スキルデータベースについて(1)

今から30数年前。コンピュータが企業に使われ始めたころ、スキルズ‐インベントリーという言葉が人事部門から出されたことがある。

おそらく、いつの時代も、どんな会社も「誰が何をできるのか」を知りたいと思ってデータベース化を目指すのだろうが、うまくシステム化されている例を私は知らない。

理由はいくつかある。

一つ目は、入力の動機付けを設定しにくいことにある。
人事異動を含めた人事情報や給与計算など、企業として管理しなくてはいけない事項はデータベース化しやすい。
一方で、入力を社員が行わなければわからない情報を管理するのは難しい。
制度化されている目標管理なども入力自体をシステム化していないと、なかなかデータベースにすることはできていない。
目標管理は、多くの場合には評価につながるので入力の動機付けになるが、自分の能力と云うことになると入力しても本人利益につながらないので動機付けにならない。
そもそもデータベースとして情報の整備がしにくい。
当然のことながら、データが欠損していてはデータベースの意味が無い。

二つ目は、維持管理が難しいことにある。
社員のスキルや能力は一定期間ごとに変化してゆく。レベルアップもあるだろうし、新たな能力開発もあるだろう。資格取得であれば、資格喪失などもある。
こうした、頻繁に質的変化がある項目について、データベースを維持することは最初に設計をしっかり行っていないとシステムとして成立しない。

では、どんな点に気をつけてデータベースを構築すべきだろうか。
下記に、留意点を示す。

(1)スキル項目自体をデータベースの管理項目とすること
スキルは、時代に応じて変わってくる。
製造業であっても、新しい技術が出現したり、新しい製造機械が出てきたりすると求められる能力が変わる。
今までは手作業で行っていたことが、例えばマシニングセンターでプログラムを入れることができる人材が必要になって来ていることも一例だろう。
また、新しい職種が出てくれば必要なスキルも変わる。
変化してゆく能力スキルを定義して管理するシステムも配慮すること。

(2)使う目的に従ってデータベースを設計すること
管理しやすいことを目的にしないこと。
使う目的を配慮した時に、どのようなデータベース構造にしておくと使いやすいかを考える必要がある。
この人はどんな経験をしてきたのだろうかと云うことを見たいのであれば、個人を中心としたデータベースになるだろうし、この技術の経験者を探したいということであれば、スキルを中心としたデータベースにすべきだろう。

(3)人は同じ状態でいないことを前提にすること
経験を積むことによって人は能力を高めてゆく。
逆に、現場を離れることによって失われる能力もある。
公的な資格などは、維持を求められることもあり、資格喪失もあり得る。
データベースでは、こうした時間経過を配慮した設計にする必要がある。

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