世間に転がる意味不明:虚妄の賃上げ狂想曲2024【2】(賃上げの原資はどこにあるのか)


■威勢の良い話(満額回答もしくはそれ以上)

2024年春。賃上げのニュースが毎日の様に報道されている。
いくつかの記事を引用する。

○トヨタ、4年連続満額回答 賃上げ最大2万8440円 賃上げ2024
2024年3月13日

トヨタ自動車は13日、2024年の春季労使交渉で労働組合の要求に満額回答した。職種や階級ごとに異なるが、最大で月2万8440円の賃上げとなる。賃上げ原資の規模は1999年以降で過去最高となる。製造業で課題となる人手不足や産業の魅力を高めることを狙う。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD131EG0T10C24A3000000/

○日本製鉄、賃上げ率14% 要求上回る3万5000円で回答
2024年3月13日

日本製鉄は13日、労働組合に対し2024年春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善で月3万5000円と回答した。労組要求の月3万円を上回った。定期昇給などを含めた賃上げ率は14.2%になる。

回答の狙いについて、日鉄は「今後の生産性向上を前提とした、将来に向けた人への投資だ」と説明する。初任給も引き上げ、大学学部卒で4万1000円増の26万5000円、高卒で3万円増の21万円とする。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC131WN0T10C24A3000000/

○王将フードサービス、平均11.5%賃上げ
2024年03月13日

 王将フードサービスは13日、ベースアップや定期昇給によって社員の月例給与を過去最高の1人当たり平均3万9162円(賃上げ率約11.5%)引き上げると発表した。組合要求2万220円を大幅に上回る内容で、新卒初任給(大卒)も5万2000円引き上げの27万8500円とする。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031300635

およそ賃上げをしない企業がないかのような勢いである。

■無い袖は振れない

しかし、こうした賃上げは「企業力」とは関係なく、人材の買い負けを引き起こすことを避けるための施策である。そして、それは明らかに不自然である。

○中小企業でも広がる賃上げ、実態は「人材確保のためやむなく」 業績を反映せず
令和6年春闘
2024/3/13

令和6年春闘では中小企業でも賃上げ機運は高まっている。日本商工会議所が2月に公表した中小企業の賃上げ動向調査の結果によると、6年度に賃上げを予定する企業は61・3%と前年度より3・1ポイント上回った。だが賃上げ予定企業の60・3%は、業績が改善したわけではないが人手の確保につなげるための「防衛的賃上げ」としている。

https://www.sankei.com/article/20240313-6QEITWG7VVLBPH7ZJPNSQKYKOE/

40年ほど前に私が社会人になってからしばらくたった頃までは、賃上げ率は10%に近かったのではないだろうか?それは、企業は成長の余地があり、実際に規模の拡大が起きていたからだ。

現在は状況が全く違う。企業は人手がいれば成長できるわけではなく、事業の再編に伴い人材の削減も行なっている。

○オムロンが2千名の人員削減 中国減速で今期の純利益は98%減の見通し
2024-03-14

電子部品大手のオムロンが国内外で2千名の人員削減に踏み切る。中国経済の成長鈍化やサプライチェーン(供給網)の混乱など、事業環境が想定以上に悪化。大幅な業績悪化となり、収益・成長基盤の再構築に取り組むことになった。

社長の辻永順太氏は「現在の制御機器事業は、中国市場の投資需要に依存している状況」との認識を示した上で、「今後、変化の激しい事業への耐性を強化するために、特定業界や特定エリアに依存しない事業構造の構築に向けたアクションを加速していく」と話す。

https://www.zaikai.jp/articles/detail/3762

賃金上昇で浮かれているのは正しくない。
企業は優秀な人材以外は求めていない。したがって、バブルの頃のような囲い込みのための浮かれたイベントなども発生しないだろう。

企業に財務的な余裕はない。
そうであれば「昇級原資」「採用原資」はどこから来るのかを冷静に考えなければならない。手っ取り早い方法は以下の二つである。

①高コストの社員を解雇する(リストラ、早期退職)
②利益率を犠牲にする

大手は①の施策をとるだろう。中小企業が②の施策をとればいずれ破綻する。

先行きが明るいとは思えないのは私だけだろうか?

(2024/03/17)