未来への手がかり:ドライバーの育成の方向性(自動運転のその先)
■着実に進む自動運転と事故のリスク
自動運転の実証実験は各地域ですでに実施されており、レベル5はまだ無理としても、レベル4に向けて動き出している。そうした中で、東京都の自動運転バスの事故は、今後の交通システムのリスクについて考えさせられる良い事例になる。
○実証実験中の自動運転バス 街路樹に衝突事故 けが人も 東京 08月29日
【東京都 実証実験中止へ】
東京都によりますと、バスの自動運転の実証実験は今月23日から31日まで、「高尾駅北口」から「高尾台住宅」までの区間で行われています。運行は西東京バスに委託されていて、運行時に乗務員を配置する「レベル2」の実証実験中だったということです。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20250829/1000121235.html
事故の原因については(2025/09/02現在)公式の発表はなく、憶測にしか過ぎないのだが大きくは二つの原因が考えられる。
1. システム側の原因
自動運転システムが街路樹を障害物として認識しなかった。
通常の自動運転システムは、車両や歩行者、道路標識などを認識するように設計されているが、複雑な形状をした街路樹の枝葉が道路に張り出している状況は、AIが危険な障害物として判断しにくいケースと指摘される。システムは減速や停止の措置を取らずに走行を続けたため、街路樹に衝突したと考えられる。
2. セーフティドライバー側の原因
レベル2の自動運転では、万が一に備えて「セーフティドライバー」と呼ばれる運転員が同乗していたはずである。報道によると、ドライバーはバスが街路樹の枝に近づいていることを事前に認識していたとされている。しかし、緊急回避操作が間にあわなかったことから下記が考えられる。すなわち、介入の判断の遅れである。
衝突の瞬間、ドライバーは緊急停止ボタンを押すなどの操作を行った、すでに間に合わなかったという報道がある。これは、ドライバーが「バスが街路樹の枝にぶつかるだろう」という可能性を認識しつつも、どのタイミングで運転操作を奪うべきかという判断が遅れたことを示唆している。
このうち、「システム側の原因」は、いずれAIが学習することにより解決してゆくだろう。
一方で「セーフティドライバー側の原因」は中々解決できない問題になる。
考えてもみて欲しい。
・突然、ヒトが飛び出してくる。
・信号無視のクルマがぶつかってくる
・いきなり倒木が道を塞ぐ
など、こちらの非に関係なく事故は起きうる。
こうした事態にすべて対応しろというのは無理がある。
おそらくは「システム」で対応でき無い自体は「人間」にも対応は難しく、介入の遅れを止めることはできないかもしれない。
◎人間の注意散漫と判断の遅れ
レベル2のような運転支援システムでは、ドライバーは常にシステムを監視していることが求められる。しかし、自動運転がスムーズに進むほど、人間はリラックスし、注意力が散漫になりがちになる。予期せぬ事態が起きた際、人間が状況を認識し、危険を判断し、操作を行うまでの「反応時間」が遅れるリスクは避けられない。
◎「システムの不確実性」と「人間の信頼」のギャップ
人間は、普段は完璧に動作するシステムを無意識のうちに過度に信頼してしまう傾向がある。システムが限界に達した時(例えば、見慣れない障害物に遭遇した時など)、その「不確実性」を瞬時に理解し、手動運転に切り替える判断を下すのは非常に困難である。
■セーフィティドライバーの資質
こうしてみると、セーフィティドライバーという名前からは、システムが機能不全となった場合の「運転手」の代替という意味合いが読み取れるが、一方では発想を変える必要もある。
事故が不可避であるならば、事故の際の対応を「人間側」が行なうという発想である。
「事故後の対応」で人間が介入せざるを得ない場合もある。極端な話、避難誘導やけが人への応急処置などもある。必要なのはドライブ技術ではなく周辺技術になるのではないのだろうか。例えば
◎インシデント対応: 自動運転車が故障した際、人間の監督者の第一の役割は、乗客や道路上の人々の安全を確保すること。これには、車両を安全な状態にする(例:路肩に停車させる)、緊急サービスに連絡する、関係当局や乗客に明確な情報を伝えるといったタスクが含まれる。
◎緊急時の応急処置: 監督者は車両が関わった事故現場で最初に到着した人間になる可能性がある。専門家の助けが到着するまで、基本的な応急処置を施す必要が出てくるかもしれない。このスキルは運転とは全く関係ないが、人命を救う上で不可欠である。
◎乗客の管理: パニックに陥った状況では、乗客は混乱したり、おびえたりするかもしれない。人間の監督者は、秩序を維持し、避難のための冷静で明確な指示を出し、すべての乗客の安否を確認する責任を負う。これには、運転スキルではなく、強力な対人スキルやリーダーシップスキルが必要になる。
これは従来の「ドライバー」という範疇とは異なる。単に運転免許を持っていれば良いという話ではない。
■教育訓練の仕組みの革新
これまでの免許制度は、「複雑」で「難易度が高い」、バスの操作が必須だっただろうが、全くなくならないとは言わないが、ほとんどは必要の無い局面が主流になる。なぜならば、自動運転はその方向で動くからである。しかし、事故が起きうるリスクを考えると、公共交通機関のバスは、仮にレベル4になったとしても、インシデント対応、緊急時の応急処置、乗客の管理をする「セーフィティドライバー」が必要である。
従って、こうした新たな資質を訓練する機関が必要になり、ビジネスチャンスになりうる。今の教習所では、人命救助などは教えていないだろうと思う、
どうだろう。
2025/09/02