戦略人事:理不尽な時代の人材戦略【4/5】(エリート社員の囲い込み戦略)


~試行錯誤の人事戦略~

■ 形式的リストラの終焉

先の投稿までを振り返ると下記のことが指摘される。

メガバンクの中高年を対象としたリストラと並行して中途採用の積極的な展開をしていることはいくつかの報道を並べてみるとその姿が浮き彫りになる。

単純に言えば、
①生き残りをかけたこれからの事業展開は今までと同じやり方では立ちゆかない
②そうした新しい領域、例えばデジタル化は社内の人材では賄いきれない
③その時に必要な人材ポートフォリオでは、既存の中高年は不要である
という文脈が見え始めている。

そうした中で、ジョブ型雇用(年齢ではなくパフォーマンスの発揮能力、職能ではなく職務(実務実施能力))にシフトしてゆくことは、本来の姿に近くなる。

それは必然的に「高い能力を保有する人材の囲い込み」に向かう。

○大和証券、新卒初任給で20万円以上の差 「博士学生」を高処遇で採用
2025.9.24

 まず必要なのは「人材力」の再強化だ。一部の企業は今、従来型の横並び人事制度を廃し、むしろ公正な「格差」をテコに人材を強化する独自の取り組みを始めている。「超高給で優秀な人材を採り、最初から力を発揮させる」「専門性を高め、非適格なら降格も」……。

「早い時期から人のマネジメントだけでなく、事業や商品をつくっていける人材を採りたい。今までなら10年かけてそのポジションに就いていたのを、1~2年目でもやれる人材を採るのが狙い」(GMOインターネットグループの谷下田まどかグループ人事部長)。事業を生み出せるリーダーになり得ると見込んだ人材を採ろうというわけだ。対象者は2年間、年収710万円を保証し、3年目に評価によって再度、社内の給与テーブルに位置付け直す。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00787/091800006/

今までの「年齢給」を中心とした右肩上がりの給与体系は、優秀な人材獲得の足かせになる。なぜなら、年功序列の恩恵を受けた中高年がいる限り、賃金コストの適正分配ができないからだ。徐々にではあるが「年功賃金」からの脱却は進んでいる。

■採用戦略への影響

また、こうした高度人材の獲得に工夫を凝らしている企業も注目に値する。

○ 「働きながら博士進学」に道 富士通や島津製作所、新領域のコア人材に
2025年9月25日

生成AI(人工知能)の基盤となる大規模言語モデル(LLM)。今月8日、富士通は一定の計算精度を維持しつつ、省電力化する技術を開発したと発表した。大規模化が進むLLMの課題解決につながる技術だ。

開発の中心となったのは2023年に入社した市川佑馬。富士通が21年に導入した「卓越社会人博士制度」に応募した。修士課程の学生から希望を募り、博士課程への進学と同時に採用する仕組みで、給与も支払われる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2638P0W5A820C2000000/

完成された高度人材は争奪戦の対象となる。これを少しでも緩和させようとすれば謀略めいた方法も必要である。下記の様な事例も参考になるだろう。

○経団連 企業等の教育支援プログラム ポータルサイト
https://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/kyoiku/portal/index.html

島津ぶんせき体験スクール
小・中・高校生に「理科や科学に興味を持ってもらう“きっかけ”を提供したい。」との思いから「島津ぶんせき体験スクール」を開催しています。2007年より始めたこのスクールは、当社の分析装置の操作体験に加え、簡単な実験やモノ作り体験を実施しています。これまでに200回以上開催し、9,000名以上の方々に参加いただいています。
https://www.shimadzu.co.jp/sustainability/school.html#01

とはいえ、諸刃の件になりうることも理解する必要がある。インターン制度なども有効であろうが、本来の主旨から外れると企業ブランドの毀損につながる恐れがある。

○インターン、選考の場にしないで 小林健太郎氏 九州大学経済学部4年生
2025年9月25日

近年、就職活動においてインターンシップ(就業体験)が事実上の選考の場となっている現状に強い違和感を覚える。本来、インターンは学生が業界や企業の実際を知り、自分に合ったキャリアを考える機会であったはずだ。

通常、8月から9月にかけては大学3年生対象の夏インターンの時期になる。4〜5年前までは就活は大学4年から始めるのが一般的だったが、近年は企業の採用活動が早まる青田買いの傾向が強まっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD290Z60Z20C25A8000000/

■ 年功序列型賃金制度の終焉

こうした「高度人材」を特別扱いの賃金制度を構築しようとすれば、衡平性のある賃金体系を構築する必要がある。横並び賃金制度も再考せざるを得ない。

○ メガバンク、初任給上げと人事改革ドミノ 30万円到達後のハードル
2025年4月27日

2025年の春季労使交渉では初任給の引き上げにとどまらず、年功要素の強い人事制度の改定を表明する銀行が目立った。役割や能力を重視する制度に移行し、実力本位の人事を徹底する狙いがある。年功型賃金の起点となってきた初任給はここから先の上げ方が難しくなる。

メガバンクでは三井住友銀行と三菱UFJ銀行が初任給の引き上げを決めた。両行は26年4月入行の新卒社員の初任給を30万円にする。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB231FP0T20C25A4000000/

すでに中小企業では、新卒が採用されない中で中途採用者に頼らざるを得ない状況になっている。従来の「年功型賃金」(すなわち初任給から暫時上昇して行く賃金制度)では採用の差別化はできない。1度ガラガラポンと給与水準を見直さざるを得なくなると考えている。

大企業が「年功型賃金」ではなく「能力型賃金」に移行したときに、自社の賃金制度が競争力を持つのかを考える必要がある。