世間に転がる意味不明:地域交通の問題点:目先の問題だけに終始する人々(ライドシェアはオーバーツーリズムを解決できないと感じる件)


■はじめに

2024年問題から派生した人手不足問題からタクシー運転手の不足、これの解決策の日本版のライドシェアというゆがんだ制度設計が進められている。こうした問題の根本は、様々な課題を混ぜてしまうところにある。

地域交通の問題で言えば、過疎地、地方都市、観光地、都市部では課題が異なる。
タクシーの問題で言えば、経営上の課題が先に来るはずであり、運転手不足はその付帯条項である。
タクシー運転手の問題で言えば、賃金問題は避けて通れない。
観光地・都市部の交通問題には“渋滞”と言う問題も含まれる。
交通手段は、バス(BRTを含む)、鉄道(LRTも含む)、タクシーだけではない、モノレールなどもあるだろう。

こうしたことを混在させて議論をすると「解決」すべきことから目をそらしてしまう問題がある。この一連の投稿は、問題の整理をすることにより課題解決の糸口を考察するため
のものである。

■都合の良いオーバーツーリズムはない

ゴールデンウイークの観光地の混雑を見ると、彼らの破壊的な威力に驚く。
下記に記事はおとなしめのニュースだと感じる。

○「もう我慢の限界」 春の京都“観光公害”で地元民うんざり、迷惑行為に「ここはテーマパークじゃない」の声 もはや規制手段しかないのか
2024.4.10

 清水寺や祇園など訪日客に人気の東山方面へ向かうバス乗り場は、行列が乗り場を越えて地下街の入り口付近まで続く。最後尾では案内板を持つ係員が列の整理に汗だくだが、バスが到着しても積み残しが出て、列がなかなか動かない。

https://merkmal-biz.jp/post/63596

オーバーツーリズムは海外でも問題視されている。しかし、多くは「観光」を地域の資源として人々が来ることを誘引し、それによって利益をむさぼろうとしている。それを、来すぎたから迷惑であると言うのは身勝手であり、同情はできない。

人々が集まることの弊害を最初に考えない方が悪い。

■焼け石に水?

観光地でのタクシー不足と言うことでライドシェアが切り札のような言い方になっている。

○GWの軽井沢で「日本型ライドシェア」がスタート。GOアプリで迎車、自家用車も活用で25台を運行
2024年4月26日

ゴールデンウィークの観光客増加に対応するための取り組みとして、地元のタクシー会社との協力により自家用車19台を含む最大25台を運行する予定。対象は軽井沢町全域で、アプリ「GO」から「タクシー・ライドシェアを呼ぶ」で手配した場合にライドシェアが迎車することがある。

https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1587790.html

しかし、元々の6台のタクシーが19台増えるというのは、相当量増えたようなイメージだが観光客に対しての台数としては十分なのだろうか。さらに言えば、それほど増えなかった恐れもある。

○タクシードライバー不足が深刻…観光地・軽井沢で「日本版ライドシェア」スタート 約250人が応募、8人採用
2024年4月26日

軽井沢タクシー協会・松葉和彦会長:
「軽井沢に来られたお客さまにとっては時間が重要に。(ライドシェア活用し)その時間を楽しんで過ごしてもらいたい」

ドライバーはこれまでに約250人の応募があり、面接を経て、現在8人が採用されました。大町市の広越智岳さん(50)。仕事の合間に運行する予定です。都内でリムジンの送迎ドライバーをした経験もあるということです。

https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=18340

いったいこれはどう考えれば良いのだろう。
いままでのタクシー台数に対して8台増えれば解決するのだろうか。

■数字の裏付けはどこに在るのだろう

タクシー会社にしてみれば、遊休のタクシー用自動車があるのであれば、それを稼働させれば収益が上がる。従って、稼働率が少しでも向上すれば利益につながるので歓迎すべき事であろう。

しかし、観光客にとっては数台増えたからと言って混雑緩和が解決されないのであれば意味は無いし、オーバーツーリズムの何かを解決するものでもない。

こうした不毛な議論になるのは数字が抑えられていないからである。

①季節毎でも良いが一日の観光客数はどのぐらいなのか。これは、軽井沢駅の乗降客数やホテルの稼働率などから計算できるだろう。
②これに対し、彼らが利用する現状の交通機関ごとの利用者数はどのぐらいなのか。これもある程度交通センサスのような手法で調査すれば分かる。
③交通機関ごとの平均待ち時間はいくらか。すなわちバスやタクシーに乗車するために必要な待機時間は平均でどの程度か。分布などもあると良い。

こうした統計データを元に、観光客に必要なトラフィックのあるべき姿が出てくる。おそらくは不足のタクシー台数も出てくる。

こうした議論がないので、「タクシーが不足している」事が真実なのかどうかも分からないし、オーバーツーリズムで問題が生きているかどうかも分からない。

タクシー会社は目先の利益を得ることに奔走し、地元自治体も「タクシー不足」であるというヒステリックな噂で翻弄される。

数字を見なければ目先の出来事に左右される。

(2024/04/30)