ISO9001と経営:未来という視座(MCPの破壊的影響)
事業を理解するためのフレームワーク(PEST)
ISO9001:2015での「~しなければならない」は下記の文言で始まる。
>4.1 組織及びその状況の理解
>組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
もっとも、では具体的にどのようなメソドロジーを使い、どの様に具体化するのかといった示唆はどこにもない。少し気の利いた組織であれば「SWOT分析」を使う例もあるが、そもそもSWOT分析だけで戦略分析ができるわけではなく、関連したフレームワークと組み合わせることが必要である。
ISO9001:2015ではプロセスアプローチを推奨しているが、事業の構造を理解するためのフレームワークを用いている組織は少ない。できれば「バリューチェーン」程度は頭の片隅においてほしい。
また、リスク分析と言ってもいきなりSWOT分析ではなく、外部の課題について言えばPEST分析(政治、経済、社会、技術、に関する現状や将来への動向の分析)なども併用してほしい。
もっとも、ここで言う「経営分析のためのフレームワーク」は多くの人に馴染みがない。ある程度、経営戦略や事業戦略にかかわらない限り目にしない。だれでもがMBAの資格を持っているわけではない。それでも、関心を持って調べてみてほしい。いまは、AIに聞けば教えてくれるし、トレーナーにもなってくれる。
要は関心を持つことである。
それはどのような分野でも良い。
MCPという見慣れぬ技術
私は好奇心が強く、色々な記事があるとなんだろうと探ってゆくことを厭わない。もっとも、それほど頭脳明晰ではないので色々苦労はするのだが。主な分野はIT技術になるのは、元々がプログラマーだからだ。さて、そうした中で「国土交通省が「MCPサーバ」公開」という記事を見た。[1]
興味があったのでサイトに移り説明を見てると、国土交通省なので利用者は建築土木の事業者に限られ登録することが必要になるようだ。部外者は関係がない。
好奇心のおもむくままに調べてみると「AWS Knowledge MCP Server」という記事を見つけた。記事内容を読んでみるとAWSで参照できるドキュメン類に対して生成AIからアクセスできるようにしたようだ。
「MCPはLLMがツールや情報源に安全にアクセスするための汎用プロトコル」であり、意味情報の問い合わせもその利用形態の一つになる。またMCPサーバは「「ツールを提供し、LLM側のクライアントが安全に呼べるようにする」ための仕組みで、情報だけでなく多様な機能を公開できる。と説明されている。
詳しい説明は省くが、大企業がサプライチェーン・バリューチェーンに関わる自社の情報をMCP対応にすれば、サービス品質の驚異的な向上につながると想像できる。
MCPが普及すると、顧客は“対話でデータを呼び出せる”世界を前提に動くようになる。つまり、既存の手続き依存型サービスは「遅い」「分かりにくい」と感じられるようになる。これは利害関係者(顧客)の“期待の水準”を押し上げる。こうしたことを想起してほしい。
未来に視座が変わり始めた規格要求事項
さて、MCPという技術的な枠組みは、未来のビジネスシーンを大きく変えてゆく可能性があり、先進的な取り組みを考えている企業であれば関心が高いのではないかと思っていたがそうでもなかった。
システム開発を生業とする企業の経営責任者と話をする機会があり、課題として「自社の技術力」を挙げていたので、「では、MCPへの取り組みはどう考えていますか?」と訊ねると「それはなんですか?」と聞かれた。MCP自体はすでにかなり浸透していると思ったのだが意外だった。
しかし、話をしているうちに彼らの関心事は「現在の表面的な課題であることがわかった。明示的に要求されていないものには関心がないのだと気付かされた。しかし、これは時代の趨勢に合わないのではないかと危惧する。
ISO9001:2015はすでに「Amd1:2024」が追加され、「気候変動への対応」が求められている。また、現在ISO9001:2026の議論が進んでおり、その中では組織文化にまで言及が進んでいる。リスクの幅が地域的に広がっていること(すなわちグローバル化していること)、内面へ踏み込んでいることなどが読み取れる。これらは、従来は「過去と現在」に力点が置かれていたものが「未来」に視座が移っていると感じる。
これらの変更は、「過去に起こったこと」や「現在行っていること」の適合性を問うだけでなく、「組織の活動が未来の地球環境や社会にどう影響するか」「未来の予期せぬ変化(気候変動など)に対し、組織がどう生き残るか(事業継続)」という未来志向の問いを QMS の中核に据えようとしていると考えられる。
これは、顧客要求事項への対峙の仕方にも影響を与える。
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
次の事項は,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため,組織は,これらを明確にしなければならない。
a) 品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
b) 品質マネジメントシステムに密接に関連するそれらの利害関係者の要求事項
組織は,これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し,レビューしなければならない。
仮に2026年版でも同じ文言だとしても、「未来に視座を含める」という視点では、この要求事項に対して、組織は、現在の製品・サービスに対する顧客の声(顕在化しているニーズ)だけでなく、事業構造の変化、社会要請、技術革新(MCP)といった外部環境の変化(PEST要因)を考慮に入れ、利害関係者が将来持つであろう期待(潜在的なニーズ)を先取りして特定することすなわち「顧客が認識していること以上のこと」を考えるということも必要になる。
足元だけを見るのではなく、頭を上げて先を見据えるということである。
参考とした記事と引用
[1]国土交通省が「MCPサーバ」公開
「国土交通省が「MCPサーバ」公開 APIの知識不要、対話形式でのデータ取得が可能に
非エンジニアにも開かれたデータ基盤 2025年11月18日」
>国土交通省は、APIの知識不要で、自然言語による対話形式で「国土交通データプラットフォーム」からデータ検索が可能なMCPサーバを公開した。
>MCP」(Model Context Protocol)は、大規模言語モデル(LLM)などを使ったAIアプリケーションと、外部のツールやデータとの連携を標準化するプロトコルだ。2024年にAnthropicが発表したもので、AIが外部サービスを安全かつ一貫性のある形で利用できるように設計されている。
>国土交通省は2025年11月4日、このMCPを活用したアプリケーションとして、APIの知識は不要で、自然言語でデータ検索ができる「MLIT DATA PLATFORM MCP Server」を無償公開した。
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2511/14/news056.html