戦略人事:常態化する事業の再編(選択と集中は加速する)


~日産のことは対岸の火事ではない~

感想文みたいなものです。ご容赦。

■工場の閉鎖という刺激的なニュース

最近のニュースとしては取り上げられないが、当時は色々騒がれた。日産の追浜工場の閉鎖である。

◆従業員「ショック」、諦めも 神奈川の日産城下町、活気失い
2025/05/17

 日産自動車が神奈川県の2工場の閉鎖を検討していることが判明した17日、地元工場の従業員は「ショックだ」と語り、不安を隠せなかった。工場と長年共存してきた「城下町」の地域住民は、失われていく活気を肌で感じており「閉鎖検討は当然だろう」と諦めの声も上がった。

神奈川県横須賀市の追浜工場。工場関係者によると、休日で人の出入りはほとんどなかった。近くの寮に住む工場従業員の男性(47)は「あまり稼働していない」と説明。経営陣に言いたいことを問うと、考え込んだが「特にない」と言葉少なだった。近所でサービス業を営む男性は「最近は活気がない。閉鎖検討は驚かない」と話した。

https://nordot.app/1296403213996491675

もっとも、「青天霹靂」というわけでもなく、日産の業績の悪化などは「ホンダとの経営統合の決裂」以降は顕著になり、下記の報道からも予想されていたことではあると思う。

◆日産、国内18年ぶり早期退職募集 45歳以上65歳未満の社員が対象
2025年5月18日

対象は45歳以上65歳未満の社員で、「開発・生産・デザイン部門」を除く勤続5年以上の部課長や一般職、シニア職員としています。

日産の経営立て直し策をめぐっては、2027年度までを目途に、全世界で17ある工場のうち7つの工場の閉鎖を発表していて、全世界で2万人の人員削減を行う方針を明らかにしています。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1920885

先の記事に「最近は活気がない。閉鎖検討は驚かない」と言う発言も、ある意味達観していると捉えることができる。工場周辺の飲食店やホテルなどの関連産業への影響も計り知れない。しかし、そうした周辺ビジネスを選択したのは彼ら自身なので、責任は彼ら自身にもある。

しかし、工場従事者はそうは行かない。
工場の閉鎖は、当然、そこで働いているヒトの雇用の消失につながりやすく、仮に再就職支援をしたとしてもそれほど簡単ではないのが実情だと思う。一方、企業にとっては、多大な資本投下を行なっており、それを放棄するというのは財務的な毀損につながるので、喜んで工場閉鎖をするのではないだろう。

そうしたことを考えると、こうした大規模な工場の閉鎖は少ないだろう。しかし、今後の企業戦略からは常態化する可能性もある。

■選択と集中

ここ数年の企業を取り巻く環境の変化は早く、経営者としては生き残り戦略をダイナミックに展開せざるを得ない。そうした中で、「選択と集中」は当然のこととして行なわれることになる。その中では、”切り捨てる”(リストラ)という行為と”他社との協業”(M&A)を含めた経営資源の再編も行なわれる。

工場の閉鎖とまでは行かないとしても「売却」はあり得るであろうし、そうした中での生産設備の変更は従前の工場従事者の行き場を失わせかねない。少なくとも同じ働き方が保証されるわけではない。

それでも、30年も前の工場の維持が戦略的に適切かと言えばそうではないのだろう。
特に、AI+ロボティクスの時代であれば、工場の生産ラインも変るだろうし、関連する人材の要件も変ってくる。

日産とて、単に衰退を容認しているわけではない。

◆進化する自動運転「レベル2」 狙うは一般道での実用化 次世代ADASが新車の新たな競争領域に
2025.08.28

自動運転「レベル2」(高度な運転支援)が進化している。あくまで高度運転支援システム(ADAS)であり、ドライバーの周囲監視が前提だが、高速道路での「ハンズオフ(手放し)」のほか、ナビゲーションシステムとの連動で分合流するなど、運転の負担を減らす機能が充実しつつある。ホンダや日産自動車が次世代ADASで狙うのが一般道でのレベル2だ。

https://www.netdenjd.com/articles/-/321876

これが実現化すれば、新たな生産設備と対応する工場の設立は必須になる。
問題は、旧い工場のリニューアルと人材のリスキルになる。
この人材という分野でも選択と収集が加速する。
また工場の廃止・移転・売却は今後も続くだろう。

■人材の選択と集中

理想を言えば、再配置を前提とした教育訓練をして欲しい。しかし、多くの企業はポートフォリオの組み替えで対処しようとする。

◆三菱電機、最高益下の希望退職 「今の人員構成では改革難しい」
2025年9月22日 17:00 

三菱電機が最高益が続く中で希望退職募集に踏み切る。阿部恵成最高人事責任者(CHRO)が日本経済新聞のインタビューに答え、現在進めている事業構造改革を前提に「柔軟に進めるには、明らかに高齢化が進んでいる現在の人員構成では難しい」と述べた。機器を売る従来型ビジネスからの脱却に向け、53歳以上が4分の1を占める人員構成の解消につなげる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1940A0Z10C25A9000000/

わかりやすく云えば、「不要な人間を遺棄する」であろうか。
高齢化を進めてきたのは企業側が後生大事に守ってきた「年功序列」である。それを今更「柔軟に進めるには、明らかに高齢化が進んでいる現在の人員構成では難しい」というのは身勝手であろう。もし高齢化が問題なら経営陣をすべて若手に入れ替えるべきである。

もちろん人材においても「選択と集中」は必要であり、「機能までの知識・技術」の再編が必要ならそうすべきである。しかし、ヒトには「経験」というかけがえのない知見を持っている。これを無視することは組織能力を欠損させることになる。

戦略人事の観点から、こうした事象を見ると、事業との統合を図ることにもっと意識を持って行くべきであり、人材ポートフォリオの組み替えの柔軟性を担保するための「育成計画」を戦略的に寝るべきである。

不要になったからと言って単純に捨てることは、法律的に許されても企業競争力を失うことになる。

全面的に賛同できないが下記の記事も参考にして欲しい。

◆日産“2万人リストラ”が残す傷跡 「生き残り社員」に何が起きるか
2025年09月19日
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2509/19/news023.html

2025/09/23