ISO9001と経営:法令遵守は当然のこととして・その3(経営者の「俺は知らない」の無責任)
記憶だが、ISO9001:2008では、「法令遵守は当然のこととして」という一文があった気がしている。いつの間にか忘れていないだろうか。
4回のうちの第3回目
■ 経営者が「俺は聞いていない」は通らない
経営者の責務というと、品質マネジメントシステムだけに限った話だと自ら狭めることは望ましくない。企業の不祥事が起きたとき、大きな企業にあればなるほど都合の合悪い情報が集まらなくなってくると言われている。しかし、これは免罪符にはならない。
法律上も、それを許さなくなっている。
● 刑法・行政法の面
・業務上過失致死傷罪(刑法211条)
現場の安全管理義務を怠った経営者が、直接作業に関与していなくても責任を問われる。(例:建設業、製造業、鉄道・運送など)
・労働安全衛生法・食品衛生法・個人情報保護法
管理体制そのものに監督責任を課しており、「知らなかった」は免責にならない。
・企業法務
上場企業を中心に「内部統制報告制度(J-SOX)」により、経営者は「組織のリスク管理体制の有効性」に署名責任を負う。
● コンプライアンス指針(経産省・金融庁など)
近年の行政ガイドラインでは「経営者によるトーン・アット・ザ・トップ(Tone at the Top)」が明確に要求されており、形式的な責任ではなく「倫理的方向づけの責任」が問われる。
特に2023年以降の企業不祥事(ビッグモーター、ダイハツ、日野自動車など)を受け、
「知らなかった」「報告が上がってこなかった」という言い訳は、社会的にも“経営者失格”と見なされるようになった。
■ ISOの意義(責任は取るための仕組み)
ISO9001にも関連する記述がある。
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.1.1 一般
トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。
a) 品質マネジメントシステムの有効性に説明責任(accountability)を負う。
漠然と読み飛ばすことは避けて欲しい。下記は一つの考え方である。参考にして欲しい。
ISOの英文原文では “The top management shall demonstrate leadership and commitment with respect to the quality management system by… a) taking accountability for the effectiveness of the quality management system.” と書かれている。ここでの accountability は単なる「責任(responsibility)」ではなく、結果に対する説明責任を意味しる。つまり:
「仕組みが機能していない場合、あるいは法令違反が発生した場合、
その原因が“現場”にあっても、最終的な説明責任はトップにある。」
ということである。すなわち
・ ISO9001:2015の5.1 a) は、「法令遵守を含む品質マネジメントシステムの有効性」についてトップが説明責任(accountability)を負うことを明示している。
・これは単に「品質問題の責任」ではなく、「仕組みが不正や逸脱を防げなかったこと」への責任でもある。
・よって、法令遵守の仕組みづくり・文化醸成は、まさにこの5.1 a)の要求に根拠を持つ。
と解釈されるべきである。