戦略人事:理不尽な時代の人材戦略【5/5】(人材ポートフォリオ戦略)


戦略人事:理不尽な時代の人材戦略【5/5】(人材ポートフォリオ戦略)

~常識を疑いながらの戦略人事~

■ 昔日の差

40-50年前には、就職と言うよりは就社というイメージが強く、いったん就職すればそのまま永久就職という感覚が強かった。女性などは、手頃な男を捕まえて三食昼寝付きを狙っていたことを隠しもしないような時代だった。

おそらくはバブル崩壊やコダックの内定取り消し事件などを経て、採用関連は大きく様変わりした。

・前倒しになっている3年内離職率
・内定辞退の報道の顕在化
・1ヶ月以内に辞める人々

などは人事部門を悩ます課題になるだろう。もっともことはそう簡単ではない。
自社にふさわしい社員と言っても、相手の事情だけを配慮していればすむ話ではなく、やはり優秀な人材が欲しいのは本音である。

就職する側からすれば「どんな将来像を描いているかを聞くなら、それを実現するためのロードマップを示せ」と言うことになり、それができないとなれば落胆して辞めて行くと言うことを聞いたことがある。採用する側にすれば「育成に時間とお金をかけたのに簡単に辞められるのは損失」という意識がある。

そのために、お互いのニーズのすれ違いが起きて下記の様な論が出てくる。

○深刻な人手不足にもかかわらず採用基準は一層厳しくなっているという矛盾…幹部社員を求める企業が抱える「ジレンマ」とは
2024.12.1

過去を振り返った際に「この経験とマッチしていなくてはならない」となると、採用が非常に限局的になります。人手不足をはじめとする不透明な時代においては、能力を持った幹部を思い切って抜擢して登用するということを、企業はもう少し柔軟に検討してみてもよいかもしれません。そうしないと幹部の人手不足もおそらくずっと解決できないということになってしまうでしょう。そうなると企業も成長できません。

マネジメント層が不足したままだと「マネジメントができない」=「末端のオペレーション部分のマネジメントもできない」ということになるので、組織がいつまで経っても成熟しません。例えば離職者が止められない、現場の売上・利益が上がらない、経営主体の売上・利益も上がらないということです。

https://gentosha-go.com/articles/-/65045

採用時に、そのヒトがどのように活躍するかなどは想定できない以上、ミスマッチは防ぎようがない。こうしたミスマッチが発生しても耐えうる人事施策を展開しなくてはならない。

■ ブルーカラー/新ブルーカラー

かつて高度成長時代にはブルーカラーとホワイトカラーという線引きがあった。「集団就職」と言われた時代は、中卒、高卒は労働者であり、大卒が管理監督者だった。おそらくはこの構図はなくなるだろう。

すでに企業はVUCAの時代に対応するために、企業の価値向上の為に自立・自律ができる人材が必要になっている。単純労働のブルーカラーはAIとロボティクスに取って代わられ、技能の特徴を持ち自ら考えることができる人材が生き残る。新ブルーカラーである。

従来のブルーカラー(単純な役務提供者)は、会社都合で再配置かあるいは解雇の憂き目にあうだろう。下記の様なことを企業は躊躇無く実施するだろう。

○イトーヨーカ堂、人員2割削減 配置転換や自然減が主体
2024年12月6日

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が2026年2月期までに正社員約1000人を削減する方針であることが6日、わかった。足元の全社員数の17%弱に相当する。セブンはヨーカ堂など非中核事業の売却交渉を進めている。売却に向け、グループ企業への配置転換などを通じて収益改善を急ぐ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3019P0Q4A131C2000000/

こうした中で、従来型のブルーカラーを優遇する理由がなくなれば、いわゆるパート社員tの線引きはなくなる。これは賃金体系の変更を余儀なくさせるだろう。

○最低賃金引き上げ、人材戦略見直し迫る バイトと正社員逆転も
2025年9月5日

2025年度の最低賃金は全国の加重平均で1121円となり、5年連続で引き上げ額が過去最大になった。働く人の生活の安定につながる一方、企業は生産性向上が不可欠となる。アルバイトの賃金が正社員を上回るケースもあり、給与体系の見直しといった動きも広がる。

最低賃金が上がるにつれ、改定の影響を受ける人は増えている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA04C9V0U5A900C2000000/

■ 日本人/中国人

少し差別的なタタイトルだ。謝罪するが、ここで、取り上げるのは企業が慈善事業のように日本人にこだわる必然性の崩壊と言うテーマだ。

○就職氷河期の中国若者、7月失業率17%…6,000社応募しても「あなたの代わりはいる」と言われ
2025/09/02

中国で若者の就職難が深刻化している。不動産不況の長期化などで企業が採用を絞り込んでいる一方、大学の卒業生は過去最多となっているためだ。米中の貿易戦争は中国経済の先行きに影を落としかねず、中国の「就職氷河期」は当面続くとみられている。

北京市内で仕事を探していた 于暁竜ユーシャオロン さん(24)はIT企業を中心に約6,000社に履歴書を送った。ある面接で「あなたの代わりはいる」と言われ、不採用になった。8月下旬にようやく就職は決まったが、「中国人は多過ぎて競争が激し過ぎる」と嘆いた。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250901-OYT1T50209/

高等教育を受けていない外国人労働者も多いだろうが、中国・韓国・インドなどは総じて教育の程度は高く、労働意欲も高い。また、国内に雇用環境がなければ日本にこれを見いだそうとすることも理解できる。法整備事の必要性があるので簡単ではないだろうが、それでも外国人が働ける環境の整備され始めている。

意思疎通がしやすいという理由で日本人を優先する風土は残るだろうがいずれ
・グローバル化を見据えれば多様性は強みになると考える企業も増える
・ダイバーシティを前提とした人材ポートフォリオの見直しが必要
という戦略の見直しが求められる。

■ ホワイトカラー/新ホワイトカラー

企業のマネジメントの基本はPDCAと言われている。しかし、これは少し誤解がある。
かつての高度成長期は、多少の不確定要素があるとしても「同じやり方を確実に実施することで成果を出す」コトが基本のためにSDCAと呼ばれる。従来の管理責任者は、このSDCAを確実に最適化することを求められた。従来型のホワイトカラーである。もちろん、課題解決力、問題解決力なども求められるので、単なる役務提供ではない。しかし、これらは近年のAIの高度化で代替性が高くなっている。

いずれ旧来型のホワイトカラーは不要になるだろう。代わって、戦略的な思考を持ち戦略計画を構築し確実に成果を生み出すための人材が今は求められている。これまでの議論はそうした人材(これを新ホワイトカラーという)の獲得が難しいことによる企業の右往左往を取り上げてきた。

いずれ「労使」という関係性を前提とした人事制度の見直しも必要になるかもしれないコトも意味している。重要なのは働く側の意識の変化である。

・人は会社の持ち物ではない
・人が「自分らしく」成長できる場所を求めている
・人はその場所に自らの未来を託す。
・会社に縛り付けられる理由は多様化する
・その中には(能力を発揮できるように)自分の自由時間を作れるようにすることも期待に入る。
・成果はその結果である(先義後利は人についても当てはまる)

思いつくままに書き連ねたが、考えて欲しい。

閑話休題

2025/09/28