世間に転がる意味不明:取り残される中小企業【5】浮かれる大企業、追い込まれる中小企業(賃金格差が出ることの懸念)


■懸念される中小と大企業の格差

2024年の春闘は賃上げの話題で盛り上がっている。

○春闘の賃上げ率、2回目集計も5・25%と高水準…中小は4・50%
2024/03/22

大手に続き、中小企業の交渉が始まっている。組合員数300人未満の企業の賃上げ率は1・11ポイント増の4・50%だった。初回集計の4・42%よりもわずかに上昇している。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240322-OYT1T50125

多いところでは10%前後の昇給率と言われている。特にIT系などの「特別な人材」が必要な企業では特に顕著である。

○ソニーG、主任級で最大5万円賃上げ 初任給は1万円上げ  賃上げ2024
2024年3月21日

ソニーグループは21日、2024年度からソニーG本体と傘下の事業会社2社で社員の賃金水準を引き上げることを明らかにした。主任級の一般社員の場合、最大で月5万円超上がる。賃上げ水準は23年度並となる。新入社員の初任給も現在より1万円引き上げる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC214930R20C24A3000000/

とはいえ、全ての企業が同じような業績を上げているわけでもなく、成長戦略も異なり、相変わらずの下請けへのリスクの押しつけがはびこる以上、強者と弱者の差は出てくることは自明のことであろう。

それは、下記の様な記事ニュースでもうかがい知れる。

○賃上げ率で懸念される大手と中小の格差拡大、価格転嫁は進するか
2024年03月22日

大手企業で相次ぐ高水準の賃上げが中小企業にどこまで波及するか―。先行きは予断を許さない。連合がまとめた2024年春季労使交渉(春闘)の初回集計では中小の賃上げ率は大手の5%超(定期昇給相当込み)に迫る4%台(同)だった。ただ、これは最終集計に反映される中小組合員の1割程度に過ぎず、勢いを維持できるかは価格転嫁による収益改善を経営側が見通せるかがカギとなる。

https://newswitch.jp/p/40952

それは、いくらお偉いさんが「なんとかしなくては」と云ったところで変わるものではない。

○中小の賃上げ、「日本経済の正念場」 日商会頭らと意見交換―斎藤経産相
2024年03月21日

 斎藤健経済産業相は21日、東京都内で日本商工会議所の小林健会頭らと意見交換した。斎藤氏は連合発表の2024年春闘賃上げ率が33年ぶりの高水準となったことに言及した上で、「中小企業への賃上げ交渉が本格化するこれからが日本経済の正念場だ」と強調。官民で中小企業の賃上げを後押ししていくことを確認した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024032101173

■無い袖を振ろうとしない

社員は組合がないので我が社が賃上げしないのだと思わないこと。
社長は賃上げしないと無能だと社員に馬鹿にされるかもしれないと云うことを気にしないこと。
無い袖は振れないのだと皆が共有することが基本である。

かつて経済成長が高い時代、賃金格差が生じていたがすぐに解消できない中で「キャッチアップ」をすることを標榜して、目標とする賃金水準になるように毎年の賃上げ率の目標を設定して努力していた会社がある。そこで働く人々は、会社の努力を評価し一丸となって仕事に向かっていた。皆で成長を実感できていた。

今日、世間の動向は賃上げに動いているが、横並びの賃上げ競争は目標値があるわけではなく強迫観念で動いている。そのなかで賃上げ原資もないのに「賃金アップ」は会社を傾きかねない。とはいえ「何もしない」経営者では信頼を得ることはできない。

経営者は、未来を予測できる何かを示さなければならない。どのぐらいの売上になり、利益率がどの程度であれば、どの程度の賃金水準を達成できるのか。こうしたことを説明する義務がある。

「儲かったら」などという言葉は慎重にするべきである。儲かっても賃金アップをしてこなかった自分を反省しなければならない。それは、単一の指標だけではなく、物語も一緒に紡ぐべきである。

(2024/04/03)