世間に転がる意味不明:後からならば、なんとも言える(札幌市と宇都宮市、エスコンフィールド)


計画段階から指標を明らかにすべきであるし、何らかの動的モデルでシミュレーションをするべきである。それをせずに結果だけ評価するのは為政者の自己都合を許すことになる。

■札幌市の空回り

札幌市の施政が旨くまわっていないようだ。

○札幌市電の延伸断念 「採算悪」「用地買収難」という理由が極めて近視眼的なワケ
2024.2.6

北海道札幌市は2022年9月、それまで検討を続けてきた路面電車のJR札幌駅方面への延伸を事実上断念した。採算性や用地買収の困難さが断念の直接的な理由で、これに代わるものとして自動運転の水素燃料バスなど新しい交通システムを合わせて検討するとされた。

しかし、札幌市が公表した路面電車延伸の検討資料には、昨今の鉄道プロジェクトで評価項目として盛り込まれている、まちづくりなどへの全体的な経済効果を考慮した

・費用便益分析(所要時間短縮などの効果をプラスの経済効果として評価する方法)
・クロスセクター効果分析(商業や観光、医療や福祉など各行政部門への横断的な影響を評価する方法)

は行われず、単純な運賃や電車広告などの収入と経費の支出の比較のみで採算性が評価されたことなどから、検討内容がずさんだったことが否めない。

https://merkmal-biz.jp/post/58475

札幌オリンピックの招致の挫折は、関連する補助金を当てにしていただろうし、その関連で市電などの整備も計画していたと風聞で聞く。

駅前再開発などの局所的な事業であれば、一定の採算を判断する指標もあり計画の管理は可能であるが、これが都市問題(交通問題、住宅問題、その他の行政上の問題を含む)になると、その広域性が様々な要因の複合化を招き、計画管理が難しくなる。

上記の記事で
・費用便益分析(所要時間短縮などの効果をプラスの経済効果として評価する方法)
・クロスセクター効果分析(商業や観光、医療や福祉など各行政部門への横断的な影響を評価する方法)
についても、入力情報により結果は大きく異なり、仮に計測したとしても結果評価にしかならない。

■分岐点が分からない

一方で、成功事例なども話題に挙がる。
札幌市から北広島市に北海道日本ハムファイターズが移転したことで話題になったエスコンフィールドは、そのプロデュースのうまさから話題になることが多い。

○日本ハム、新本拠地エスコン移転で“収益激増” NPBにさらなる「新球場」建設プランは生まれるか
2024/01/30/

 パ・リーグ2年連続の最下位となった日本ハムだが、“エスコン効果”で営業利益は大幅アップを果たした。プレオープンの3月12日から9月30日までの203日間で来場者303万人を記録。札幌ドームを本拠地としていたコロナ禍前の2019年に9億5000万円だった営業利益が26億円となる見込みだという。

https://dot.asahi.com/articles/-/212756?page=1

しかし、その前提にあるのは北広島市の地域活性化の計画とシナリオであり、その一貫性を評価しても良い。

なぜうまくいったのかが分からないなりにも、計画の推進に弾みがついている事例として宇都宮市も俎上にあげて良いだろう。

○好調の宇都宮ライトレール「車両増やします」快速も設定でパワーアップへ
2024.02.06

「ライトライン」は、開業から5か月で約190万人が利用。これは当初予測を約1.2倍上回る結果とのことです。開業後、当初は運賃収受に時間がかかり、遅延が発生していましたが、乗り方の定着やICカード利用率が向上し、現在はおおむね定刻通りに運行できるようになったとしています。

https://trafficnews.jp/post/130802

しかし、来れも結果論であり、うまくいっている政策とうまくいっていない政策の分岐点は分からない。

■計画の重要性

それでもグランドデザインは描くべきである。
それは単に施策の項目を列記したものでは十分ではない。

施策の順番(優先順位)と相互関係
それがうまくいったかどうかの判断基準
そしてなぜそれがうまく行くと思ったのかの理由

が記載された上で、人口動態、商圏の変遷、財務の影響などについて動的モデルでシミュレーションを行なうべきである。マーケティングからのアプローチも必要である。

戦略に無関心なチームでの計画は形がい化しやすい。
そうした目で最初の記事を見て欲しい。

(2024/02/09)