世間に転がる意味不明:問題を混ぜると原因対策から遠ざかる(技能実習制度とキックバック事件)


意図的に問題から目をそらすべきではない。
なぜなら対策が意味の無いことになるからである。
技能実習制度も自民党のパーティ券のキックバックも本質的には「法令遵守を二の次にする卑しさ」に起因する。これへの対策が最初である。「バカに付ける薬はない」と諦め無視してはいけない。

■ISO9001

ISO9001では、問題が起きたときには再発防止を求めており、原因の分析は重要な工程になる。

10.2 不適合及び是正処置
b) その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため,次の事項によって,その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
1) その不適合をレビューし,分析する。
2) その不適合の原因を明確にする。
3) 類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする。

原因を明らかにして対策をする時、いわゆる三大無策に向かわない様にすることが必要になる。三大無策とは
①管理強化
②教育
③周知徹底
を指す。どうしてこうした施策に向かうかと云えば、最初の原因を考える起点が
①誰がそれを行なったのか
②彼・彼女はどうしてそれを行なったのか
に眼が無期、仕事をする構造的な特徴に目が行かなくなるからである。

しかし、もう一つやってはいけないことがある。
それは、原因にしろ課題にしろ混ぜてはいけないと云うことだ、
問題を混ぜる行為は、解決しなければならないことから視点をずらすことになる。

■技能実習生制度

技能実習生制度の廃止については廃止する方向で検討がされており、下記の様に具体化が進んでいるようである。

○技能実習制度・特定技能制度見直しに向けた提言
2023年12月14日

「技能実習制度は、労働力確保と人材育成を目的とした制度に変更し、外国人材・受入れ機関等に配慮すること」

https://www.jimin.jp/news/policy/207230.html

しかし、労働力確保と人材育成は別の問題であり、そもそもの技能実習生が持つ課題を解決する方向になっていない。

なぜ、海外から「奴隷制度」と非難されるかと云えば、安い労働力に群がり搾取する輩が後を絶たないからだ。

○技能実習生の家賃や食費を過剰に徴収、受け入れ先に計画作成指導せず…監理団体に改善命令
2023/12/19

 外国人技能実習生の受け入れ先企業を指導・監査する鹿児島県枕崎市の監理団体「枕崎市水産物振興協同組合」が、技能実習適正実施・実習生保護法(技能実習法)に違反していたとして、法務省と厚生労働省から改善命令を受けていたことがわかった。4日付。

両省の発表によると、同組合は実習先のカツオ節工場に対し、適切な技能実習計画の作成を指導する立場にあるにもかかわらず、行っていなかった。また、実習生の寮の家賃や食費を実費より多く徴収していた。

https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20231219-OYTNT50086/

もともと技能実習制度は途上国に対し技術移転がスムーズの行くための制度であったはずである。これが機能しないのは「労働力」という枠組みを含めてしまったからである。

したがって、問題は分離しなくてはならない。

■問題の分離

(1)労働力
外国人労働力は安価で調達できるという「さもしさ」から脱却しなければならない。これが続く限り「奴隷制度」は無くならない。そのためには、以下の施策が必要である。

①就労ビザの要件の緩和
日本で働きたいというのであれば来てもらえば良い。
すでに日本企業で働く予定であれば企業側に保証人になってもらえば良い。
いったん就労の権利が取得でき一定期間の実績があれば、日本国民と同じ権利(教育や医療など。但し投票権は微妙)を与えれば、安心してこれるだろう。

②労働法の適用拡大
最低賃金も約束されないような働き方を認めないことが必要である。
そのためには、国籍に関係なく「働くヒト」全てに労働基本法などを適用すべきである。
これは外国人に限った話ではない。
現在企業活動の関わるヒトは、正規社員、パート・アルバイト、嘱託(再雇用)、(偽装かどうかはともかく)ビジネスパートナー(委託業者)で構成される。彼らに対しても人権上の保護をすべきである。現在の労働基準法は時代遅れである。

③教育の責任
能力が満たされていない人々への教育の責任は雇用者である。その負担を働くヒトにおわせるべきではない。仮に「途上国への技術移転」が国策であるというなら、「国と国」の契約行為と「教育支援(費用や訓練する場の提供)」は国の施策、たとえば補助金で行なうべきである。当然お金を出しっぱなしではなく効果測定が必要である。ただし、教育期間であるからと言って賃金を下げてはならない。

さて、こうしてみると「名前を変える」とはかけ離れていることが分かる。

■論点ずらしのもう一つの事例

問題を適切に把握しないと論点ずらしが横行する。

○政治資金規正法、開示額・罰則強化が論点に 与野党
2023年12月19日

自民党派閥の政治資金問題を巡り、与野党は政治資金規正法の改正議論に入る。パーティー券を購入した際に収支報告書へ記載する金額の引き下げや罰則の強化が論点となる。2024年1月召集の通常国会に改正案の提出を見据えている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA180E00Y3A211C2000000/

これは派閥のキックバックの事件の流れで発言しているが間違っている。
なぜならば、問題は「ばれないなら法の網をかいくぐってでもお金を集めるのだ」という欲望にとりつかれた人々が政治を担っていることである。したがって、改正すべきは政治資金規正法ではなく、法令遵守ができない「疑い」のあるヒトは「公民権の停止」にすべきである。

「李下に冠を正さず」って知っているか?

(2023/12/20)