《PMSの視点で見たテレワーク時代への課題》

新型コロナウイルスは働き方改革へも影響をしているのだろう。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200218/k10012289831000.html
テレワークや時差出勤 企業で広がる 新型ウイルス感染予防で
2020年2月18日

少し長くなるが、引用する。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、企業の間で職場に出勤せずに在宅などで働くテレワークや公共交通機関のラッシュを避ける時差出勤を呼びかける動きが広がっています。

▽NTTが、グループ各社のおよそ20万人の従業員にテレワークや時差出勤を呼びかけ、▽東芝は国内のおよそ8万人の社員に時差出勤を呼びかけるとともに、1万人以上がテレワークで働けるよう通信回線の容量を増やします。

▽携帯大手のソフトバンクは全国およそ1万7000人の全社員に、▽大手商社の双日も東京と大阪の社員およそ2000人に、時差出勤を呼びかけました。

▽武田薬品工業は18日から国内のグループの従業員およそ5500人に対し、可能なかぎりテレワークや時差出勤をするよう指示するほか、▽新生銀行も18日からグループのおよそ5400人の社員に可能なかぎりテレワークを行うよう呼びかけます。

テレワークや時差出勤は、働き方の見直しや東京オリンピック・パラリンピック期間中の交通の混雑を緩和しようと制度を導入する企業が増えていました。

新型コロナウイルスの感染が各地に広がる中、大勢の人が集まる場所を少しでも避けられるよう、社員に利用を呼びかける動きが出ています。

大手の企業の呼びかけに続いて中堅・中小企業などにも感染防止に向けた対応が広がる可能性があります。

(ここまで)

理由はともかく、働き方の選択肢が多様化することは望ましいと考えている。とはいえ「テレワーク」と叫べば、それが定着する訳ではない。
「新型コロナウイルスが怖いから会社に来るな」は無責任な発言になるので注意が必要だ。

現時点で考えられる課題を列記する。

(1)業務プロセスの見直し
一カ所に集まり業務を行うことを変えて行くことになる。当然業務プロセスが変わるだろう。対象は、企画やプログラミング、設計開発、場合によっては総務・人事なども対象となるかもしれない。
もし、業務プロセスを変えないでテレワークが可能ならば、そもそも必要のない出勤を強要していると云うことになる。企業が競争力向上に全く取り組んでいないことの証左だろう。

テレワークをすることにより、生産性向上につなげるように業務プロセスの再設計をすべきである。例えば、会議室などを予約しなくても適時にコミュニケーションを行う環境を活用することで意思決定のスピードを上げるなどは簡単に思いつくことだろう。工場や販売の現場などにカメラを設置し、コンサルティング的な管理体制の確立なども考えられる。そこでは、マネジメントプロセスも変わるだろう。

(2)インフラの整備
「出社に及ばず」で休暇ならいざ知らず、「仕事をしなさい」と云うことであれば、仕事をするための環境の構築が必要になる。最低限でも以下が必要であろう。
・必要文書へのアクセス
・関係者とのコミュニケーションツール
いずれもIT関連の技術と無縁ではない。はたして、従業員の各人の家にはその環境はそろっているのだろうか。
誰でも、ある程度の性能のパソコンを保有し、WiFi環境を持ち、業務に必要なソフトウエアを保有しているわけではない。これを会社側が用意しないのであれば、社員に負担を強いることになる。
上記の記事でも「テレワークで働けるよう通信回線の容量を増やします。」とあるように、仕事で使用する回線が安定するようにしなければならない。

リモートデスクトップといいながら、サーバーへのアクセスが遅延したり、アクセスが遅ければ「仕事にならない」事態も引き起こす。

(3)ガバナンスの整備・情報セキュリティへの対応
すべてを書き切れないのでサンプルとして記述してみよう。
・必要文書へのアクセス
実現方法は様々なレベルで考えられる。
最も原始的な方法は、社内のデータベースにアクセス可能にすることだろう。USBなどで持ち帰るのは現在は許されるモノではない。
しかし、通信回線の整備、サーバーの整備とともに、ルール作りが必要になる。
パスワードなどは、個々人に管理させるのではなく、管理者が割り当てるなどのことも必要になるかもしれない。
情報管理についての教育や労働契約の見直しなども必要かもしれない。
時間外のアクセスの禁止、コピーの禁止なども必要になる。
・関係者とのコミュニケーションツール
情報の伝達には伝統的にメールを使うことになるだろう。しかし、関係のない人への誤送信は今も昔も危険な事態を引き起こすことには違いない。メールについては、必ず本社サーバーを通すようにし、遅延発信で注意喚起を促すことが一般的になるだろう。
テレビ会議なども活用することになるが、その会議内容を記録するのであれば、個人のプライバシーについては発言しないようにさせるルール作りが必要になる。

情報セキュリティの問題は広範囲にかかわってくる。クラウドの活用が一般的になれば、情報漏洩の穴は増えるばかりだ。マネジメントの設計範囲は広がって行く。

(4)人事・労務管理の問題
テレワークが可能な職種とそうでない職種ができたときに、会社に来る時間というのはどう理解したら良いのだろう。処遇の程度に偏りが発生することになりかねない。
また、テレワークにより仕事の質が変わるかもしれない。
管理者としての部下育成や能力向上への関わり方、業務の進捗管理の仕方、などはすぐに思いつく。
こうした結果、今までの出社してから退社するまでのタイムカードによる管理とは異なる管理システムが必要になる。
職務定義の見直し、賃金制度の見直し、キャリアパスの見直しなど多岐にわたる。
人事や労務管理の見直しを戦略との整合性の中で進める必要がある。

(5)新たな可能性
さて、通勤が必要ないと云うことは、働き方について新たな可能性を持ち込む。
・交通弱者への配慮
車椅子の方や、視覚障害の方はなかなか出社することは難しい。こうした方が働ける環境を作れるかもしれない。視覚障害は難しいと云うが、音声だけでできる仕事を作り出すことは可能だろう。
・世界の専門化の力を借りる
テレワークの対象を自社の社員に限定する理由はない。プロジェクト単位で専門化を招聘し事業を進めることも可能になるはずだ。こうしたことは、社員の採用計画も左右するかもしれない。

テレワークが浸透するきっかけにはなっていってほしいが、これが当たり前の時代になるためにはまだハードルは高い。
中小企業にとっては、新たにIT投資はできない。
とはいえ、生産性向上や業務の効率化はいつも頭痛の種の身としては考えても善いテーマだろう。
何も全部をテレワークにしろと行っているのではない。既存の技術の枠内でテレワークを実現したとして、注意すべきことをまとめてみたので参考のために。

➡ テレワークとPMS

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