世間に転がる意味不明;経営者の失敗のツケをなぜ社員が支払うのか(事業再構築と従業員の削減は問題が違う)


■2024年春闘

2024年の春闘の話題はなんと言っても「賃上げ」のニュースであろう。報道では中小企業で賃上げできたのは30%程度であり、その賃上げ幅も5%に満たない。また、統計がとれるのは程度の差はあれ組合が結成できる程度の企業であり、実感としては大企業だけが賃上げできていると感じる。その余波を受けて中小企業での人手不足は拍車がかかっているという気がする。

では大企業に勤めることがかなった人たちは安穏としていいのかといえばそうは行かないだろう。大企業であるほど事業の再構築が求められ、それが出来ない企業は存続すら危ぶまれる。

○東芝5000人削減、国内社員1割弱と報道-国内企業でまた人員削減
2024年4月17日

報道によると、5月発表予定の中期経営計画で収益改善の柱として盛り込む。東芝の国内従業員は約6万7000人で、2015年に不正会計が発覚以降の人員削減では最大規模となるとしている。希望退職者を募集し、1000億円規模の特別損失が発生する見通しという。

今年の春闘では大企業を中心に記録的な賃上げが続いた一方で、人員削減に踏み切る国内企業が増えている。コニカミノルタが国内外で2400人を削減する、と4日に発表したほか、資生堂やオムロン、ソニーグループもリストラ計画を公表しており、景気への波及も懸念される。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-17/SC2UBSDWLU6800

それは昨年まで好調であった企業でも例外ではない。昨年の初頭に誰がテスラの業績不振を予想しただろう。

○テスラ、世界の従業員の10%以上を削減へ-EV需要が減速
2024年4月15日

テスラは今月、予想を大幅に下回る納車台数を発表し、四半期ベースで4年ぶりの減少を記録した。複数のアナリストは、最新モデルである「サイバートラック」の生産が遅れていることや、来年後半に次世代車の生産を開始するまで新製品が一服することを理由に、テスラの年間販売台数が減少する可能性があるとみている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-15/SBZA47DWRGG000

■人員削減

賃上げの一方で人員削減をする企業がある現実をどう見れば良いのか。
当然、企業の生き残り戦略で事業の統廃合・取捨選択などは当然のこととして、これらと人員削減を同義語として扱うのは間違っている。

それは、人的資源の活用能力が無いと言っているのと同じである。
また、事業再構築の理由の大部分は「業績悪化」である。

○テスラ、全世界で従業員の10%以上をレイオフ…イーロン・マスクが送ったメモ全文
Apr. 16, 2024

長年にわたり、我々は世界中に複数の工場を展開し、急成長を遂げてきた。この急成長に伴い、特定の分野で役割や職能の重複が生じている。次の成長段階に向けて会社を準備するにあたり、コスト削減と生産性向上のために会社のあらゆる側面を見直すことは非常に重要だ。

その取り組みの一環として、我々は組織を徹底的に見直し、世界全体で10%以上の人員削減という難しい決断を下した。これほど嫌なことはないが、やらなければならない。これによって、我々は無駄を省き、革新的で、次の成長段階のサイクルにおいてハングリーであることができるようになる。

https://www.businessinsider.jp/post-285470

○東芝、国内の従業員を数千人規模で削減へ…対象は総務や経理など本社の間接部門が中心
2024/04/17

業績低迷が続く東芝は、昨年12月に非上場化し、JIP傘下で再建を進めている。主要事業を手がける子会社を本社に吸収する計画で、業務が重複する部門の従業員を減らす計画だ。一方で、データを収集・分析して企業の戦略立案を支援する事業や、鉄道などのインフラ事業を成長の柱と位置付けており、固定費を削減して、研究開発や設備投資に資金を振り向けたい考えだ。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240417-OYT1T50131

いくらきれい事を言っていても、経営の失敗は明らかであろう。
経営の失敗は一般社員には関係ない。ましてや40歳以上をターゲットに早期退職を促されるいわれはない。仮に、役割が重複する社員がいるというのであれば、それは組織デザインが失敗したと言うことだ。

まずは経営層をリストラすべきである。
事業再構築を理由に「優秀な人材」が欲しいというのは世迷い言である。優秀な人材を使いこなせない企業に未来はない。

■社員から見捨てられる日

安易な人員削減は社員からの信頼を失いかねない。
マクロデータでは3年内離職率は変化がなく、転職が大きなトレンドになっていないが,社会全体で見たときの人材の流動化は加速するかもしれない。その徴候はすでに見えている。

○転職希望が「定年まで」上回る 18年ぶり、東商新入社員調査
2024年4月22日

東京商工会議所は22日、2024年度の新入社員意識調査を発表した。就職先の会社でいつまで働きたいかとの問いに「チャンスがあれば転職」と回答した人が26・4%となり、06年度以来18年ぶりに「定年まで」(21・1%)の割合を上回った。人手不足を背景に、転職しやすい環境が整っていることが影響しているとみられる。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/322797

会社にとって都合の良い「優秀な人材」にしか興味を持たないと知れば、社員は自分が興味を持てる会社に移動する。お互い様であり、自分の都合の良いように人は動かないことを知るべきである。

(2024/04/23)