最低賃金の記事を考える

私自身のターゲットしている領域には「報酬制度」「戦略」などがある。
こうした視点でいろいろな記事を眺めているのだが、あまり世間的には深掘りしている記事がない。
別に私も深掘りできているわけではないのだが、少し感じることもあるので整理しておく。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA136230T10C21A7000000/
最低賃金3%上げ、全国平均930円 28円増を審議会決定

中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円とすると決めた。28円の引き上げ額は02年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大で、上げ幅は3.1%だった。ただ、主要先進国ではなお低い水準にとどまる。デジタル化などで生産性向上を進める必要がある。(記事引用)

この取り組みは政府が進めている「成長戦略会議」と整合するもので、例えば、令和3年6月18日付の「成長戦略実行計画」の下記の下りと対比できる。

第1章 新たな日常に向けた成長戦略の考え方
1.成長と分配の好循環の実現に向けた労働生産性・労働参加率の向上と賃金上昇
経済成長率は、「労働参加率」の伸び率と「労働生産性」の伸び率を合計したものである。
2010年から2019年までの2010年代の日本の経済成長率は1.1%/年であり、G7諸国の中では、米国(1.5%/年)、ドイツ(1.3%/年)、英国(1.2%/年)に次ぐ水準である。
これを分解すると、労働参加率の伸び率は0.8%/年であり、G7諸国の中では最も高い。これは、2010年代に女性や高齢者の就業が拡大したためである。日本の労働参加率は、絶対値で見ても53.2%とG7諸国の中で最も高い。
問題は労働生産性である。労働生産性の伸び率は0.3%/年であり、G7諸国の中ではイタリアに次いで低い。日本の労働生産性は、絶対値で見ても7.5万ドルとG7諸国の中で最も低い。
経済成長率を上昇させるためには、労働参加率と労働生産性の向上が必要である。
特に、労働生産性の上昇は労働者の実質賃金の上昇と密接な関係があり、実質賃金を引き上げていくためにも、その改善が必要である。その鍵はイノベーションである。
成長戦略によって労働生産性を向上させ、その成果を働く人に賃金の形で分配し、労働分配率を向上させることで、国民の所得水準を持続的に向上させる。これにより、需要の拡大を通じた成長を図り、成長と分配の好循環を実現する。
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/ap2021.pdf)より引用

最低賃金に関して取り上げられると、中小企業には支払い能力がなく経営を圧迫するという議論が出てくるが、問題をすり替えている。

賃金とは何かという命題は置いておいても、支払われる給与で生活が維持できないというのは基本的な人権から考えても理不尽なことだ。したがって、最低限の賃金を支払うのは経営者の責務であり、安い労働賃金でしか維持できない企業なら退場してほしい。

問題なのは、まずは働いている人が働いているにふさわしい賃金を受け取ることを確実にした上で、働く場があまねく多くの人に与えられるべきだということだ。そのためのもう一つの施策は、地域格差をなくすことだと思う。都会に出てくれば高い賃金があると思えば限られた雇用に群がることになる。地域間格差をなくし地方に雇用のチャンスを生み出すイノベーションを起こすことが次の課題になる。

それを放置すれば、ウーバーイーツのように賃金に対して社会的責任を果たしているのかわからないビジネスモデルが出てきて公平性をゆがめる事態になると私は考えている。

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