人は自分の信じることしか信じない(マイナス金利解除の混乱)


可謬主義(かびゅうしゅぎ)とは、知識についてのあらゆる主張は原理的には誤りうるという哲学上の学説です。知識が絶対に確実であることは不可能であるとまで論ずる可謬主義者たちもいます。
https://www.weblio.jp/content/%E5%8F%AF%E8%AC%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9

人は自分が信じたいというものしか目を留めない。
それは「真理」から目を背ける行為である。

■賃金と物価の好循環のウソ

○日銀 マイナス金利の解除を決断 好循環の実現は【経済コラム】
2024年3月22日 18時44分

ついに日銀が決断した。19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決めたのだ。実に17年ぶりの利上げとなる。判断の理由として日銀が挙げたのが、賃金と物価の好循環だ。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240322/k10014399091000.html

実質の賃金上昇がマイナスであることは各種の報道から明らかであろう。今年度の春闘で賃上げが実現したとしてもこれまでのの物価上昇をないものとしては考えられず、来年以降の賃上げも必須となる。

しかし、その賃上げは企業の業績向上の結果かと云えば疑問符がつく。単に2024年問題の副作用としての「人手不足パニック」の結果だと思っている。仮に、十分な原資があると言うならば、いままでそれを人件費に充ててこなかったということは社員に対する不実であり、そんな会社に永くとどまる理由はない。金の切れ目が縁の切れ目につながるリスクも考えておく必要がある。

景気を示す指標には様々なものがある。「賃金と物価の好循環」というならば、こうした指標がどのように変化するのかを指し示す必要がある。そうでなければ“感覚的”な評価で恣意的な判断をせざるを得ない。日銀の短観を見ても楽観視できる状況にはない。

■目標値を定めない弊害

安倍政権の頃からの傾向であるが、政策の成功を測る指標をあらかじめ設定しておかず、結果として都合の良い数字を並べて「自画自賛の成功」歌っている。株高は適正水準を設定していないし、物価上昇率も2%と言う数字しか出していない。失業率もそれほど変わっていないの下がっていると言い張る。しかしそれらは最初の政策設定時には何も触れられていない。

あらかじめ成功の水準を決めなければ、都合の良い結果だけを見て「成功」と自画自賛するのは卑怯である。

○マイナス金利解除は「経済」3連呼の首相の成果? 「成長と賃上げの好循環」回り始めたか
2024/3/19

日銀は19日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた。連合が15日に公表した平均賃上げ率が33年ぶりの高水準となる5・28%となったことなどが判断理由とみられるが、構造的な賃上げの実現は岸田文雄首相の最重要政策でもあった。

https://www.sankei.com/article/20240319-LOJN3KA645FJNPHCLB7AD6ENJQ/

あらかじめ賃金アップの率を設定していないのであれば、それが4%であろうと6%であろうと成功と云うだろう。マイナス金利が市場にお金を巡らせる政策のはずなのに設備投資にまわらず金融商品にまわってしまった現状も「株高」を誇る結果になる。

それに対して異を唱える下記の記事文参考にして欲しい。

○日銀、マイナス金利を解除 : バズーカ空振りをごまかし続けた10年
2024.03.19
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g02387/

■見方を変える様々な記事/都合の良い見方しかしないのは皆である

政府は自画自賛だろうが不安を懸念する記事や手のひらを返すような記事も見る。

○今の日本経済は「利上げ」に耐えられる? 物価高で貯金ジリ貧の家計、資金繰りに苦しむ中小企業
2024年3月20日

 日銀がマイナス金利の解除を決め、ようやく正常化へと踏み出した。長すぎた大規模金融緩和がもたらした超円安は海外で稼ぐ大企業の追い風となり、今春闘でも大手の高い賃上げ率を引き出した。一方で、長引く物価高の一因となり家計に深い傷痕を残した。日銀は次の利上げを模索するが、判断を誤れば、景気に水を差す危うさをはらむ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/316111

○鈴木財務相「デフレ脱却ではない」 日銀のマイナス金利解除で
2024年03月19日

 鈴木俊一財務相は19日、日銀がマイナス金利政策を解除したことに関して「今回の政策変更をもってデフレ脱却にはならない」との認識を示した。鈴木氏は日銀の金融政策変更と政府のデフレ脱却宣言は「別物だ」と指摘し、「いろいろな指標を総合的に判断して決めなければならない」と述べた。国会内で記者団に語った。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031901005

景気を判断する様々な統計資料がある。
それらは経済を見る多様な側面の内の一つである。
しかし、「自分たちの政策は成功である」と云うことに囚われている人々は自分の都合の良い数字にしか興味を持たない。

人は自分が信じたいと思う数字にしか目を向けない。
人が愚かななのは、それが正しいと思い込む心理に気がつかないことだ。

(2024/03/23)