戦略人事:人員削減戦術への対応【3/3】(矛盾する人事施策)


2024年3月。リストラの記事が目につくことが多い。
人事部門はリストラを対岸の火事として見ていることへの警鐘としていくつかに分けて現状を見てゆく。

最後は、人員削減の副作用と人事部門の対応について

■予期せぬ影響

人員削減は短期的な収益性の安定をもたらす。

○米テック5社、純利益5割増 AIが今後の業績を左右
2024年2月11日

米テック大手の業績が拡大している。マイクロソフトやアップルなど主要5社の2023年10〜12月期の決算を合算すると、売上高が前年同期比12%増の4779億ドル(約70兆円)、純利益が56%増の1011億ドルだった。人員削減を通じたコスト抑制が寄与した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN062A00W4A200C2000000/

しかし、一方で市場からの評価の毀損も生じかねない。

○<東証>ソニーグループが3日続落 ゲーム事業でリストラ発表
2024年2月28日

ソニーGが3日続落し、前日比145円(1.12%)安の1万2785円を付けた。傘下のゲーム事業会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は27日、SIEの社員数の8%にあたる約900人を削減すると発表した。リストラ発表でゲーム事業の業績伸び悩みが意識され、売りを誘った。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL280V30Y4A220C2000000/

また、「沈没船から逃げ出す人々」「優秀な人から辞めてゆく」という都市伝説も忘れてはならない。

○ワコールの希望退職、150人の募集に対して215人応募
2024/02/26

ワコールHDは23年3月期に創業77年で初の最終赤字を計上し、経営不振が続く。主に日本および米国事業の落ち込みが原因で、国内事業を担うワコールでは不採算事業や赤字店舗の撤退の荒療治を進める。人員整理は業績低迷が明らかになってから2回目。22年11月に発表した国内ワコールの早期退職制度“フレックス定年制度”には、250人程度の募集に対して155人が応募した。

ワコールの希望退職、150人の募集に対して215人応募

予想以上の退職者は逆に組織能力を低下させる恐れもある。
引き留めておく人材を把握しておかなければ優秀な人材が流失する。

■矛盾に向かう

人員削減の一方で人手不足があり,事業の継続性を担保するための人材獲得は困難になっている。実態としての人員削減は「リスキル」やこの結果としての「再配置」が難しいとして、はなから諦めている節がある。

経営層から「リスキル」を命じられても結局「解雇」するのであれば、そうした再教育は無駄な投資である。事業の環境次第では簡単に人員削減に走るというのは常態化するかもしれない。

人事部門は、目先の人事関係のオペレーションだけに集中していて良いわけがない。会社の内外に常に目を光らせて嵐に備えなければならない。

なぜかって?

うっかりすると自分が人員整理の対象になりかねないし、リストラした相手に恨まれるリスクもあるからだ。

(2024/03/01)