ISO9001と経営:法令遵守は当然のこととして・その1(法律を守れない組織と守らない組織)
記憶だが、ISO9001:2008では、「法令遵守は当然のこととして」という一文があった気がしている。いつの間にか忘れていないだろうか。
4回目の第1回
■ニデックとビッグモーター
ニデックに関わる記事が目についた
○ニデック、中間配当金「無配」 業績予想も「未定」不適切な会計処理調査中で
2025年10月24日
ニデックは2024年7月に中国子会社で約2億円の購買一時金に関する会計処理の疑義が浮上し、その後複数のグループ会社でも不正の可能性が確認されたほか、経営陣の関与を示す資料も見つかっており、調査は長期化している。
ニデックではこれまで、株価や時価総額を経営の重要指標に掲げ、配当性向30%を目安とする安定配当や機動的な自社株買いの実施を経営方針としていたが、身から出た錆で市場からの信頼が急速に失われ、株主還元方針の実行も難しくなっているようだ。
https://response.jp/article/2025/10/24/402532.html
コンプライアンスに関わる案件だと思うが、不思議なことがある。
永守さんのコメントが一切見当たらない。業を煮やしたのか、「説明せぃ!」とばかりに社説などでも指摘されている。
○[社説]ニデックは疑義の解明急げ
2025年11月2日
会計不祥事で経営の土台が揺らいだ近年の事例は東芝だ。経営トップも関与した不適切会計によって、優良事業の切り売りや上場廃止など苦難の道を歩んだ。
ニデックについては、経営の中核にいる永守氏がどこまで事態に関与したのかや、過去に遡って決算の数値が修正された場合に同社の財務基盤がどれだけ毀損されるのかに注目したい。
同時に経営の混乱が現場にも波及し、競争優位の源泉である開発や工場のオペレーション能力が損なわれないよう、経営陣は細心の注意を払う必要がある。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD31CSQ0R31C25A0000000/
正直に言えば、永守会長の言動は好きになれない。彼の、前社長解任時に「稼ぐ奴が一番偉い」と言う発言は、組織に利益優先を沈殿させ、儲かるためには何をしても良いと言う風土を醸成しかねない。
ビッグモーターも突き詰めれば「利益優先文化」になるだろう。
「理(ことわり)より利益」という構造は日本企業の中で長く温存されてきた「成果=善」という文化の行き着いた形なのだろう。制度が整っていても、トップが「数字を作れ」と言えば、現場は“法”より“期待”を優先してしまうことの一例になる。
■「守れない」と「守らない」
しかし、やろうと思っても守れない(できない)とはなから守らない(やらない)は根本的に異なる事象になる。
「できない」は制度・構造的欠陥になる。背景としては人員不足、契約管理不在、情報非対称、業務量過多な度もあるだろう。もちろん無知もある。システム・業務プロセス改革が行なわれない限り改善しないが、改善の道筋はある。
いっぽうらない」は深刻だ。それは組織や従業員における意識・文化的欠陥に起因するからであり、組織自体を崩壊させかねない。儲け優先、責任回避、短期成果偏重、倫理軽視などがあるだろう。この場合の無知は、知っていても無視することも含まれている深刻である。理想をいえば、「リーダーシップと文化変革」がテーマになるだろう。
■組織文化への言及
現在、ISO9001は2026年版移行への議論が進んでいる。その中には「組織文化」という項目が含まれると聞く。しかし、そこには限界もある。
「法は最低限、ISOは設計、倫理は文化」
と言う言葉を使っているが、「ISO」は中から“信頼を設計する”仕組みであり「コンプライアンスの遵守そのものではなく、公正(Fairness)を経営の設計原理に据える」というコンセプトにとどまる。
法令遵守は当然のこととしても、それをないがしろにする組織文化を放置していては、この考え方も疎かになるだろう。