戦略人事:人手不足、賃金、外国人というギャップ(全体最適と部分最適)


おそらくは解決したいことの先は一緒なのかもしれないが,なぜ皆バラバラの活動に見えるのだろう。

■ジョブ型雇用はどこに行ったのか(賃金報道の不思議)

昨年に続き、今年も相応の賃金アップを政策に掲げる政府に呼応するように賃上げのニュースがそこかしこで報道されている。

○春闘本格化 労使懇談会で賃上げや労働環境について意見交換
02月28日

連合新潟の小林会長があいさつし「ことしの春闘は賃金も物価も経済も安定的に上昇する経済社会へのステージ転換を図る正念場だと位置づけて臨む」と述べました。
これに対し、県経営者協会の殖栗会長は「価格転嫁と県内企業の収益の拡大を賃上げや地域の経済活性化につなげていくことが重要だ」と述べました。
このあと非公開で行われた会合では、賃上げに向けた労使の対応や適正な価格転嫁の実現などについて意見が交わされたということです。
会合のあと連合新潟の小林会長は「物価高に負けない賃上げの方向性や、価格転嫁だけではなくそれに見合った付加価値の向上も必要だという点で認識が一致した」と述べました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20240228/1030028538.html

企業側も前向きな回答をしていることは周知のとおりである。
また、これにあわせて初任給も高騰し始めている。

しかし、これは不思議な現象だ。

昨年、盛んに議論された「ジョブ型雇用」はどこに消え去ったのだろう。
この考え方は、従来の曖昧な、総合職/一般職、事務職/営業職/技術職と云った区分けではなく、具体的な仕事の内容に応じて雇用し、それに対して報酬を支払うというコンセプトであったはずである。

したがって、自社の業務プロセスを明らかにして、どこにどんな人たちに来てもらいどんな仕事をしてもらうことをベースに給与が支払われるべきであるが、どこかに消えて無くなったかのような報道だ。

人事制度の多くは、いわゆる職能資格制度という枠組みで運用され、それに賃金を紐付けている。これが機能不全に陥っているのは自明だと思う。海外ではテック企業を中心に盛んに人員削減がおこなわれ、日本企業であっても事業再編に伴い人員削減に余念が無くなってきている。

一括採用、長期雇用を前提とした組織運営などはできない。雇用を大胆に流動化させなければ企業の柔軟性は担保できない。その時に支払われる報酬は市場での仕事への相場が左右するはずである。なぜならば、人員削減での対象者は「能力が無い」人々だけではなくその企業での当面の事業に合致しないだけであるからだ。

したがって、これからの報酬は、ますます市場による相場で支払われる世界に近づくはずである。それが端的に出ているのが、アルバイトなどの時給の高騰であると理解している。

そこで存在するのは「仕事」だけであり、「学歴」や「人種」ではなくなる。その仕事ができるかどうかそれだけのはずであるし、おそらくそうなって行くだろう。

■外国人は人手不足を解消できないのだろうか

仕事優先で見るならば国籍などは関係ないはずである。学歴も関係なく単純にその仕事ができるかどうかだけである。

その視点で見ると外国人労働者が増えている現状は福音であるはずである。

○外国人労働者が初の200万人突破 人手不足を背景に加速
2024.02.20

対前年増加率は12.4%で、22年の5.5%から6.9ポイントと大きく上昇した。在留資格別では、教育・研究、医療、法律、経営などの分野で高度な知識・技術を持つ専門・技術職が対前年比24.2%増の59万5904人と最も大きかった。次いでコロナ禍で減少していた技能実習が増加に転じ、同20.2%増の41万2501人だった。一方、ワーキングホリデーなどを含む「特定活動」は、同2.3%減の7万1676人だった。

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01920/

(その他の参考資料)
「外国人労働者の現状」https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000391311.pdf

しかし、そこには「優秀な外国人」以外をないがしろにする意図が見え隠れする。

○外国人労働者、初の200万人超 人手不足背景に「特定技能」が急伸
2024年1月26日

厚生労働省は26日、国内で働く外国人が昨年10月末時点で前年と比べ12・4%増え、204万8675人だったと発表した。200万人を超えるのは初めて。人手不足を背景に「専門的・技術的分野」の在留資格が11万5955人(24・2%)増え、過去最高の伸びを記録したことが大きい。

https://www.asahi.com/articles/ASS1V3JLDS1VULFA002.htm

彼らと「新卒」と何が違うのか。
スキル修得のメカニズムを作れば良いだけであり、それが人手不足を解消するはずである。
相変わらずの「奴隷制度」にあぐらをかいている限り未来はない。

○「人身取引」批判された技能実習制度 岐阜の縫製業界は悪習を変えた
気づけば「移民大国」 どうなる?日本への労働者
2023年3月27日

 「岐阜の縫製業は、不正件数ばかりでなく、悪質な事案が多かった」。取り締まる岐阜労働基準監督署のある監督官は話す。だが、近年、変化を感じているという。17年に技能実習法が施行され、外国人技能実習機構による監査が厳しくなったことも一つの理由だが、それだけではない。「いまも不正はある。だが、法律を守り、状況を変えようとする経営者や監理団体が現れ、二極化が進んでいる」

https://www.asahi.com/articles/ASR2W636LR2NUTFK01H.html

■つながらない政策

人手不足だという。
いわゆるエッセンシャルワーカー群は国籍など関係なく働けるように下地ができつつあり、彼らの時給も上がり始めている。
技能職、特にIT系は人手不足であるが、今の情報通信技術を駆使すれば国に関係なく仕事は回る。
国籍に関係なく「技術」があり「業務の遂行能力」があれば採用すれば良い。

そのためには、今の外国人に関する政策や企業の人事政策を変えなければならないだろう。
旧態依然とした価値観が様々な問題をいびつな形にしている。

新しい時代に応じた人事制度は、
①仕事ができるかどうかを基軸にする
②長期雇用を前提にはしない
③人材が流動化しても耐えられる制度設計にする
などの視点が必要である。

旧態依然とした静的な人事制度を変える必要がある。

(2024/03/05)