観察力の欠如とハラスメントについて
文責:中野康範
作成:2026/1/8
カテゴリー:戦略人事
社内のコンプライアンス違反やハラスメントなどの問題を懸念する人事担当者に向けて。
◆ はじめに
コンプライアンス違反は最悪企業の存続を脅かすこともある。ビッグモーターなどは典型であり、ニデックなども屋台骨を揺るがしかねない。ハラスメントは「ブラック企業」としての汚名を与えかねず、社員の流失や採用難に直面する恐れもある。離職率の高い会社は敬遠されることにもなりかねない。
こうしたコンプライアンス違反やハラスメント防止は可能である。簡単なことである。注意深く社内を観察することだと思う。
◆ 考えさせられるニュース
「今月4日、栃木県の県立高校に通う生徒が別の生徒に殴られたり蹴られたりする様子を撮影した動画がSNSに投稿されているのがわかり、警察が詳しいいきさつを調べるとともに栃木県教育委員会が調査を進めています。」としてSNS投稿の高校生暴力動画 “いじめ視野に調査”栃木県教委 2026年1月7日というニュースが上がった。
ここではいじめ云々とか教育委員会での対応の是非について述べるつもりはない。違和感を覚えたのは以下の一文である。
>高校では今後希望する生徒へのカウンセリングを行うなど心のケアに当たるとともに、いじめだと思われる行為を受けたり見たりしたことがあるかなど、全校生徒を対象にしたアンケートを行うことにしています。
これは、教師が日頃から生徒を観察し、必要なコミュニケーションを取っていなかったということだ。
一つの対照例として、私の私的な経験を挙げる。
私の息子は私立高校に通い、入学式の時に校長が「便器ょの仕方を学んでもらう」という方向性を示し、担任の教師は「絶対してはならないこと」に「いじめ」を掲げ、その意志を明確化していた。違反をすれば「直ちに追放する」という覚悟だ。実際に、学生生活において、その関与度を高めていた記憶がある。
県立高校の事件は「無関心」な「教師」が学校の文化を形作っていたのだと感じた。
◆ ハラスメントの多様化
すでにパワハラ、セクハラは一般化した言葉になっており、その対応窓口を設けることの義務化や対策のガイドラインが行政から示されるなど、企業の人事部も一定の規範を手に入れているだろう。しかし、「被害者」が何らかの「圧」を受けたと感じればすべてハラスメントになる。
それは多様化しており、「カスハラ」、「就活ハラスメント」なども話題に上がっている。[1]
「マタハラ」などは、そんなコトバもあるのかと思ったのだが、最近では「リスハラ」(リストラの対象となった従業員に対し、退職へ誘導することを目的にプレッシャーや不当な扱いを加える行為を指す。)などという言葉まで出てきている。
言葉の多様化の話ではあるが、本質的には「肉体的」、「心理的」ないじめである。
上述のリスハラなどの例でも
具体的には、上司や周囲の同僚が本人に対して 業務上不合理な要求をしたり、唐突に役割を外して疎外する といった例が見られます。
また、パワハラやセクハラのような明確なハラスメントだけでなく、無視・陰口・情報共有の排除など、精神的に追い詰めるモラハラ的な働きかけが組み合わさることも特徴です。
と複合的なハラスメントが例示されている。[2]
◆ 氷山の一角をあぶり出す
ハインリッヒの法則というのは知っているだろうか、AI検索を使うと以下のように出てくる。
ハインリッヒの法則(Heinrich’s Law)とは、重大な事故の背後には、はるかに多くの軽微な事故や事故寸前の出来事、すなわち「ヒヤリハット」が存在するという、労働災害における経験則を表す法則です。
1件の重大事故(死亡・重傷など)に対して、29件の軽傷事故があり、さらに300件の傷害を伴わない事故やヒヤリハット(ニアミス)が存在するという「1:29:300」の比率で示されること
実は、コンプライアンス問題もハラスメント問題も、似たような傾向がある。
社員意識調査などで、ハラスメントやコンプライアンス違反を訊ね、「ある」もしくは「多少ある」も含めて5%以上のスコアがあれば、確実に状態化していると見て良い。
もっとも、質問は「しているか」などと聞いてはいけない。下記について「見聞きしたことがあるか」と聞くことである。
・上司が部下を怒鳴っている
・上司が部下を睨みつける
・上司が(あるいは同僚が)無視する
・私事都合以上の有給の理由を聞く
・困っているのに声がけしない
こうした”事実”を列記すること、また本人ではなく周囲について聞くことで責任追求をしないことなどに配慮することである。
こうした質問の設計には2つの要素が必要である。
・人事部門が自社を観察して、「起きそうなこと」、「しては困ること」を観察して具体化した行動に結びつけること。
・社員にしてはいけないガイドラインを提示するとともに観察力や感度の向上を促すこと。
結局、ハラスメントやコンプライアンス違反の最大の敵は「無関心」である。
◆ 参照
[1] 「 職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
~全国の企業・労働者等を調査し、ハラスメントの発生状況や予防・解決に向けた取組の主な効果・課題を把握~
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html
[2] リストラハラスメント(リスハラ)とは?背景・事例・人事が知るべき防止策
2025/12/18