賃金制度を見直すきっかけと手順

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現在の賃金制度の考え方に限界があり、新たなコンセプトが必要であることはすでに述べた。今後の戦略を展開する上で、賃金制度を見直す必要がある。一方で、こうしたこととは別に、以下のような理由で賃金制度などの見直しが必要な場合がある。

・現行の評価制度の運用に不平不満がある。公正な評価がされていない。
・職種別の賃金格差がある。昇給昇格の早さに差別感がある。
・現行の報酬制度が働き方に対応していない。報われていない。
・60歳で定年になる。それ以降は嘱託になるが、同じ仕事をしているのに給与が下がる。

さて、こうした話は、必ずしも賃金制度だけの問題ではないが、やるべき手順は同じになる。参考のために整理する。
オーソドックスになるが以下のとおり。

(1)現状はどうなっているのか?
 まずは、現状がどうなっているのかを分析することが先になる。
 ここでは、賃金制度を含め人事制度の良し悪しの評価はしない。単に現状をデータにもとづいて観察することになる。いわゆる「賃金分析」になる。
 どこの会社にも賃金の支払いを行なっており、なんらかの形でデータになっているはずだ。このデータを整理することになる。
 賃金分析の主旨・視点は以下のようになる。
 (1)要約統計量の把握
   最小、最大、中央値、平均、標準偏差、4分位点
   年代別、性別、役職別、資格等級別、職種別などがある。
 (2)年齢別給与水準
   縦軸に給与、横軸に年齢、凡例として、性別、役職、資格等級、職種などがある。
 (3)箱ヒゲ図
   縦軸に給与、横軸に性別、役職、資格等級、職種などとして箱ヒゲ図を作成する。   分布状況がわかる。
 (4)着目する給与
   給与については、基本給、月齢給与、年収(基本給ベース、月齢ベース)などが含まれる。

 【参考】
  当社保有の「賃金分析ツール・基本版」は、現行の賃金データを上記の視点で分析するためのツールになっている。

(2)何が問題なのか?
 さて、現状の賃金分析を実施すると、制度の主旨、例えば年功序列から成果に基づく給与への移行もしくは実施が目的だったとしても実際にはそのようになっていないケースが多い。だとしてもそれ自体が問題ではない。
 むしろ、会社・経営者側がそのように意図していたとしても従業員がそう思っておらず、そうした意識ギャップが不満を醸成しているのであれば正すべきだろう。
 いっていることとやっていることが違うと思わぬ弊害が出てくる。ではどんな弊害か。
 それを探るための手法として社員意識調査がある。
 社員意識調査については別途詳細を解説するが、思いを聞くのではなく、事実を聴くことが必要である。例えば、以下のような設問が考えられる。
 ①賃金制度の主旨の説明を受けているか
 ②賃金制度は主旨に従って運用されているか
 ③会社側は従業員から意見を聞く場を設けているか
 ④評価結果について説明を受ける場があるか
 ⑤納得しているか
なるべく事実を裏付けられる事柄を中心に設問項目を設定することが必要になる。
 さて、可能であれば、個人別に上記の賃金制度に対しての不満を記名式で調査することが望ましい。
 記名式の調査には抵抗が多い。そのために、調査項目を絞ること、調査の目的を、社員の不満を聞くことで会社を良くしたいという素直な思いを告げることが重要となる。
 そもそも従業員との信頼関係がないのであれば、余計な調査をしてはいけない。

 個人別の賃金データと意識調査のデータをセットにすることによって、より詳細の分析ができる。

【参考】
社員意識調査については、ES調査の実務で開設を予定している。

(3)どうしたいのか?
 さて、実際に今の賃金制度や人事制度(職能資格制度)に関して、運用上の問題やこうした制度に対しての従業員からの評価が明らかになった時、何を解決したいのか、どのような働き方をしてもらいたいのかを明確にする必要がある。
 単に、景気が悪くなった(業績が悪くなった)ので、今までのような大盤振る舞いをできなくなったので給与を下げるということは慎んだ方が良い。もちろん、現実問題として原資が確保できなくなるということはあり、給与を見直さざるを得ないということはある。しかし、単に給与を下げるというやり方は会社の公器としての役割を放棄しているし、優秀な社員が逃げだしてしまいかねないリスクも抱えることになる。
 経験的には、以下の視点で経営者はどのようなスタンスで臨むのかを決めることを勧める。
 ①社員の今日、そして明日、未来に対して会社はどのように関わるのか
 ②社員が家族を持ち、家族を養うということにどのような関わり方をするのか
 ③社員の能力を生かすためにはどのような仕事の与え方をするのか
 ④成果を上げるための組織能力はどうしたら高めることができるのか
 こうしたことを明確にすることにより
 ・年功型賃金にするのか職務的な給与になるのかを決めることができる
 ・能力を発揮してもらうための権限移譲のスタイルが決まる
 ・役割分担としての役職や指揮命令系統のスタイルが決まる
 ・キャリア生成の選択肢の設計ができる
 ・職能資格、職種などのモデルの設計ができる
といったプロセスの考え方が整理できるだろう。

(4)どうやるのか?
 人事制度の方向性が決まったら、それに伴い、生涯賃金の変動が発生するのかの検討が必要になる。
 以下の視点でのシミュレーションを行うことになる。
 ①モデル別に基本給、賞与、退職金、生涯賃金のシミュレーションを行い、人事制度の枠組みを検討する。
 ②現行の実在者に対し、どのモデルが対応するのかの仮格付けを行う。
 ③どのような昇格をするのかの要員シミュレーションをする。
 ④現行の実在者の賃金が30年間でどのように推移するのかのシミュレーションを行う。
 ⑤必要に応じて退職金のシミュレーションを行う。

 こうしたことは、あらかじめ決められたゴールがあるわけではなく試行錯誤を伴う。
 実際の賃金制度の変更を行う場合には、個人ごとに緩和措置が必要となり、一般的には期限が決められた調整金を使用することになる。
 こうした調整金は会社側の持ち出しになるので、移行原資の確保ができるのかも重要な配慮事項となる。

【参考】
 現在開発中の「賃金シミュレーション」シリーズは上記への対応ができるように開発されています。

以上
2017/5/24

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