社員満足度調査を行う意義

「ハーバードビジネスレビュー 2019年2月号」の特集は「コレクティブインパクト」だ。
コレクティブインパクトに関連して「ソーシャルインベーション」を取り上げているが、その中で、「私」と「仕事」の関係性にも着目している。

その一節を引用する。

1974年のスタッズ・ターケルの名著「仕事(ワーキング)!」に、「すでに労働者にとって仕事の意味は金銭的報酬と並んで重要なことだ」という記述がある。40年たってこの傾向はさらに強まり、最近の調査によると、米国労働者の9割以上の人が、意味のある仕事なら23%生涯賃金が下がっても良いと答えている。

また、この文に続き、下記の一節がある。

また、仕事に意味を感じている人は、仕事満足度が高く、満足度と生産性の高い相関も証明されている。

多くの企業に接する機会があり、業績を上げている組織は社員の積極性が高いことは肌身で感じている。

こうしたことを後押しするように厚生労働省からも、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書 ~企業の雇用管理の経営への効果~」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/0000127988.pdf

が提示されている。

引用すると、

■ 雇用管理改善の取り組みは、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながる
・本調査の分析結果は、雇用管理改善の取組が、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながることを示している
・ただし、それには企業の取組において以下の観点が重要。また、行政の役割も重要である
■経営においては、「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要
・経営方針として「顧客満足度」を重視している企業は多いが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くない
・だが、調査結果は、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いに対して、どちらかだけでなく、両方を追求することの効果が高いことを示している
・経営者は、自社の経営方針を従業員に浸透させることが望ましい
■雇用管理改善に、継続的に取り組むことが大事
・分析結果は、雇用管理改善の取組期間が短い企業よりも、継続的に取り組んでいる企業で、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いが高いことを示している
・つまり、継続的に取り組むことで雇用管理改善の結果は出る
・ヒアリング調査でも、たとえ効果が明示的でなくとも継続的に取り組むこと、また、計画的に取り組むことの重要性が示唆された

となっている。

弊社が以前行った「eHRM研究会」においても、モチベーションの3要素を提唱したことがある。

1.ふさわしい仕事
個である「私」が仕事を通して「社会」や「未来」にどう向き合うのかのアイデンティティを確立できること。
2.ふさわしい環境
設備や機器などのハードウエア、情報通信などのインフラ、HRM等の制度、社員同士のコミュニケーションの場の提供など、「ふさわしい仕事」をストレス無く行うことができる環境があること。
3.ふさわしい報酬
「ふさわしい仕事」ができたかどうかを確認できること。その成果や過程を見守り、ふさわしいフィードバックを行い、仕事への意欲を高めること。必ずしも金銭的報酬にはとどまらない。

当時のいろいろな議論を踏まえても、それほど的外れではないだろう。
社員満足度が業績を左右するのであれば、こうしたことを配慮することは戦略上の重要な位置づけにすべきだ。

直接の対比はされないが、当社で提供している「SRO組織生産性診断」もこれにフォーカスしていることがわかる。

社員意識調査を考えるための道具立てを用意しました

社員満足度が重要であることはいろいろなところで記載されています。
しかし、心を調査することなどできるわけもなく、どうしても隔靴掻痒にならざるを得ません。
社員満足度調査もその程度と割り切ることが必要です。

では、いい加減な気持ちでやって良いかというとそんなことはありません。
論理的な考え方を確立し、丁寧な分析が必要です。

当社は、いくつかの枠組みを提供しています。
参考にしてください。

■ ガイドブック

社員意識調査を考える際の諸々のことを記載しています。

「社員意識調査のガイドブック」の公開

まだ完成していませんが、適宜更新して行きますので参考にしてください。
ずいぶん前に整理したものなので、足りないところや、「今」を反映していないところもありますが、多くは有用だと思います。

こうしたことも記載してほしいと言うことがあればお問い合わせください。

■ 個別グラフ提供の提案

社員意識調査を外部委託すると、どうしても定型的なアウトプットしか提供されません。
個別の集計を行おうとするとどうしても仕組みが必要になり、担当者の力量に左右されません。
個別の集計表についての考え方を提示しています。

自分で集計してみよう

当社では、いくつかのテンプレートを用意していますので、問い合わせをしていただければと思います。

■ ドリルダウン・ベーシック

これも、定型的なアウトプットをカバーするツールになります。
属性別に設問のすべてのクロス集計を行います。
目的は、ある設問は属性ごとに回答傾向に差があり、その属性に対して何らかの手を打つ必要があるのかの判断に使います。

社員意識調査の支援ツール(ドリルダウン・ベーシック)

たとえば、目標管理制度のフィードバックについて、役職などの階層別に評価を確認し、階層ごとに差があるのであれば何らかの施策が必要であることが示唆されます。

■ ドリルダウン・クロス

多くのデータを一度に眺めて、その法則性を発見するプロセスは必要です。
ある設問はどの設問と高い関連性があるのか。
例えば、社員の会社へのロイヤリティは上司とのコミュニケーションと関連するのか、あるいは教育訓練への評価と関連するのかなどの知見は漠然と平均値だけを見ていてもわかりません。

社員意識調査の支援ツール(ドリルダウン・クロス)

このツールは、設問同士のクロス集計と相関係数を計算します。
100の設問があれば100×100の組み合わせの集計表を作成します。
一つ一つピボットテーブルを作成していては時間が足りなくなるでしょう。
これを効率化するためのツールになります。

社員意識調査の支援ツール(ドリルダウン・クロス)

設問間のクロス集計を行うツールを公開しました。

https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se518888.html

これは、設問ごとのクロス集計を行うためのツールです。

想像してみてください。

・満足度を聴く設問は、どの設問と関係するのだろう
・仕事環境の評価の善し悪しは人事制度膿尿とどう関係するのだろう

社員満足度調査は、単に聴きたいことを羅列するものではない。
何らかのモデル化(因果関係の仮説)を反映したもののはずである。

しかし、あらかじめ想定したこと以外の発見もあるかもしれない。
そうしたときに、一つ一つの設問間のクロス集計をピボットテーブルで検証している暇はない。

このツールは、単純なツールであり、データを設定し、設問構造を定義するだけで、すべての組み合わせのクロス集計と相関係数の計算を行うものです。

このツール以外にも、性別な年齢別の設問のクロス集計やχ2検定を行うツールも公開しています。

併せて参照してください。

社員意識調査の支援ツール(ドリルダウン・ベーシック)

社員意識調査の集計支援のツールを公開しました。

https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se518833.html

一言で言えば、すべての属性とすべての設問の組み合わせでクロスの構成比を算出して帯グラフを作成するものです。

例えば、属性区分(性別、年齢、職種など)がP種類、設問数がNだと、P×Nの集計表とグラフを作成します。

説明書なども同梱しているので詳細はそちらに任せますが、少し補足説明を。

事業として、社員意識調査の支援をしていますが、限られた時間・限られた予算と言うこともあり十分な集計結果を提示できていないという悩みがありました。
例えば、上記の例で属性が5種類、設問が80あれば、400種類の集計表とグラフが作成されます。

報告書などは印刷を前提にしているところもありますから、400個もの集計表とグラフは持て余します。報告書の作成も、設問ごとの平均値が中心で、全体としての構成比を出す程度です。

しかし、焦点を絞って分析をするのは必要なのですが、前提としてすべての資料があることが前提になります。ですが、一つ一つをピボットテーブルなどで作成していては大変ですし、グラフも一つ一つつくっていてはいくら時間があっても足りません。

このツールは、こうした作業を一気にしてしまうためのものです。

さて、このツールのもう一つの特徴は、χ2検定の値を出すことです。
例えば、職種別に有休の取得のしやすさに差があると言えるのかなど、属性ごとの回答性向がたまたま違うように見えるのか、はっきりと違うと言えるのかを検定します。

当社は有料のツールとも思ったのですが、社員意識調査を正しく使ってもらうことを目的としていたのでフリーのツールとして公開しました。

次の予定は、設問間のクロス集計と相関係数を算出するツールを公開予定です。
これも、設問数が80あれば、80×80=6400の集計表を作成します。

乞うご期待。

9.18 平均値をなぜ使うのか・統計への理解をしておこう

改訂しました

9.18 平均値をなぜ使うのか・統計への理解をしておこう

[問いかけ]

・平均値で語ろうとするのはなぜなのだろう

・平均値でなければどんな指標があるのだろう

・平均値を正しく使うにはどうすれば良いのか

 

○ 簡単に手に入る統計値

Excelでのデータ処理が簡単にできるようになり、一般的な統計値が計算式を入れるだけで値を取得できるようになりました。例えば、Excelの計算式は、

平均値             Average

最大値             Max

最小値             Min

標準偏差          StdDev

サンプル数       Count

で計算できます。

統計という言葉は、なんとなく分析していますという安心感を与えてくれます。

一般的な社員意識調査の報告書でも平均値を中心として報告がされ、受け取る方も何も疑問に思わずに受け入れます。

その結果、平均値が低い、あるいは高いと言うことを判断基準にして施策を展開しようとします。

しかし、こうした姿勢には疑問も感じます。

 

こうしたアンケート結果を解析していたときに、以下のような指摘をされたことがあります。

 

  • 100のデータがあれば100のデータの意味がある。代表値として平均値を使うことで多くの情報が失われる。そこに思いをはせなければならない
  • 平均値は母集団が正規分布となっていることが前提になる。そうでない母集団の平均値をとっても意味は無い

 

特に、正規分布とそれに関わる考え方を理解をしていないと、そもそも平均値とはということが理解できない。こうした理解を無視して平均値の議論をすることに危惧している。

 

○ 平均値が意味を持つための条件

データが統計的に処理できる前提条件として、「中心極限定理」というものがあります。

どんな説明かというと、下記のようになります。

平均がμ、標準偏差がある有限の値σという母集団から標本を作製するとき、標本平均Xの標本分布は標本変数nが大きくなるにつれて、平均μ、標準偏差σ/√nの正規分布に近づく

「ビジネス統計学 上」ダイアモンド社より

 

正規分布とは何かを直感的に理解しようとすると以下のようなグラフが提示されることが多いです。

簡単に言えば、平均を中心として左右に一定の規則で提言して行くと言うことです。

こうしたことを言うためには、十分なサンプル数が必要です。

同書では標本変数が十分大きいというのは「一般に、30個以上の要素からなる標本は、中心極限定理を適用できるほど十分に大きいと考えられる」とされています。

したがって、サンプル数が少ないとそもそも上記の定理が適用できないので注意が必要です。

階層別に集計するときに注意が必要なのは、特定の回答者だけ選別することでサンプル数が少なくなることです。

もう一点注意が必要です。

5段階評価のアンケートの分布では、こうしたきれいな図は描けません。

つまり、中心極限定理がつかえたとしても、正規分布と言えるのかどうかがわからないと言うことです。例として、1から5の回答がすべて均等の平均値3.0と3しか回答のない3.0を比較して意味があるのかと言うことに帰着します。

 平均値だけで判断しないことも求められます。

 

[閑話休題] 大数の法則

中心極限定理の別名に「大数の法則」というものがあります。よく使う説明として以下の言い方を使うことがあります。

 

「繰り返し試行する事象は、その本来として持っている確率に近くなる」

 

これはどういうことかと言えば、例えばコイントスがあります。

これはコインをトスしてして裏表を出して行くとき、一回の試行では裏か表かで0%、100%となりますが、100回も繰り返していれば、ほぼほぼ半々になると言うことです。

同様にサイコロなどもあげることがあります。

 

を事例であげるとわかりやすいだろう。

「社員意識調査のガイドブック」の公開

こんな結果から何を読み取れるだろう。

2012年に「社員意識調査の実務」をまとめてからいろいろなことが変わった。
社員意識調査を大切だと思い取り組んでいる企業も増えて、インターネットでのサービスも普及したように見える。

一方で危惧されることもある。
(1)平均値を重視しているが、その統計的意味を理解しているのだろうか
(2)アンケートでしかわからないこととは何かを意識しているのだろうか

こうしたことをおざなりにすることは良いこととは思えない。
こうした思いもあり、再度「社員意識調査のガイドブック」として再編を開始した。

最初の版は、2012年度に作成したドキュメントをそのまま再編している。
不完全なのだが、まずは公開する。

公開に当たっては、ワード文書をそのまま提供している。
著作権や免責事項などは文書の最初に記載しているので確認してください。

次の版は、いろいろなコラムを乱雑に記載しており、その内容も脈絡のないものが多いので、まずはきちんとメッセージ性を確立することに注力する。

その上で、サイドガイドブックとしてふさわしい構成にする。
同時に、いろいろなツールなども作成しているのでその公開も始める。

またゆっくりとしたペースになるかもしれないので、気になる人は連絡をください。

資料はこちらから ➡ 社員意識調査のガイドブック・0.1版

 

社員満足度調査の属性区分について

昨日、回答性向に属性による違いが無いかを検証する手段として、χ2検定について記載した。

新卒採用と中途採用では「生きがい」に違いがあるのか

前提条件とする考え方は統計や数学の世界でもある。
代表的なものは「大数の法則」だろう。

これは「試行を繰り返すと、その事象は本来持っている確率に近くなる」というものである。わかりやすい例では、サイコロを振って出てくる目は、最初の1回目では、例えば「3」が出れば、「3」は100%で、他の目は0%であるが、1万回もやれば、ほぼほぼどの目も均等になるだろうということで考えてほしい。

ところで、これは「少ないサンプルでは判断してはならない」と言うことにつながる。

さて、これは「社員満足度調査」の属性を設定する際にも注意が必要になる。
あまりに属性対象者が少ない区分を対象としない方が良い。
目安として、10人に満たない場合には避けた方が良い。

主に、下記の3つになる。

(1)高齢者もしくは若年者
定年延長などの問題があるために、60歳以上、あるいは雇用としての嘱託社員を対象としたい気持ちはわかる。しかし、サンプル数が少ないのであれば、個別に対応すべきで、調査の属性区分で、例えば、50歳代、60歳以上という区分は避けるべきだ。
同様に、20歳未満も辞めた方が良い。
もっとも、対象区分が一定数以上いるのであれば別だ。

(2)管理職と一般職
管理職層も細かく分けたいという欲求にかられる。部長、工場長、所長など、職責に違いがあるので聞きたい気持ちはわかる。
しかし、工場長と工場勤務者の違いを知りたいのであれば、別の調査方法になる。
データをどうとるかは別にして、大きく、管理職層と一般職層で区分した方が良い。

(3)所属、職種
どのような働き方をしているかを見たいというニーズはわかる。しかし、あまり細かく属性を区分するとサンプル数が少ないということの他に、個人を特定してしまうというリスクがある。これは、調査に回答する側からすれば、後で何か言われるのではないかという不安感を与えることになる。属性区分は5つぐらいにとどめるべきだ。

さて、属性区分を細かくしないと実態がわからないという声があるが、統計的に傾向を分析するという話と個別の課題に対応するという話を混在している。
細かく見たければ、社員一人ひとりにインタビューをするべきだ。
目的が違うので注意してほしい。

新卒採用と中途採用では「生きがい」に違いがあるのか

例えば、「仕事に生きがいを感じている」という問いに、「はい」から「いいえ」について下記の回答を得たとします。

はい どちらかといえば

はい

どちらとも言えない どちらかと言えば

いいえ

いいえ
新卒採用 15 65 71 24 15
中途採用 14 50 30 1- 1

さて、「仕事に生きがいを感じている」という問いに対して、新卒と途中とでは異なる回答性向を示しているのでしょうか。
より具体的な問いかけとして、新卒の方が「「仕事に生きがい」を強く感じているのでしょうか。もしくは中途採用の方がその思いは強いのでしょうか?

グラフを見ると下記のような感じになります。どうでしょう。

仮に新卒と中途では全く回答の仕方が同じであれば、新卒の「はい」から「いいえ」の回答の比率と、中途のそれは全く同じになります。

上のデータでは新卒は190人、中途が105人となっているので、仮に新卒と同じ比率で中途が答えたとしたら、8人、36人、39人、13人、8人の回答になるはずですから、実際には否定的な回答が少ないことがわかります。

では、この結果から新卒と中途の人の回答には差があると判断して良いでしょうか。

こうした問いに答えるために統計の世界ではいくつかの手法が用意されています。
それがχ2検定という手法です。

χ2検定とは何かと言えば、二つの事象がお互いに独立しているかを調べるもので、専門的には以下のように記載されます。

「2つの事象AとBについて、その同時確率P(AB)がAの確率とBの確率との積となるならば、すなわち P(AB)=P(A)・P(B) となるならば、AとBは独立であるという」

独立の程度を図る指標としてχ2値を計算し、0.01未満であれば、差があると認められるというものです。

上記について計算するとχ2値は、ほぼ0.01であり、差があると判断できます。
これは実際のグラフを見た結果と直感的に合います。
中途の方が、目的意識が高いという仮説と矛盾しません。

しかし、この説明でわかるためには、大学の教養課程の統計の知識が必要になります。
普通の人にはわかりにくいですね。
そのため、あまりχ2検定まで行っている例はありません。

しかし、回答傾向を直感で見ること自体は良いのですがもう少し科学的な手法を使った方が良いでしょう。

当社が用意している「ドロップダウン集計」ソフトウエアは、想定される集計表とグラフ、χ2検定を一括で行うためのものです。

現在、Vectorで公開するために準備中です。
ただし標準版はあくまでもサンプルになります。個別企業ごとにカスタマイズが必要になります。
興味のある方はお問い合わせください。

なお、χ2検定については下記が参考になります。

https://bellcurve.jp/statistics/blog/14038.html

http://www2.tmig.or.jp/library/kango/2005-kango-kenshu-3/kango-text2005%20×2.pdf

社員満足度調査での自由回答を眺めるだけにしていませんか

○ 放置される自由回答

社員満足度調査を行う企業が多くなってきている。
背景には、社員満足度調査に関する情報がネット上でも普及しており、安価なサービスが出回っていることも背景にある。
また、集計ソフトなども整備されており、Excelを活用すれば一定の調査結果を作成することが可能になっている。
一方でそうした事例を数多く見ていると、自由回答の結果を有効活用している事例が少ない。
それは自由回答の持つ特性には、
・局所的である
・事実確認ができない曖昧さがある
・感情的なものになりがち
ということもあり、取り扱いには苦慮しているようだ。
一般的には、一覧にして眺めているようだが、どうしても分析が情緒的・直感的なものになってしまい、思慮の欠けた施策展開になりやすい。
一覧を眺めているだけでは、分析に発展することはできない。
一定の統計的分析が必要になる。

○ 統計的に分析する手順

統計と言っても、いわゆる多変量解析を中心とした専門の統計分析にまで手を出す必要は無い。簡単な頻度分析で十分だ。
その手順は以下の通りになる。
(1)出現する単語(キーワード)の集計
仮説として、下記を前提にする。
・自由回答には社員の本音が含まれている
・焦点となる単語は繰り返し出現する
従って、最初にすべきことは「どんな単語がどの程度出てくるのか」を調べること。
いわゆる「形態素解析」で行うことになる。

(2)セグメント分類
次に、その単語は、社員満足度を左右する事柄のセグメントとどのように対応しているのかの仮説を立てること。
セグメントは、社員満足度調査の調査項目と対比することが望ましい。
例えば、下記が考えられる。
・機能面(福利厚生、採用、教育、再配置、報酬)
・運用面(コミュニケーション、セクハラ・パワハラ、女性活用、上下関係)
・感情面(漠然とした不安、会社へのロイヤリティ、過重労働)

(3)自由回答の精査
組織全体の大まかな枠組みが決まったら、実際の自由回答を精査してセグメントごとに分類を行うと同時に代表的な意見をピックアップする。

(4)施策への展開
最終的には、こうした自由回答が出てくる背景が、個人ごとの問題なのか、部門や特定の職務に固有の特性によるものなのか、組織全体の仕組みの問題なのかを判断する。
こうした判断は、属性ごとの集計などを行うことで明らかになって行くケースも多い。

○ 分析すべき自由回答の量

さて、こうした自由回答の分析は、いつも有効とは限らない。
配慮すべき事項は、回答率と回答数になる。

(1)回答率回答率の注意すること。
20%以下であれば、自由回答を元に政策決定は控えた方が良い
局所的な問題になる恐れがある。
特にセクハラ、パワハラは特定の個人に帰着する恐れがある

一般的には、30%前後になる。
30%以上であれば一般化しやすく統計分析の価値がある。
40%を超えて回答されている場合には、会社はなんとかしてくれるという期待
の表れであることが想定される。聴きっぱなしにしないことが大切になる。

(2)回答数
回答率に関わりなく、300以上の回答があれば、何らかの統計処理が望ましい。
自由回答が300を超えると、目視だけでは傾向分析ができないことが多い。
最終的には、一文一文を精査する必要があるが、まずはどのような単語が多く出てくるのかを統計的に集約しておく必要がある。

○ 自由回答を社員満足度調査に含める場合の注意点

個人的な問題にならないように質問文を工夫することが求められる。
回答を得た後で施策に展開できないような質問はしないこと。
「困りごとはないですか」などと言った聞き方は、漠然としている上に、個人の相談になりかねない。
焦点を絞ること。抽象的でも下記の程度で抑えること
・会社の制度で変えてほしいこと、維持してほしいこと
・会社の○○戦略(例えば、グローバル戦略)についてご意見をください
ただし、「会社を働きやすい環境にするためのご意見をください」といった、何に活用するのかを明確にした設問も良い。
なお、無記名と言っても、属性データ等で個人を特定できてしまうという不安は残るので、「個人を特定してアクセスしない」旨は明記しておく必要がある。

○ 支援サービス

こうした統計分析を行うためには、一定の情報処理技術が必要になる。
特に形態素解析は、オープン系のソフトとしてMecabがあるとしても、なれないとどう使って良いかわからない。
当社ではすでに自由回答の分析と報告には実績があるので、上記の

・単語の抽出と傾向分析
・テーマなどの対応の設定
・個別回答の読み込みと分類
・集計と傾向分析
・施策策定への助言

を支援することができます。
具体的な内容については、お問い合わせください。

経営陣が無能だとこうなる 優秀な人が会社を去っていく7つの理由

先日、JQACの研究会で西精工株式会社の西社長の話を伺った。
話が非常に面白く、さすがという語り口だった。

社員一人ひとりに目を配っており、社員から信頼されているのだと感じた。
一方で気になったこともある。

西精工は西家が経営を行う会社であり、西社長自身は広告代理店を得て中途で入社している。当時の会社風土はおよそ褒められたものではなく、まずは挨拶運動から始めたと聞く。

当時の話を聞くと、旧経営陣は「何を変える必要があるのか」と言った雰囲気であり、西社長がしようとしていることに対し理解がなかったようだ。

研究会の後で、このときの状況を尋ねたのだが、結局彼らが変わることはなかったようで「あきらめた」という言がすべてを語っていると感じた。

経験的に、社員を変えることに成功している企業は多いのだが、えてして在職年数の長い取締役などは現状を変えることには否定的であり、結局彼らが退職してくれるまで我慢するしかないのかと情けなくなる。

しかし、社長を含めて取締役も経営者である以上、何らかの意識改革は必要だろう。
下記の記事を参考にしてほしい。

経営陣が無能だとこうなる 優秀な人が会社を去っていく7つの理由
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/180401/ecd1804011303003-n1.htm

(1)有能な社員に仕事が集中する
 仕事ができる人材は、仕事の精度が高いことに加え、仕事をするスピードが速い。逆に仕事ができない社員は精度が低いだけでなく、仕上がるスピードが遅い。そのため、有能な社員にばかり仕事が集中し、仕事量が増大してしまう。仕事のできない社員は、仕事量が少なく時間的余裕があるので退社できる時間が早く、逆に有能な人材は残業が増えるという悪循環に陥る。

(2)社員との間で個人的な関係を築かず、仕事以外のコミュニケーションがない
 有能な部下を辞めさせてしまう上司や管理職は、部下とは仕事のことしか会話をせず、相互に個人的な情報交換を行っていないことが多い。自分の評価に直結する仕事の進捗や成果だけに関心を持つために、部下の生活環境や問題などに目を向けることがない。部下と一度も昼食をともにしたことがないような上司とは、人間として親しみを感じることがなく、情報の共有化もうまく図れない。

(3)よい仕事をして、いつも会社に貢献しているのに、評価を受けていない
 有能な人材は仕事の精度がいつも高く、上司や管理職はそれが当たり前だと考えてしまう。毎回よい仕事をしているにもかかわらず、褒めたり昇格させたりする発想にならず、そのまま放置していることが多い。

(4)社員の成長を支援しない
 有能な社員ほど自身の能力向上に意欲的で、自らの成長にこだわる傾向が強い。能力向上に結びつかない仕事ばかりさせ、研修などの能力開発の機会を提供していないため、社員は自らの成長を実感できずにいる。

(5)価値観を共有できない人材を採用し、誤った昇格人事を行う
 中途採用も含めて、新しい社員を採用する際に人材採用の基準が曖昧なため、基本的な価値観を共有化できない人材を入社させてしまう企業がある。とにかく人手が欲しいと考える企業では、特に生じやすい問題だ。また、仕事ができないのに上司や管理職に媚を売る人材を昇格させるといった誤った昇格人事を行っている企業もある。企業の人事評価制度が機能していない典型例だ。

(6)裁量権を渡していない
 有能な人材は自己管理に長けている。しかし、上司や管理職が一律に仕事の進め方や方法論にまで口出ししてしまい、能力のある人材の裁量権を奪っているケースがある。能力のある人材から主体性を奪ってしまうと、労働意欲は大幅に低下してしまう。

(7)尊敬できない上司や管理職の下で働いている
 選り好みが激しく、自身に媚を売る人間を登用し、そうでない社員には目をかけないといった上司や管理職がいる企業では、有能な部下は育たない。男性社員の場合、会社や仕事への忠誠心があるので、異動があるまで辛抱するケースもあるが、女性社員の場合は尊敬できない上司の下では働かず、退職してしまうことが多い。

上記について、自社は〃なんだろうと感じた方は、こうしたことに焦点を絞った社員意識調査も有効だ。

社員の離職率に悩んでいる会社は検討してみてほしい。