情報は常に不完全で欠落している


我々が何かを思い行動するときには無から始めるわけではなく何かしらの外部の情報が起点になる。しかし、そうした外部情報は不完全であり、肝心なことが欠落してしまう。

■湾岸戦争のオイルまみれの鳥

映像であれば信頼できると信じていたことが幻想であったことは「オイルまみれの鳥」の映像で思い知らされた。

【油まみれの水鳥事件】
日本が90億ドルをアメリカとその同盟軍に拠出するべきか否かの議論が始まった時、「イラクがペルシャ湾へ原油放出をした」として「油まみれ水鳥」の映像と写真が流された。こんなひどいことをしているイラクを攻撃するのは当然である、という方便のための報道であった。しかし、水鳥を襲った原油は、アメリカ軍が誘導爆弾によってゲッティ・オイル・カンパニーの原油貯蔵施設から流出させたもので、当初から米中央軍の攻撃目標になっていた。
https://www1.gifu-u.ac.jp/~noharah/class/media/war.pdf

仮にそれが事実であったとしても、部分部分を抜き出し、順番を変えて、それとは無関係のナレーションを着けることで全く異なった結果に導くことができる。さらに云えば、得られた情報以外の情報の存在を確かめることは難しい。

「情報は常に不完全で欠落している」という所以である。

■フェイクAIがもたらすもの

さらに云えば、映像も含めて「事実」て異なる情報の生成が可能になり、その社会的なインパクトも無視できなくなってきている。

○米国防総省付近で爆発とのAI偽造画像が拡散、米株下げる場面も
2023年5月23日

フェイスブックに最初に掲載されたこの偽造画像には、大きな煙が立ち上がる様子が映されており、あるフェイスブックのユーザーはこれがバージニア州にあるペンタゴン付近だと主張していた。

この写真はすぐにロシア国営ニュースネットワークのRTや金融ニュースサイトのゼロヘッジを含め、数百万人のフォロワーを抱えるツイッターのアカウントを通じて拡散された。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-23/RV34L6T0AFB401

■頼りにはなるが信頼できない

自分の収集した情報が正しいかどうかが分からない場合にはどうするべきなのか。

一つは裏付けを確認すること。できるだけ情報のソースを見つけること。
新聞記事であっても、よく見ると同じ内容の記事が扱われていることがある。
政府や公的機関、あるいは企業ニュースなどは発表をそのまま記載していることがある。
大元の情報源をたどることが必要である。

二つ目は、意見と事実を分離させること。意見は事実に基づいた推論である。推論を事実であるかのような記載は注意すること。出典が分からない情報を元に、あたかも何かが事実であるかのような記載は注意しなければならない。多くのSNSの記事がこれである。

三つ目は、当事者は自分の都合の良い情報しか出さないと云うことを自覚することである。ウクライナとロシアの戦争、イスラエルとハマスの戦争、それぞれが出す情報は、ウソであるか何かを切り取った情報である。政府と国民の関係も同じである。政府は自分の都合の良い情報しか出さない。

さて、こうした世界での情報を受け止めるためには、周辺にある情報をくまなく探し、そして論理的な思考で判断する訓練が必要である。それが十分でなければ「情報は常に不完全で欠落している」ことを前提とすべきである。

(2023/11/13)