世間に転がる意味不明:ひさしを貸して母屋を取られる(ライドシェアとタクシー会社)

あぁやっぱりな・・・

■領分を侵されることを恐れる人々

タクシー会社が自分たちの領分が侵されることを恐れ、ライドシェアに真っ向から反対してきたことは周知のことである。それは、免許のない人間が運転することでの交通安全などの問題、技能試験を受けていない人間が最適なルートを選べるのかと言った問題、事故時の対応、乗客や運転手の安全の問題など、言いがかりのようなことばかりをあげつらってきた。これらはいずれも、工夫特に情報技術を活用すれば解決できる問題ばかりである。

ウソではない。今はカーナビを装備していないタクシーなどはない。運転手が自分でルートを探す必要も無いし、カーナビと異なるルートを取れば乗客が不審に思う時代である。

しかしインバウンド政策をとっている政府にとっては観光地や都心部・繁華街でのタクシー不足は課題であり、政策も「ライドシェア」を容認する流れを止めることはない。これにはタクシー業界も従わざるを得ない。

○都内タクシー団体、ライドシェア4月開始へ 指針案公表
2024年1月10日

東京都内のタクシー会社で作る業界団体、東京ハイヤー・タクシー協会(東京・千代田)は10日、4月から都内でライドシェアサービスの開始を目指すことを明らかにした。加盟社を通じて数百台規模の運用を想定する。政府は4月からタクシー会社が運行管理する形でライドシェアを解禁するのに合わせ、業界として準備を進める。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC105TI0Q4A110C2000000

○タクシー不足の時間帯に限定 業界団体、ライドシェア導入に向けてガイドライン作成へ
2024/1/10

4月に一般ドライバーが自家用車で乗客を有償運送する「ライドシェア」が導入されるのを受け、東京ハイヤー・タクシー協会は10日、独自のガイドライン(指針)を作成すると公表した。ライドシェアの運行はタクシーが不足する地域や時間帯などに限り、タクシー会社はドライバーと雇用契約を結び、運行や車両の管理も担うことなどを柱としている。同協会はこの仕組みを「日本型ライドシェア」と呼称。早ければ4月上旬に運用を始めたい考えだ。

https://www.sankei.com/article/20240110-B6ZBKDFXTFOPFFY455JN63GOEM

■流れに乗れるところと乗れないところ

ライドシェアは単に「免許の要らないドライバーを増やす」という政策ではない。配車サーボス、乗務員管理、運行管理など様々な情報のシステム管理を求めている。これができる事業者は限られているだろうし、できないところは参入できず、利便性の低下を招き売上が下がるかもしれない。なぜならば運行の効率化ができないからだ。

○タクシードライバー不足解消へ 副業乗務員を呼ぶ「GO Reserve」全国展開
2024年1月9日

GOは、タクシーの乗務員不足解消と供給力向上を目指すアプリ専用車「GO Reserve」とパートタイム乗務員「GO Crew」の展開拠点を全国に順次拡大する。現在の江東区枝川での1拠点30台展開から、東京・神奈川・大阪・名古屋の各地のタクシー事業者とともに合計約70台での展開を予定している。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1559338.html

したがって、手を打てない地方のタクシー会社は撤退せざるを得ないかもしれない。

○岩手中央タクシー(盛岡市)が2月1日破産申請へ 県内2番目の車両台数 従業員85人は全員解雇 経営スリム化進めるも事業継続困難に 負債総額約3億6768万円
2024年1月26日(金)

そうした中で、やはりという形で間隙を縫ってきたのがウーバーである。

○ウーバー、ライドシェアに4月参画 タクシー配車アプリで利用可能に
2024年01月26日

日本国内でタクシー配車サービスを展開するウーバージャパン(東京)は26日、一般ドライバーが自家用車で乗客を有償送迎する「ライドシェア」事業に4月に参画すると発表した。現行のウーバーの配車アプリで、提携したタクシー会社が導入するライドシェアも利用できるようにする。配車が可能なのは、国が今後特定するタクシーが少ないエリアや時間帯に限られるが、全国への展開を目指す。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024012601074&g=eco

(参考)
○Uber Japan、「タクシー会社によるライドシェア」参入を発表 4月から全国でサービス開始 2024.1.26
https://ampmedia.jp/2024/01/26/uber-taxi-rideshare/

■多様なサービスで参入するタクシー会社以外の事業者

○DiDiも日本版ライドシェアに対応 タクシー会社と連携
2024年1月26日

DiDiモビリティジャパンは、4月から導入開始予定の「タクシー事業者運行主体でのライドシェア」に対して、乗客向けのアプリやドライバー向けアプリの開発、導入検討タクシー事業者向けのプロダクト開発等の支援を開始する。

2024年4月から、移動の足が不足する地域、時間、時期において、タクシー会社が、地域の自家用車・ドライバーを活用し、運送サービスを提供可能になる。この「日本版ライドシェア」と呼ばれる仕組みを使い、複数の提携タクシー会社と共同で日本向けに最適なプロダクトの開発を進めていくとする。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1564134.html

こうしたITサービスグループを活用したサービスは様々な可能性を示唆する。一般の自家用車を保有する人は専用のタクシーメーターや端末を持てないとしてもスマホで全て解決できるかもしれない。決済サービスはあらかじめ済ませておき、乗車と降車をチェックし、運行ルートはスマホで指示する。

専属のタクシーの保有は最低限で良くなる。タクシー会社はタクシーの運行管理をする会社ではなくなる。そうしたときに利益の大半はクラウドサービスの利用料で消えてゆく。運賃メーターを作っている会社は不要になる。2種免許の許認可で食っていた人々は不要になる。

産業構造が変わるかもしれない。ひさしを貸して母屋を取られる状況になるだろう。

(2024/01/27)