっているだろう。大企業と中小企業の賃金格差などは日本の総合力を欠落させるリスクもあるだろうし、政府が言う「確実な賃金アップ」が無ければ、おそらくその先の「増税」も実施することはできなくなる。財政健全化も遠のくので、なんとしてもGDPをあげることは政策課題なのだろう。健全な中小企業の育成の流れの背景だろう。
その流れから、下請け法の改訂、フリーランス新法の制定、果ては外国人労働者に関わる法律(入管法や特定技能に関する法律)まで手を出していると考えられる。
また、運用面でも積極的な働きかけをしていることはいくつかの記事で目にする。
○優越的地位の乱用とは 独禁法で禁止、公取委内に摘発専門チーム
2025年8月18日
優越的地位の乱用の具体的な事例は多岐にわたる。自社の商品・サービスの購入の強制、一方的な都合による支払い遅延、正当な理由のない発注商品の受け取り拒否、経済的な利益の提供を強いる行為などがあげられる。
公取委内には優越的地位の乱用を摘発する専門チームがある。全国から寄せられた情報をもとに調べている。2024年度には優越的地位の乱用による注意件数は23年度比26件減の41件だった。インボイス(適格請求書)関連の注意が目立った前年度から減少したものの5年連続で40件を超えた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA156SD0V10C25A8000000/
監視の目の代表例は下記の通りである。
◎公正取引委員会(公取委)
独占禁止法や下請法の執行機関であり、優越的地位の濫用に対する最強の監視・是正主体。下請け業者からの申告に基づき、立ち入り調査や是正勧告、排除措置命令などを行う。
◎中小企業庁
下請法に基づき、親事業者への指導・助言や、中小企業向けの相談窓口(下請け駆け込み寺など)を運営している。
◎中小企業団体中央会
中小企業の立場を代表する団体として、政府への政策提言や、下請け企業の相談に応じている。
対象も単なるコンプライアンス以上の分野に広がっている。
○中小の知財・データ「上納」、公取委が全産業4万社調査 AI普及念頭
2025年8月18日
公正取引委員会は企業同士の商談で知的財産や生産設備のデータ提供を強いる事例がないか月内に調査を始める。これまでは製造業とスタートアップ企業が対象だった調査を中小企業中心に全産業へと広げる。生成AI(人工知能)の利活用が広がりデータの価値が高まるなか、監視を強めることで不正な取引を未然に防ぐ。
公取委と中小企業庁、特許庁が合同で調査する。業界が偏らないように無作為で抽出した約4万社に調査票を送る。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA132HY0T10C25A8000000/
大企業も、今までのように中小企業を搾取して良いと言う姿勢は改めないとブランドの毀損につながりかねない。それは、事業の安定性を欠落させる恐れもある。
○支払い条件が最低評価の15社公表、新日本建設や一建設など
2025.08.19
中小企業庁は約束手形の期日といった支払い条件について、取引先の中小企業から低評価だった会社の名前を公表した。2026年度末までに約束手形を廃止する政府方針を受け、中小企業約6万6000社にアンケートを実施。取引のある発注企業の支払い条件を評価してもらい、4段階でランク付けした。最低ランクは15社で、建設業では新日本建設や一建設が入った。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02358/
顧客から見れば、何らかの訴訟リスクを持っている企業に発注するコトへの懸念がある。建設業では行政による一般入札が多い。明示的な違反実績が無いからと言って、入札に不利になるリスクはあるだろう。
■体系的な活動の必要性
経営者の自覚も必要で有、下記の知識の修得も必要ではある。
○フリーランス取引適正化「企業トップが周知を」 公取委・本社セミナー
2025年7月25日
公正取引委員会の競争政策研究センターや日本経済新聞社などは25日、フリーランスの取引適正化をテーマにしたセミナーを都内で開いた。登壇した籔内俊輔弁護士は「企業のトップが周知し、組織として(取引適正化に)取り組むことを明確にすることが重要だ」と話した。
2024年11月施行のフリーランス新法は取引条件の明示や期日内の報酬支払いといった取引適正化策を義務付けた。
セミナーで新法の影響や課題について専門家らが議論した。籔内氏は「従来泣き寝入りだった取引で権利主張できるようになった」と評価した。
東大の滝沢紗矢子教授は「下請法と新法で同じ違法行為に対して罰則が違うケースがある。規制が緩まないよう1つの事案に両方の法律を適用できるようにすべきだ」と訴えた。「中小事業者も含めて認知度を高める必要がある」とも述べた。
公取委の担当者は「新法は迅速かつ的確に執行することが重要だ。執行が最大の周知につながる面もある。執行と広報を合わせて進めていきたい」と応じた。
これまで公取委は大手出版社など3社に再発防止を勧告する行政処分をし、アニメ制作業界など54社に行政指導をした。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA254Q80V20C25A7000000/
こうした法令遵守の意識を持つことは重要ではあるものの、第三者への提示も必要である。なぜならば、大企業であれば、投資家からの信頼も必要要件になる。弱者を軽んじない経営をしているというコトは社会課題への取り組みをしているという証になる。
こうした、利害関係者への適正な行動は体系的な取り組みが必要である。
一例としてあげるならCSRという振り返りのメカニズムがある。
大企業であればCSRを発行しているだろう。
その内容の見直しも戦略に不向けて欲しい。単に抽象的な活動の説明ではなくKPIの設定が望ましい。
例えば
1. 取引条件の透明性
・契約締結率:口頭契約や曖昧契約ではなく、正式な契約書を交わしている割合
・価格決定プロセスの開示度:原価や条件の説明がなされているか
・契約変更の通知期間:急な変更(発注キャンセル、納期短縮)がどの程度あるか
2. 支払条件の健全性
・支払サイト(日数):平均支払日数(下請法では原則60日以内)
・支払遅延件数:発生率や金額ベースでの比率
・買いたたき比率:市場価格や原価に対して著しく低い発注率
3. 知財・データの扱い
・成果物の帰属率:下請け側に知財が帰属する割合
・秘密保持契約(NDA)の適正性:一方的に不利な内容が含まれていないか
・データアクセス権の明示:生成されたデータの利用範囲が明確か
4. 取引関係の安定性
・発注集中度:特定時期に過剰発注→急減といったブレの度合い
・長期契約比率:単発ではなく複数年契約を締結している割合
・取引継続率:取引関係の平均年数
5. フィードバックと関係性
・取引先満足度調査:匿名アンケートによる取引先からの評価
・トラブル発生件数:契約不履行、条件変更に関する苦情件数
・改善対応率:通報・指摘を受けた際に是正した割合
6. 外部ステークホルダー視点
・監査受審率:第三者監査を受けた取引の割合
・サプライチェーン開示度:主要な取引先(規模・地域)を公開しているか
・投資家・金融機関へのレポーティング実施:ESGやサステナビリティ報告書に含まれているか
などが考えられる。(注:あくまでも参考)
■第三者が信頼できるCSRの策定
環境や社会への対峙、企業統治は重要な投資基準となっている。
CSRもこの一環として重要な情報源となるだろう。しかし、上記で示すようなKPIが含まれるCSRは多くはない。ましてや、CSRは企業側の都合の良い様に編集されており、自画自賛のことが多い。
有価証券報告書などは第三者の監査が前提であり、公平性が担保される。
これと同様に、CSRについての第三者での監査をする仕組みが必要である。また、同時に、そこで示されるKPIも共通でなければならない。
すべての業種で統一性が難しいというのであれば、まずはいくつかの企業(業界ごとでも良い)が、第三者の審査機関を作りガイドラインを整理してはどうか。
企業秘密などと言う「できない理由」を探すのはまず辞めて欲しい。
2025/09/01