賃金シミュレーション・Type-B-1(モデル検証用)のもう少し詳しい仕様を整理しました。

■現行の人事データの整理

全体仕様の下記に該当する

(1)社員がどんな働き方をしているのかを明らかにする
現在の人事制度でどのような構造で社員がそのキャリアパスを描いているのかを明らかにする。主に年齢別の分析になるが、資格等級や役職の分布、学歴や職種などによる階層別集計などが考えられる。

上記に対応して、最初に人事データの準備が必要になる。
通常は、現行の人事データについての実績値をもらうことになる。

この段階では、新人事制度で新たに必要となる項目(例:移行後の呼称の「新グレード」など)は考慮しない。

また、賃金のもらい方についての分析はこの段階では行わない。
どのような賃金の支払い方になっているかは、「賃金分析ツール」で検証すること。

人事データの属性としては下記を取り扱う。

・性別(男性:女性)
・年齢
・勤続年数
・学歴
・採用区分(新卒:中途)
・職種
・資格等級
・役職
・身分(正社員、嘱託、契約社員、その他)

年齢別、あるいは勤続別の属性別人数を集計することが基本となる。

前提条件として、キャリアの蓄積は年齢と比例するという考え方をとっている。
従って、年齢ごとの資格等級や役職の分布を見れば、およそのキャリア年齢を把握することができる。

この段階では、年齢ごとのキャリア形成が職種や学歴などでどのようなレンジで行われるのかを把握する。

■採用計画の設定と要員構成の変化

(2)20年後までの要員のシミュレーションを行う
いくつかの考え方がある。
・高齢者の一定快走の平均値を出してこれを補充するという考え方
・戦略的に新卒採用を計画して補充するという考え方
いずれにしろ将来の要員構成を(少なくとも)人数把握だけはしておくことは重要だろう

に対応した検討を行う。

そのために処理は以下の通りになる。

① 採用計画を決定する
採用計画については、シミュレーションを行う30年間について各年度ごとの採用人数になる。
退職者を補充するという意味で配下の考え方がある。
・特定の年齢の社員数を補填する。
60歳定年では59歳の社員数がこれの対象となる。
65歳までの雇用延長を認めている場合には64歳が対象となるかもしれないが,人数が少ないのがい一般的なので適当ではない
・一定の年齢幅の人数の平均値を均等に補充する
例えば、50歳代の人数の平均値を計算して補充するやり方がある。
極端な人数の増減を吸収するための方法になる。
・企業規模を想定して決定する方法
企業戦略として社員数の規模を想定する場合がある。年度ごとの上限を決め、そこの不足分を補うという考え方。
・戦略的に人数を設定する場合
年度ごとの採用人数を最初から決定するパターン

退職率に関してはシミュレーション上は配慮しない。
一般的に、七五三と言われるように3年内離職率が一定水準あることは承知しているが、もし3年内離職率がある程度想定できるなら、それを考慮し採用人数を設定すること。
例えば、3割の離職率が想定できる中で10人を確保したければ、シミュレーション上は10人として、実際の採用は13人とすること。

この段階では、将来の要員計画を前提とした採用人数を確定すること。

■ルートモデルの設定

下記に対応する

(3)キャリアパスのルートモデルを作成する
現状の社員構成に従って、大まかな分類が可能なキャリアモデルを考える。
現行の社員はいずれかのキャリアモデルに該当することになる。
キャリアモデルとしては、学歴(大卒、高卒)、職種で分類して数種類に集約することが望ましい。
昇進の早い・遅い等で分類することが望ましいが、この段階では割り切って数種類で考えた方が良い。
年齢の他に勤続年数、資格等級、ライフステージ(家族構成、扶養家族の有無)なども想定することが良い。
作成したキャリアモデルは、実在者へのマッピングも行う。

ルートモデルとは現状もしくは本来の人事制度を反映させたキャリアモデルと言える。
新人事制度の検証の比較に使用する。

現状を反映させた物にするか、あるべき論でゆくかは、新人事制度の検証プロセスの考え方なのでどちらが良いとは一概には言えない。
経験的には、新人事制度のキャリアパスを前提にして現状を見たときに、どうあるべきかを想定した方が、後のシミュレーションがスムーズにゆくことがわかっている。

ルートモデルの形状は、縦軸に年齢、横方向はタイプ別に、賃金の決定要素としての資格等級や役職などのパスが記載される。

機能・手順と配慮すべき事項は下記の通りになる。

○管理項目
年齢の他に勤続年数(モデルによっては入社年齢が異なるから)、資格等級、役職が考えられる。
属性としては性別や学歴などもあるが給与の決定には直接関連させるべきではないので不要になる。
この段階で、シミュレーション用データのひな形を生成させることになる。

○ライフステージ
扶養手当などもシミュレーション対象とするならば、扶養家族などのライフステージの設定をすることを求める。
ただし、設定は年齢ごとの家族数、もしくは手当そのものとする。

○モデルの区分数
ルートモデルは、昇格・昇給の早さ、職種、一般職/総合職の区分などを想定した標準モデルをつくることになる。
この段階では、モデル数を多くして精緻化する必要は無い。
下記のモデルの一致に関する情報を元に検討を繰り返す。
ただし、モデルごとに特徴がでることが必要で、どのモデルでも年齢ごとの資格等級や役職が同じであるならモデルをつくる必要が無いので注意が必要だ。

●実在者データとの対比
標準的には、年齢を優先し、一定の範囲内(例えば2年以内)で、資格等級、役職が一致するかを元にどの区分に合致するかを検証する。
一般的に若年層では差が出ないために、どのモデルで一致してしまうことが多い。
一方で、一定の年齢以上(例えば40歳以上)ではいずれかのモデルで合致しておく必要がある。
さもなくば、モデルを分ける必然性がなくなるからだ。

●実在者へのモデルのマッピング
上記のデータを元に、モデルごとの配分比率を設定し、合致しなかった人を乱数で割り当てる。
これは後段のシミュレーションを実施するための処置のためである。

さて、上記で○と●の記号を付けた段落があるのだが、実は●で表記した部分は汎用的なプログラムは作れない。必ず個別企業ごとのカスタマイズが必要になる部分なので相談が必要なことを示している。

■新旧のモデルを定義する

これ以降は一定のテンプレートを用意するものの、カスタマイズを原則とすることを念頭においていてほしい。

このブロックは以下に対応する

(4)新人事制度とルートモデルを対比させる
ルートモデルにあわせて新人事制度の資格等級などの対比をさせる。
働き方や役割が変わることは、それまでのキャリアをリセットすることで有り、本来は現状の処遇をスライドさせることではない。しかし、個人ごとに格付けをし直すことは最終的には行うとしてもこの時点では現実的でない。
また、新人事制度はこの段階では確定していないことが多い。
いくつかの候補としてのモデルをルートモデルで対比させることが必要になる。

この段階では下記の作業を行う。

○ルートモデルと新人事制度での対比を行う

○分析する賃金項目を設定する

○ルートモデルと対応する新人事制度での対比を行う

○これに応じた賃金表を作成する

このブロックでのアウトプットはモデルごとに取得する報酬水準になる。
この段階では新しい人事制度はまだ確定しておらず試行錯誤が求められるだろう。
このブロックと次のブロックは繰り返しの試行になる。

■シミュレーションの実施

このブロックの作業は下記に対応する。

(5)総額人件費などの受け取る報酬金額の変化を確認する
新しい人事制度に移行した場合に、会社としての全体の労務コストがどう変わるのかを、現状、1年後、20年後の比較で検証する。

主な作業手順は以下の通り。

○シミュレーション用シートの作成
新旧それぞれにあわせて個人別データを展開したシミュレーション用のシートを生成する
その際に、新卒採用計画を反映させてデータの自動生成も行う

○30年間を対象としたシミュレーションを実施する

○特定賃金項目に対して集計を行い、新旧の比較を行う。
比較のために下記の集計を基本とする。
・年齢ごとの平均値を算出し比較する
・シミュレーション開始からの特定の年数での比較を行う

このブロックのアウトプットは、30年間のシミュレーションを実施したときに、一定期間後の年齢別の報酬総額が大きく変わるのかどうかを把握するものである。

集計とグラフは年齢別賃金カーブの新旧比較を行うことになる。

このブロックは新人事制度がマクロ的に見たときに報酬体系に大きな変動を起こすかどうかを見るものである。

意図した賃金カーブを得られない場合には、新旧のモデル設定に問題があるかもしれない。
場合によっては、新たな職能制度、あるいは職務給への移行に無理があるのかもしれない。

施策などを見直すことで、何度かシミュレーションを繰り返すことになる。
このシステムでは、繰り返し行うことで新人事制度に対応したキャリアモデルを設計することになる。

このシステムの次の段階では、作成したモデルに対し、現行社員の当てはまり度を検証し、賃金シミュレーションに備えることになる。

これについては又後日。

■賃金制度改定のためのモデルシミュレーションについて

すでに賃金分析としてのツールは公開している。

賃金分析(TypeA)の公開

次のステップとしてのモデルシミュレーションは2段階にわかれ、その前段に関するシミュレーションの仕様めいたものを記載する。

【シミュレーションの目的】

新たな人事制度を検討する際に多くの選択肢がある。
それぞれの選択肢で人事制度を改訂した場合に、どのような影響が出るのかの大まかな理解をする。
そのために、精密さを多少犠牲にするが、繰り返し制度改定の結果の検証を行うことを目的としたシミュレーションシステムとする。
その中核となるのが「モデル」という概念になる。
このシステムはモデルごとの計算シミュレーションとなる。

【仕様】

(1)社員がどんな働き方をしているのかを明らかにする
現在の人事制度でどのような構造で社員がそのキャリアパスを描いているのかを明らかにする。主に年齢別の分析になるが、資格等級や役職の分布、学歴や職種などによる階層別集計などが考えられる。

(2)20年後までの要員のシミュレーションを行う
いくつかの考え方がある。
・高齢者の一定快走の平均値を出してこれを補充するという考え方
・戦略的に新卒採用を計画して補充するという考え方
いずれにしろ将来の要員構成を(少なくとも)人数把握だけはしておくことは重要だろう

(3)キャリアパスのルートモデルを作成する
現状の社員構成に従って、大まかな分類が可能なキャリアモデルを考える。
現行の社員はいずれかのキャリアモデルに該当することになる。
キャリアモデルとしては、学歴(大卒、高卒)、職種で分類して数種類に集約することが望ましい。
昇進の早い・遅い等で分類することが望ましいが、この段階では割り切って数種類で考えた方が良い。
年齢の他に勤続年数、資格等級、ライフステージ(家族構成、扶養家族の有無)なども想定することが良い。
作成したキャリアモデルは、実在者へのマッピングも行う。

(4)新人事制度とルートモデルを対比させる
ルートモデルにあわせて新人事制度の資格等級などの対比をさせる。
働き方や役割が変わることは、それまでのキャリアをリセットすることで有り、本来は現状の処遇をスライドさせることではない。しかし、個人ごとに格付けをし直すことは最終的には行うとしてもこの時点では現実的でない。
また、新人事制度はこの段階では確定していないことが多い。
いくつかの候補としてのモデルをルートモデルで対比させることが必要になる。

(5)総額人件費などの受け取る報酬金額の変化を確認する
新しい人事制度に移行した場合に、会社としての全体の労務コストがどう変わるのかを、現状、1年後、20年後の比較で検証する。

このシミュレーションのゴールは、人事制度のフレームワークの確定になる。
そして次のステップは、実在者にあわせて「現実的な」キャリアモデルを設計することになる。これは又次の段階で記述する。

【システムの提供の仕方】

ルートモデルをどうつくるかについては正解はないだろう。
システムとしてはある程度のテンプレートは用意できるが個別性の強いシステムになる。
したがって、汎用的につくった「賃金分析」とは異なり、未完成のままのシステムの提供となる。

そのため、システムをそのまま販売するという形式ではなく、「インタビュー」+「システム調整」+「試行支援」という形になる。

【状況への理解】

賃金シミュレーションの目的を再確認しよう。

「働き方改革」という言葉は刺激的で、あたかも世の中で皆新しい働き方をするような錯覚を起こさせるが、突然日付が変わるように何もかも変わるわけではない。

制度的な「65歳定年延長」は企業に多くの変革を求めるが、そもそもの根幹は「少子高齢化」であり、このことが企業の事業上の戦略の見直しを要求する。

また、この20年間での通信技術やIT技術の応用分野の拡大は、ロボットやAI等に展開され、人間の行うべき作業の変革や新たなビジネスモデルによる既存事業の陳腐化を突然襲うことになっている。

こうしたことは企業に
①事業の再編をダイナミックにしかも素早く行うことを強要する
②事業の再編は経営資源の再分配を促し、特に人に関する戦略は大きく変わる
③常に新しい事業を推進できるように人材のポートフォリオを最適な状態に保つ
を考えさせるだろう。

また、「65歳定年延長」は会社に所属する人々に
①65歳定年を考えた場合、同じ会社に40年在籍することの意味を考える
②ビジネス環境が変わる中で自身の能力開発は永続的に行う
③社内での流動化だけでなく社外への流動化も視野に入れる
ことを強要するだろう。

今までの「言われたことをする」という姿勢で年齢を重ねて給与をもらう人事制度は破綻することは目に見えており、ソフトランディングであったとしても仕事と報酬を対比させた「職務給」に移行せざるを得ないと思っている。
もちろん、すべての人がこうした積極的な働き方に移行できるわけではないが、少なくとも選択肢として「人が成長する」ことを前提としたキャリアモデルの設計は必要だろう。

一方で、それまで働いていた人々に、突然の環境変化を強要することは適切ではない。
このシステムが、新たな人事制度の移行をスムーズにさせるための一助になるとうれしい。

初任給を上げると言うこと

ユニクロなど運営 初任給2割引き上げへ 人材確保で来春から
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190403/k10011871211000.html

ニュースによると、現在21万円の初任給を25万円超にするとのこと。

ユニクロの採用情報にアクセスするとエラーが出てきて表示が乱れるが、初任給の欄は21万円のままになっている。

初任給の引き上げは悪いことではないが気をつけないといけない。
すでに初任給が21万円の人の処遇だ。

仮に自分の初任給は21万円なのに、後輩として入ってきた新人は25万円で、逆転現象が起きたらどう感じるだろう。
数年働いて、やっち25万円を超えたと思ったら、新卒と同じだとしたらどうだろう。

単に、初任給を上げるだけにとどまらない。
仮に、能力により差をつけるというなら、そもそもの賃金体系を変えなければいけないし、個々人の評価システムを整備しないといけない。

従来の賃金体系の統一性を担保するのであれば、全社員の給与を2割上げてゆかなければならない。少なくとも、若年層ほど給与を上げて、賃金カーブを寝かせる作業が必要になる。

賃金体系を再設計すると言うことは、結局は人事制度の考え方を再設計することになる。
同じように問題になっているのが雇用延長問題だろう。

従来、55歳になったら給与を下げ始め、早い段階で現役世代の50%という施策をとっており、60歳以降は半額以下という「お情け」のような給与体系では法律上許されなくなる恐れがある。

企業の支払い能力は突然上がるわけではない。
全体の労務コストへの影響を下げるためには、報酬の考え方やキャリア設計自体の変更を余儀なくさせられる。

同じように、下記のニュースも気をつけなければいけない。

三菱UFJ 組合要求上回る異例のベースアップへ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190325/k10011860131000.html

同じ労務コストで1%の賃金上昇を実現しようとするなら、賃金負担の大言う中堅層のリストラだろう。

そうでなくとも、銀行はリストラに着手している。
単純に喜ぶ話にはならない。

賃金分析(TypeA)の公開

賃金シミュレーションは、最終的には
○賃金の現状はどのようになっているのか(TypeA)
○新しい人事制度を反映したキャリアモデルはどうなるのか(TypeB)
○その結果、組織全体の将来はどのように変化してゆくのか(TypeC)
で構成されます。

今回公開するツールはTypeAに該当するものです。
本来は組織の状況に応じてテーラリングしなければいけないこと、標準生計費や賃金センサスなどのデータを比較できるようにしなければいけないことなど課題はありますが、まずはサンプル版として公開します。

賃金シミュレーション・TypeA-base

解説書については、多少デリケートな記述もあるのでパスワードをかけています。

賃金シミュレーション・TypeA・解説書

まずは、システムそのもを眺め、概略の使い方をイメージしてください。
使い方は、最初に「ナビゲート」シートを表示し、個別メニューに移動して順番に見ていってください。

その上で、試しに使ってみたいという方は下記までメールをください。
解説書を読むためのパスワードを送りいたします。

ysnakano[*]nss.watson.jp

注:スパムメール防止のために @ を [*] にしています。書き換えてください。

働く環境のコストを賃金に反映されるのは許されるのか

今日の朝日新聞に以下の記事が掲載されていた。

 物流大手の日本通運(東京)は4月1日から、非正社員の賃金を引き上げ、同じ条件で働く正社員の水準に合わせる方針を固めた。正社員と非正社員の待遇差の解消をめざし、2020年4月から働き方改革関連法で求められる「同一労働同一賃金」を先取りする形で、ほかの企業の判断に影響する可能性がある。

https://digital.asahi.com/articles/ASM1740W9M17ULFA00R.html?_requesturl=articles/ASM1740W9M17ULFA00R.html

いくつか論点があるのだが、目を引いたのは以下の点。

・正社員であっても、エリア社員という転勤を伴わない雇用形態があり給与は低めに設定されること。

・非正規社員はエリア社員と同等の扱いになること。

・これに伴い、評価制度や賃金体系に手を加えること

現在当社では、人事制度の改訂などに伴う賃金シミュレーションなども支援している。

人事制度の改訂理由にはいくつかある。主に以下の点になる。

・M&Aなどで全体としての制度の統一

・事業環境の変化による要員マネジメントの変化

・定年延長

こうした賃金シミュレーションを行う上でいつも悩ましいのは、イレギュラーな存在だ。

イレギュラーとは、期間工を始めとした非正規社員、あるいは嘱託の再雇用などのように賃金体系が別途存在する場合。 人数が少なければ問題ないのだが、一定のボリュームゾーンがあると総額人件費のシミュレーションに誤差を生じる。

従来の年功序列型(今までの功績や貢献を反映させる)の賃金制度を職務型(現在何をしているか、明日何をしてくれるか)の賃金制度に移行させれば、上記のような問題は無くなるかもしれないが、ことはそう簡単では無いことはわかる。

下手をすれば、複数の賃金管理システムを作りかねない。

もっとも、今のIT技術・AI技術を使えば個人別賃金管理も可能なのでいっそのこと個人対企業の雇用契約管理にしてしまえば良いと門外漢は感じている。

隣の誰かはいくらもらっているではなく自分はいくらもらっていると関心を移してもらいたい。

 

さて、もう少しいろいろ記述した。

続きは、コストを賃金に反映するのは許されるのかに記載した。

編集可能なワード文書で提供する。インターネットから引用した文書もそのまま記載している。

著作権については十分配慮してほしい。

給与体系を維持できなくなるのではないか

東洋経済の記事で下記が掲載されている・

「給料が高くて新卒が辞めない会社」TOP200
年収800万円以上で定着率が高いのはここだ

https://toyokeizai.net/articles/-/256368

いろいろな記事を見ると売り手市場であること、人手不足であること、人材の調達がグローバル化していることなどから、新たな人材の調達コストが上がってきていることはうかがえる。

特殊な事例ではあるだろうが、初任給を40万円にしなければ集まらないという記事を見たことがある。

上記の記事でも、給与の高い会社は離職率が低いというような傾向を指摘しているが、会社全体で給与高騰の余裕を維持できる会社は良いがそうでない会社はやっかいだ。

埋没コストとは言わないが、既存社員の(時に高齢者の)給与を配慮しないとゆがみが出てきてしまう。

例えば、初任給20万円で入社して、30歳になっても20数万にしかならない社員が、40万円をもらう新入社員を見たらどう思うか。

従来の(建前は違っても実質的な)年功型給与体系は無理だろう。
安易に初任給を上げると言うことはできない。

一方で、新卒採用に負けてしまうことを防ぐためには給与というのは重要な要素になる。

知人たちとの話の中で出てきたアイデアの一つに、キャリアステージ制がある。
下記のようなものだ。

(1)インターンステージ
会社側からの支援を受け能力開発を行いながら組織貢献を行う段階
いわゆる、従来の新卒社員から30前後前の期間が該当する。
(2)プロフェッショナルステージ
社員一人ひとりが能力を保有し、会社の指示命令系統には従うものの自己判断により高い組織貢献ができる。
いわゆる、主任クラス、課長クラス、プロジェクトマネージャーなどが該当する。
(3)マネジメントステージ
長期的視点、全社視点に立ち、会社の指揮命令系統を自分の意思でコントロールする段階。既存/新規事業の成果責任を負いながら経営資源の有効活用を行う。
部長クラス以上に該当する
(4)アドバイザリーステージ
十分な知識経験を保有し、バックヤードから支援するステージ。
従来の、役職定年、嘱託移行ではモチベーションが維持できないと言われており、それに変わる位置づけとして提案している。
ご隠居のようなものではなく、組織貢献をしてもらうことが重要。

さて、新卒採用者は自らの能力を振り返りどこのステージから始めるのかを選ぶ必要がある。インターンとしてしか自信が無いというのであれば従来の枠組みで始めるべきだろう。会社にお世話をお願いしておきながら高い給料は無理だ。

こうした報酬制度を確立するためにはいろいろな対応が必要になる。

・各ステージはメリハリのある給与格差を設けること
・個人ごとのキャリア管理・給与管理を行うこと
・評価処遇は人間ではなくAIで行うこと

移行に伴って、旧来の社員をどうするのかも重要だろう。

いつかこうなるということがわかっているなら今から準備を始めた方が良い。

ところで、マクロ的に見ると3年内離職率はあまり変わっていないのだと実感。
10人採用したら3人辞めるという覚悟は必要なのだろう。

閑話休題

情報の非対称に関する問題:賃金シミュレーションを考える上での課題

お互いが保有している情報が同じで無いことを情報の非対称と言う。こうしたことは、相互コミュニケーションの難しさを誘発する。その一例として、自分は正当に評価されてないと感じ、賃金というのは、どこまで行っても何かしらの不満を相互にもたらします。

先日、経済学の本を読んでいたら、情報の非対称と絡めて、下記の文章を見た。

 雇用関係で言えば、雇われた側の仕事ぶりがはっきり見えるとき、雇い主としてお金を支払うことができます。
 たとえば、自動車のフロントガラスを取り付ける仕事ならきちんと取り付けていれば合格です。果物を摘み取る仕事なら、摘み取った量に応じて評価できます。
 しかし、そうした評価をするのが難しい仕事のたくさんあります。
 成果が目に見えにくい仕事のことです。
 たとえば、基礎的な研究をしている科学者や、ファーストフードのレジ係を、何に基づいて評価すれば良いのでしょうか。彼らと同僚の働きぶりを比較するとき、どこを見て優劣をつければいいのでしょうか。また、本人の努力だけではどうしようもない問題については、どう扱うべきでしょうか。機械が故障したり、吹雪になったりして売上げが落ち込んだら、その人の評価を下げても良いのでしょうか。
 こうした問題を客観的に判断することは困難です。そのためほとんどの場合、授業院の宝珠を決定するときには、雇い主の主観が入ってきます。

経済学入門 ティモシー・テイラー かんき出版 P241

 

作業内容と結果が対で対比できるものは情報の非対称が起きないが、成果がすぐに出ない仕事や仕事ぶりと結果がいつも対とは限らない仕事では、働いている人と雇用する側では情報に質も量も異なる。その結果、情報が非対称になり、報酬に対しての納得度が下がる。

それでも従来の一律の賃金制でもよかったのは大多数が情報の対称性で評価できる仕事だったからだ。いわゆるブルーカラーの仕事を時間単価で計算できるからだ。

ただし、AIやロボティクスの発達で単純作業は機会がやることになり、上記にもあるように、成果がすぐに把握できない業務、外的要因で結果が左右する業務がますます増えて行くだろう。

経済学の発想から言えば、従業員の賃金はその従業員が生み出した価値に相応して支払われることになる。従って、個々人の働きを情報化する必要がある。

しかし、個々人の成果などというものを正確に把握することはできない。
現在、多くの企業で行われている報酬制度とリンクさせている目標管理制度は評価者の主観に左右されている現実を見ると容易ではないだろう。

将来的には、AI使った個人別報酬システムを作る時代がやってくるだろう。
しかし、当面は複数の報酬システムを構築して、これを個々人に当てはめることが実際的だろう。

その時の報酬システムを検証するためのツールとして、当社が用意している賃金シミュレーションシステムが有効になると考えている。

賃金シミュレーションについてのお知らせ:嘱託の取り扱いについて

最近の話題の中で賃金シミュレーションを行うに当たって配慮すべき事項に嘱託の移行の問題がある。

これまでの嘱託の考え方は、いったん退職して継続雇用としそれまでの給与を半額程度にするといった処置が多かったのではないか。

そのため従来の賃金シミュレーションでも定年と同じ扱いにしており計算対象としてこなかった。

しかし、昨今の議論の中で、そもそも定年の考え方自体が変わろうとしている。
定年という考え方を無くし継続雇用を前提とした時に賃金シミュレーションでも下記の対応を行う。

(1)従来の賃金体系の延長線上に設計する
 例えば、年齢給、職能給、手当などを一般社員と同じように支払う。
 ただし、年齢給の停止、昇給の停止、手当の金額調整などは起こりえる。
(2)1年ごとの年俸制で支払う
 嘱託社員に関しては、一定年齢以上は対象者とし、役職や職種、資格等級などで固定金額を支払うように設計する。

その他、個別企業ごとに対応が必要になる時には調整を行う。

2018/10/24 記載

給与体系の崩壊はそこまで来ているのか

今日(2018/10/23)、二つの記事が目についた。

マカオ転職で給料4倍! このままでは日本の賃金が危ない!
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/23/news046.html

70歳までの雇用促進を政府議論、年金受給開始年齢の引き上げも=未来投資会議
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/22/news101.html

以前、外資系の企業が初任給に40万円を提示したことがあり話題になったことがある。
身の回りに、そうした事例は見ないのだが、今後そうした事例を見聞きするかもしれない。

70歳までの雇用延長は政治の無策の象徴の匂いがしており、気味の悪さを感じるが、政治的な圧力は確実に企業に浸透して行くだろう。
実質的に「定年」という概念がなくなる気がする。

かつて55歳定年が普通の時代では、22歳入社で55歳までなので、実質30年間の働き方とキャリアパス、給与を考えれば良かった。
これが、70歳までと言うことは50年近くのキャリア設計になる。
連続性を持った、キャリアパスの設計は無理だろう。

今年の就活ルールは従前のものになるが、今後はどうなるかわからない。
大卒一括採用も崩れるかもしれない。

そうなった時に、配慮すべき事柄に以下が考えられる。
(注意:法律上の問題があるのであくまでも仮想的なものである)

(1)在学中も含めた通年雇用
 大学卒業時ではなく、働きたいと意思決定した時に採用する仕組みが考えられる。
 在学中はフルタイムとは行かないが、社員への登用を前提として仮雇用し、給与を払う仕組みが考えられる。
 学業への影響などと建前を言っていても、今でも「アルバイト」はある。
 また、知識の修得自体を目的に社会人になってから大学に行かせる制度もある。
 今の仕組みの延長線上でできない理由はない。

(2)初任給を同じにすることの必然性の消失
 いつでも有能な人にふさわしい給与と言うことであれば、現在の一律の初任給制度はふさわしくない。
 一律の初任給制度を行うと、その後の給与にはたいした差は出なくなり、能力や成果で評価すると言うことが有名無実になりやすい。
 年齢という概念を完全になくす必要がある。
 その時に配慮すべきことは下記である。

① 習熟度が必要な職種であるかどうか
 当然習熟度が必要な職種はある。建設業での現場作業や製造現場での機器の操作がある。
 習熟の速度や難しさで立ち位置を評価して給与を設定する。

② 感性なのか知識なのか
 若者向けのイベントや、新商品開発など、知識・技術ではなく発想力で成果を出す職種もある。高度プロフェッショナルかどうかではなく、そもそも成果が時間と一致しない職種だ。向いていると思ったら高額で採用し、成果が出なければ職種の転換をする対象となる。

③ 管理のレベル
 仕事を進めるに当たって、指示されてできるのか、一人でできるのか。
 複数の人間をまとめ上げて仕事ができるのか、もっと大規模にできるのか

④ 人間関係の維持力
 関係者をどのように巻き込めるのか

 大卒であってもこれらをクリアできる人材なら高額で使用すべきだろう。

 もう一つの問題は定年が無くなること。
 上記でも記述したが、連続した50年のキャリアパスを設計することは現実的でない。

 ここではステージという概念を持ち込む。

(1)会社への貢献をするために、他者の指示命令系統に属している段階
 会社に所属をしたばっかりの段階では、仕事をするための習熟度も低く、知識・技術・経験が十分ではない。会社から機会をもらいながら組織貢献をする段階。
 一般的には、会社入社時年齢(22歳)から30歳前半を想定できる。
 経験の蓄積により組織貢献の度合いが高まるので、従来型の賃金の思想で対応できる。

(2)他者を率いてプロジェクトを執行管理できる段階
 会社への貢献を積極的に行える段階。会社との契約を期間契約で行うことが想定できる。
 あらかじめ、企業にコミットし、成果を創出する。

(3)プロジェクトを創造する
 事業計画を策定し、会社から資金調達を行い成果を創出する。
 会社側から見れば投資先になる。
 報酬は、取締役と同じ水準でもらうべきだが、あくまでも成果報酬となる。
 ハイリスクハイリターンになる。

 単純には、これほどきれいには分かれない。
 また、運用に当たっては、結局は社員に選ばせることになる。

 最終的には、個人ごとの賃金契約になるだろう。

 人事部が大変だって?
 AIはなんのためにあるのかを考えよう。

賃金シミュレーションが必要な理由:採用プロセスの変化

2018年10月11日の日経新聞の記事から引用する。

新卒一括採用、転機に 経団連が就活ルール廃止発表
経団連は9日、大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針を2021年春入社の学生から廃止することを決定した。今の指針は大学3年生が該当する20年入社が最後の対象になる。新たなルールづくりは政府主導となり、大学側や経済界と月内に策定する。経済界が主導するルールがなくなることで、横並びの新卒一括採用を見直す動きが企業に広がる可能性がありそうだ。


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3628167009102018MM8000/

 就職活動の開始時期のルールを決めても、外資系やIT企業など経団連に参加していない企業が前倒しで採用活動をしており、ルールを守っている企業が不利になると言うことが背景にあると報じられている。
 確かに、早い遅いによる有利・不利はあるだろうが、今回のこうした動きと関連して考えなければいけない事柄が多くある。

(1)新卒の一括採用の意味
 高度成長期は企業は拡大路線にあり基本は人的資源の拡充が戦略としてあったはずである。こうした戦略のもとでは、安定した人員確保の手段としては高校・大学を卒業する人材に目を向けることは当然であろう。
 また、給与面でも、いちいち個別対応することはコストがかかる以上同じ給与にして、その後に個別対応をすると言うことは合理的であると考えられる。
 現在の社会的背景として、企業の持続的成長は自動的に達成できるわけではなく、単に物量としてヒトがいればすむ話ではなくなってきていることを配慮する必要がある。
 反面、時代にそぐわない面も出てきている。
 一斉採用を、大学卒業時に限定することにより、正社員になる道は一回だけのチャンスに絞られる。こうした採用プロセスは、必要な時期に必要な人材を獲得する戦略とは一致しない。現在、中途採用は「経験と技術」を前提としており、組織能力の補充という行き合いでは正しいのだが、そもそも「育成」という概念が欠落している。
これはどういうことかというと、新卒のキャリアルートを前提としており、年齢に応じた「経験と技術」と言うことになる。個別性を無視した採用プロセスのために、元々の人事制度になじまなければ採用はできないと言うことになる。
 顧客の要求水準は上がり続けており、自社の戦力では対応できない事例が出始めている。特にIT業界では顕著であり、大手企業は他社の人材を奪おうとしてる。
 他社からの移籍を促すトヨタの人材採用のポスターや社員が他社の人材を引き抜いた時に支払う報償などを取り上げたニュースなどは、人材不足には一斉採用では対応できないことを物語っている。

(2)内定辞退の影響
 内定辞退率という数字はあまり公表されていないようだが、自身で見聞きした例では、3割から6割という幅で内定辞退率があるようだ。
 私自身が大学生だった頃、解禁は大学4年の10月であった。
 何社もそんなに回れないし、そもそも卒論の追い込み時なので、何社も内定をもらう余裕もなく、決まったらそれで終わりにしていた。
 息子の就職活動の時にその早さに驚いた。性格だろうが、1社に内定をもらったらそれで終わりにしていたが、何社も内定をもらっている学生もいたようだ。
 内定辞退が発生したのは、「バブル崩壊直後のコダック社の内定取消事件(1992年2月)」が契機ではないかと思う。
 内定の約束は破っても良いのだという風潮ができて契機だと思う。
 しかし、これは採用担当者から見れば悪夢だ。
 10人内定を出して3人しか来ないと言うことであれば、事業戦略が崩れて行く。
 大学4年になる前に内定を出す問うことは、一年後にしか戦力として計算できないと言うことだ。すぐに働きに来るわけではない社員を当てにして事業戦略を立てるkと自体が成り立たなくなっているのではないか。
 これを解決したいと言うことであれば、「待遇を新卒と同じにするが、年齢を問わない」という発想に転換する必要がある。
 その場合に、給与は「仕事につける」という考え方にする必要がある。

(3)給与格差について
 日本の企業の初任給が低すぎるという指摘がある
 厚生労働省「賃金構造基本統計調査(初任給)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/53-1.html)では、平成29年度の調査では、男性で
大学卒 207.8千円 (    〃 0.9%)
高専・短大卒 180.6千円 (    〃 0.5%)
高校卒 164.2千円 (    〃 0.4%)
一方20年前の平成9年では、男性で
大卒 193.4千円 (対前年上昇率 0.4%)
高専・短大卒 168.9千円 ( 〃 1.3%)
高卒 156.0千円 ( 〃 1.0%)
となっており、大卒の初任給が20年間で1万円強しか上がっていないことがわかる。
 わたし自身が、30歳の頃(今から30年前)でも初任給は20万円近くあった。
 驚くほど変わっていない。これは、新卒者の能力を全く認めていないことになる。初任給がまるで時間に取り残されているように感じる。
 まだそれほど事例も多くなく、表面化していないが、そもそも初任給を同じにしないという考え方がある。例えば、十分な職業訓練を受けていない、あるいは専門知識の修得ができていないレベルの社員と、すでに組織が求める能力を保有して発揮できる社員の差をつけるという考え方だ。
 海外展開をする上で外国人の登用を積極的に行うということを真剣に考えるならば、こうした対応が必要であり、結局は社員調達が競り負けてしまうことになる。

(4)人事側の能力不足
 採用時期になると人事担当者が「優秀な人材がほしい」と言っているのは悪い冗談としか思えない。こうした旧態依然の採用プロセスを続けていれば、他社の競り負けるのは当たり前になる。
 内定辞退の発生は、優秀な人材は一部の企業に集中し、他社は、余った人材しか来ないと言うことになる。人材の市場に100のリソースがあっても、30しか活用できない事態になっている。
 なんの工夫もしなければ、結局は人数の確保もできないことになる。
 必要な時に補充できない新卒の一括採用、能力も何も評価していない初任給制度を改めなければ採用面での優位性は作れない。
 そのために、人事戦略として行うべきとは以下のようになる。
・選択できるキャリアプランの多様化
・能力評価のためのシステム構築
・仕事に対応した報酬制度の設定
・単なる人数確保という採用プロセスの廃棄

 さて、こうしたことは簡単にできる話ではない。
 日本の労働基準法などは、会社の勝手な都合で雇用条件を勝手に変えて良いとは認められていない。特に報酬は大きくいじれない。
 したがって、人事制度を変えて行くといった時には「現実問題」として賃金の行く末を考える必要がある。
 賃金シミュレーションに求められる機能として、あらたなキャリアパスを前提とした時にどのような人生設計を立てることができるのかを示す役割を持つことになる。

2018/10/11