「ひとり起業」の強化書

「ひとり起業」の強化書

 

 

 

 

 

 

 

 

残念なことに、成果を上げられない起業家の多くが「自分の強みが明らかになっていない状態」で事業を行っているのです。

で始まる本書は、天田幸宏さんが3000人以上の起業家との対話の中で見つけた普遍的なことをまとめた本になっている。

天田さんの経験と随所にドラッガーの言葉を引用して、彼が見いだした成功している起業家の共通点の7つについてまとめられている。

①「強み」に基づいた事業を選択していること
②明確な「コンセプト」を打ち出していること
③変化する「顧客ニーズ」にきちんと応えていること
④「独自の市場」を気づいて価格競争に巻き込まれないこと
⑤「理想の顧客」をつかんでいること
⑥顧客を巻き込んだ[コミュニティ」があること
⑦魅力あふれる「ストーリー」を語ること

天田さんとお会いしたのは、今の会社を起業して数年たった頃だろうか。本書を読むと、当時はまだリクルートの「アントレ」の編集者だった時代だろう。熱量を感じる方だったのを覚えている。

その後も何度かお会いしているが、本書に感じられるような誠実さをお持ちの方である。
確実に夢に向かっているのだとうらやましくもある。

私はと言えば、30歳の頃にひとりで仕事を始め、20年前から自分の会社を起業しているものの、とても成果が上げられているとは言えない状況が続いている。この本で示している7つのことがどれも実現できていないのだから当たり前と云えば当たり前だ。

さた、この書籍。奇をてらっているわけではなく、戦略とは何か、価値とは何かと云った普遍的なことに対し真っ正面に議論がされている。

今うまくいっていない起業家もこれから「自分の働き方」を求めて行く人にも読んでもらいたい。当たり前のことをしっかりやることの大切さに気がつくだろう。

灯台のように自分の事業のチェックポイントにしても良いのではないかと思う。

労働法入門

◇ 水町勇一郎「労働法入門」新版 岩波新書

本屋に行く楽しみの一つとして出会いがある。
棚を眺めながら、その時々に関心のあることを理解するための本を見つけることがある。

「労働法入門」もそのうちの一つだ。

直接の関心ごとは「育休後の転勤問題は適法なのか」という、某化学系の会社カ●カの話題だ。専門家ではないので正解かどうかはわからないが、転勤が何かしらの従業員に対しての負担になるのであれば、
①従業員との間での契約上の合意事項はあるのか
②事前に十分な合意形成があったのか
③手続きとして適正か
ということが問題になるだろうということは想像できる。

上記の、カ●カの対応は記事を見る限り「アウト!」に近い気がする。

さて、こうしたことは法律上どうだったのだろうかと想い読んでみた。
結論から言えば、よくわからない。最終的には裁判所に行った方がよさそうだという身もふたもない結論だ。

それでも、多くの示唆に富んだ内容だったので、マネジメントにかかわるは目を通しておいて損はない

この本の出だしは、「旅行が趣味で長期旅行を計画していたが直前になって、業務が佳境なので休暇の中止を言われた社員」と「仕事が生きがいなのにプロジェクトが中止になり自宅待機を命じられた社員」を題材に「働くとは何か」「それは法律上どうなのか」といった問題意識から、いろいろな国での考え方を交えて描かれている。

法律上は、労働基準法、労働契約法、労働組合法を中心に書かれており、それぞれ労働者の定義が異なることを示しており、それぞれ働くことに対しての保護の在り方が異なることを知った。

専門書ではないので、全体の俯瞰ができる程度ではあるが、それでもいろいろな判例が示されており、いくつかの疑問に答えてくれる。

印象的であったのは、最後の章では「労働紛争」について取り上げていることだ。
・労働法があるにもかかわらず、実際の職場では、労働の強制やハラスメントなど見逃すことができない多くの事柄が起きている
・こうした紛争解決には様々な相談窓口(最終的には裁判所)があるが、欧米に比べて日本ではほとんど活用されていない
・長期雇用などや家族主義などの文化感が背景にあり紛争を好まない心理的なものもあるかもしれない
・しかし、こうしたことを放置することは、他の人へのハラスメントなどにも目をつむることになり、個々人の自由を脅かし、会社にとっても社会にとっても好ましくない
としている。

詳細は、本書にゆだねるが、思いのほか読みやすかった。
上記の背景には、「無知」も含まれている。
マネジメントにかかる人には読んでほしい。

イノベーションの原理

ドラッガー「プロフェッショナルの条件」
第6章 イノベーションの原理と方法

「奇跡は再現できない」で始まるこの章では天才的なひらめきを対象としない。
あくまでもマネジメントの立場からイノベーションを見る試みを行っている。

イノベーションは計画的に生み出せないとしても、生み出すための活動の原理はある。こうした信念がドラッガーにはあるのだろう。

彼は言う。
「イノベーションの方法として提示し、論じるに値するのは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけである。」

さて、この章では何が書いてあるんだろう。
少し整理してみる。

1.なすべきこと

(1)機会を分析することから始めること
下記の7つの機会について体系的に分析することが求められる。
①予期せぬこと
②ギャップ
③ニーズ
④構造の変化
⑤人口の変化
⑥認識の変化
⑦新知識の獲得

(2)イノベーションは知覚的な認識である。
外に出て見て聞くことをしなければならない。知覚を持って彼らの期待、価値、ニーズを知ることだ。

参考:ジョブ理論や顧客インサイトと一致する

(3)焦点を絞り単純な物にすること
新しい物は必ず問題を生じる。複雑だと、直すことも調整することもできない。

参考:大きく考え、小さくつくり、学習するという従来の知見と一致する

(4)小さくスタートしなければならない
イノベーションが、最初の段階からほぼ正しいという程度以上のものであることはまれである。変更がきくのは規模が小さく、人材や資金が少ないときだけである。

(5)最初からトップの座をねらわなければならない
大事業にしろといっているわけではない。そもそもイノベーションが事業になるかどうかなどわからない。
しかし起業家としての戦略は、何らかの意味において、トップの座を狙う物でなければならない。

参考:思いつきでイノベーションが生まれるわけではない。最初から未来を約束した物はない。注意深く、まずはやってみて試行錯誤を繰り返すことのみで実現できる。

2.なすべきでないこと

(1)凝りすぎてはならない
普通の人が利用できる物でなければならない。
組み立て方や使い方のいずれについても凝りすぎたイノベーションは、ほとんど確実に失敗する。

参考:すべきことの(3)に対応

(2)多角化してはならない
散漫になってはいけない。一度に多くのことを行おうとしてはならない。

(3)未来のためのイノベーションを行おうとしてはならない
イノベーションには長いリードタイムが伴うときがある。しかし、今日の医学上のニーズが存在しない医薬品の開発研究に着手する製薬会社はない。

参考:未来のに起きそうな問題ではなく今の問題に着目すること。すべきことの(2)に対応

3.成功するイノベーションの条件

(1)イノベーションは集中でなければならない
※自分の専門分野に集中することの意

(2)イノベーションは強みを基礎としなければならない
「自分や自分の会社に最も適した機会はどれか。自分が最も得意とし実績によって証明済みの能力を生かせる機会は何か」を考えること。

(3)イノベーションは経済や社会の変革を目指さなければならない

参考:結局イノベーションを既存の事業と分ける唯一の特徴はここにある。

(4)イノベーターはリスクを冒さない
イノベーションは、どこまでそのリスクを明らかにし、小さくできるかによって、成功の度合いが決まる。

さて、現在、「イノベーション」を中核としていろいろな人と意見交換をしている。
議論のプラットフォームあるいは知見といった方が良いのだろうか、様々な本に目を通すようにしている。新しい本もあれば、大分前に読んだはずだと思っている本もある。

今回は久しぶりに読んだドラッガーの本から引用した。

社員満足度調査を行う意義

「ハーバードビジネスレビュー 2019年2月号」の特集は「コレクティブインパクト」だ。
コレクティブインパクトに関連して「ソーシャルインベーション」を取り上げているが、その中で、「私」と「仕事」の関係性にも着目している。

その一節を引用する。

1974年のスタッズ・ターケルの名著「仕事(ワーキング)!」に、「すでに労働者にとって仕事の意味は金銭的報酬と並んで重要なことだ」という記述がある。40年たってこの傾向はさらに強まり、最近の調査によると、米国労働者の9割以上の人が、意味のある仕事なら23%生涯賃金が下がっても良いと答えている。

また、この文に続き、下記の一節がある。

また、仕事に意味を感じている人は、仕事満足度が高く、満足度と生産性の高い相関も証明されている。

多くの企業に接する機会があり、業績を上げている組織は社員の積極性が高いことは肌身で感じている。

こうしたことを後押しするように厚生労働省からも、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書 ~企業の雇用管理の経営への効果~」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/0000127988.pdf

が提示されている。

引用すると、

■ 雇用管理改善の取り組みは、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながる
・本調査の分析結果は、雇用管理改善の取組が、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながることを示している
・ただし、それには企業の取組において以下の観点が重要。また、行政の役割も重要である
■経営においては、「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要
・経営方針として「顧客満足度」を重視している企業は多いが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くない
・だが、調査結果は、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いに対して、どちらかだけでなく、両方を追求することの効果が高いことを示している
・経営者は、自社の経営方針を従業員に浸透させることが望ましい
■雇用管理改善に、継続的に取り組むことが大事
・分析結果は、雇用管理改善の取組期間が短い企業よりも、継続的に取り組んでいる企業で、業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いが高いことを示している
・つまり、継続的に取り組むことで雇用管理改善の結果は出る
・ヒアリング調査でも、たとえ効果が明示的でなくとも継続的に取り組むこと、また、計画的に取り組むことの重要性が示唆された

となっている。

弊社が以前行った「eHRM研究会」においても、モチベーションの3要素を提唱したことがある。

1.ふさわしい仕事
個である「私」が仕事を通して「社会」や「未来」にどう向き合うのかのアイデンティティを確立できること。
2.ふさわしい環境
設備や機器などのハードウエア、情報通信などのインフラ、HRM等の制度、社員同士のコミュニケーションの場の提供など、「ふさわしい仕事」をストレス無く行うことができる環境があること。
3.ふさわしい報酬
「ふさわしい仕事」ができたかどうかを確認できること。その成果や過程を見守り、ふさわしいフィードバックを行い、仕事への意欲を高めること。必ずしも金銭的報酬にはとどまらない。

当時のいろいろな議論を踏まえても、それほど的外れではないだろう。
社員満足度が業績を左右するのであれば、こうしたことを配慮することは戦略上の重要な位置づけにすべきだ。

直接の対比はされないが、当社で提供している「SRO組織生産性診断」もこれにフォーカスしていることがわかる。

『善とは一言に言えば人格の実現である』

『善とは一言に言えば人格の実現である』

西田幾多郎の「善の研究」からの引用です。

昨年、いろいろな人との話やセミナー、書籍などに接する中で、その人がおそらくは専門家として持っている常識を当然のように持ち出していることに違和感を持ち、その中で使われている諸々の考え方を確認するために、いろいろな本を読んでいる。

西田幾多郎の「善の研究」もその一つだ。
この本は、かなり昔に一読して理解できず、その後も何度かチャレンジしているがやはり難しい。

『我々は意識現象と物体現象と二種の経験的事実があるように考えているが、その実はただ一種あるのみである。すなわち意識現象あるのみである。物体現象というのはその中で各人に共通で不変的関係を有するものを抽象したに過ぎない。』

この一文だけを読んでしまうと、唯物史観ではなく観念論を重視しているように見えるが、それほど単純な話ではない。私の理解では、意識現象と物体現象は切り離されているのではなく、どちらを先に考えるべきかの指針を示したに過ぎないと考えている。

結局、西田哲学というのは「認識」というものをどう捉えているのかと言うことを俎上にあげているのではないかと思う。一緒に考えなければいけないカテゴリーに「弁証法」や「形而上学」の考え方もある。こうしてみると、西田哲学は、物事をどう見るのかの一つの方向性を示しているとも言える。

昨年お会いした人の中には常識としていろいろな言葉を使う。しかし元々の意味は何であったのかを自ら確認しているのだろうか。
「オープンイノベーション」をチェスブローの本までたどったのか、「バランスドスコアカード」をキャプランまでたどったのか。どうしても疑問がでてしまう。

一方で、数理科学やシステムを少しでもかじったことがあれば当然知っている「CMMI」や「正規分布」、「Input-Process-Output」を”あなたしか知らない言葉は使わないでください”と一蹴する。

「これは一体何だろう」と考える習慣を放棄して、皆が「Yes」と言うから、偉い先生が言うからと言うことで無条件に受け入れて行くことは危険だと感じる。

冒頭の『善とは一言に言えば人格の実現である』はそのまま受け入れないにしても、では「企業にとっての善を実現する、法人としての人格」とは何か?

社会的な責任などでSDGs等に目を向けるのは良いとしても、それはなぜかと言うことも考えないと、単に「自分に利するから」という身も蓋もない”人格”の反映になりかねない。

参考:

経営者の困りごと(社員は辞めてしまう)

先日、ある会合での雑談の中で離職率の話をしていたときに、「今時の若い人はすぐに辞めてしまうのかな」という話をされた。

離職率、特に3年内離職率はしめす厚生労働省のデータを見る限りここ10年以上変化はない。マクロ的には変化していない。

一方で、いろいろな報道を見るとジョブのミスマッチなどで若者の早期退職が取り上げられている。
こうしたことを、マクロ経済などの視点で見ると以下の点に注意しなくてはならない。

・個別事例を探して取り上げても、それをもって汎用化できない。個別事例はどこまで行っても個別事例である。
・潜在的な離職率は存在する。失業率についても同じことが言えるのだが、政策を駆使しても失業率はゼロにはできない。労働の流動性を考えると一定程度は発生する。

では、個別企業が抱える社員の離職率は仕方の無いことかと言えばそうではない。
実際に、3年内離職率を低く抑えている会社もあれば、どうしても高くなってしまう会社もある。

3年内離職率を下げる方法は

① 採用時に組織風土にあわない社員はとらない。
よく採用基準で「能力」という言葉を使うが、能力自体をはじめから持っていることを期待しない。学習意欲があればなんとかなる。育成の手間を惜しんで最初からできる人を望んでも仕方ない。
かつて「優秀な人がほしい」という人事部の人に、「あなたは優秀なんですか?」と投げかけて怒らせたことがある。
結局、社員として必要なのは、意欲とタフさだけではないのか。
その人が「我が社の一員になってくれる」気があればそれでよしとすることも必要だ。

② その人にあった仕事を用意する
経営環境の変化を示す言葉としてVUCAと言う言葉がある。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
を表す言葉だ。こうした不確実性の中で、入社時と同じ仕事が存続する保証はない。
社員がすべき仕事は変わって行く。
社員に適した仕事を用意する必要がある。

一方で、一定の離職率は受け入れないと仕方ないかもしれない。

企業は漫然と労働人口の変化に手をこまねいているわけではない。
変動要因としてのITイノベーションも配慮しなければならない。
人がやらなければ行けない領域を絞り込んでいる。
それを後押ししそうなのが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)だろう。
より専門化した仕事しか残らないかもしれない。

その組織で必要な業務特性が変われば人への要請も変わる。

さて、その時に出たもう一つの話題が「内定辞退」だ。

私自身が就職活動をしていた時期は、いまから40年も前のことなので参考にはならないかもしれないが、そもそも内定を複数保持するというのはあまり発想はなかった。
断るつもりなら最初から内定を辞退する。

ギリギリまで待って「やはり辞めた」というのは想像できない。
だが、今の時代はいろいろ変わったようだ。

東洋経済の「内定辞退が5年前の3倍強!変わる採用戦略」を見ると以下のように記載がある。

2011年卒生と昨年の2016年卒生の調査結果を比べてみると、採用予定者数に対する辞退者数の割合が、5年間で3.4倍にも膨らんでいることがわかっています。
採用予定者数に対する内定者数の割合も5年間で1.6倍となっており、企業がある程度の辞退者を見越して内定を多めに出すスタイルに変わってきていることがわかります。

マイナビの調査データなを見て、簡単に以下のようなモデルを考えてみる。

30人の新卒者に、10人ずつ採用したい会社が3社あるとします。
均等に分ければ、どの会社も10人ずつ採用できます。

ですが、内定辞退を想定して15人に内定を出したとします。
どの会社も優秀な人を選ぶので、同じ人が3社の内定を受けたとします。

内定確保数を平均3社とすると、15人が3社分の内定を受けて、15人は内定を受けられなかったと言うことになります。

さて、こうなると次はどうなるでしょう。
募集している会社に格差があったとすると、新卒採用数は10人、5人、0人となります。
内定を出したのに採用しませんという会社が出てくることにもなります。

あまりに単純化したモデルですが、今の内定システムの欠陥が表現できます。
こうしたことを前提に考えると、一斉採用という仕組みを見直さないと十分な人員確保ができないことになります。

「今時の若い人はすぐに辞めてしまうのかな」という話は結局は、お互いに損得だけで付き合うことは信頼関係を損ないかねません。と言うのが感想です。

閑話休題

参考記事

「1年以内に辞める若者」が続々生まれるワケ
https://toyokeizai.net/articles/-/214707

数字で見る「労働市場の未来」 激減する就業者、変わる雇用
https://www.projectdesign.jp/201901/future-working/005827.php

内定辞退が5年前の3倍強!変わる採用戦略
https://toyokeizai.net/articles/-/127882

2018年卒の内定者の声と内定辞退率から2019年卒の新卒採用について考える
https://saponet.mynavi.jp/column/corp/2018%E5%B9%B4%E5%8D%92%E3%81%AE%E5%86%85%E5%AE%9A%E8%80%85%E3%81%AE%E5%A3%B0%E3%81%A8%E5%86%85%E5%AE%9A%E8%BE%9E%E9%80%80%E7%8E%87%E3%81%8B%E3%82%892019%E5%B9%B4%E5%8D%92%E3%81%AE%E6%96%B0%E5%8D%92/

GDPマイナス 景気の足踏みを長引かせるな

という記事を見た。
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20181114-OYT1T50138.html

GDPが悪化すると良くないという記事もある。
https://president.jp/articles/-/25251

本当だろうか。

なんとなくGDP(国内総生産)の記事を読み飛ばしているが、経営マネジメントを考える立場として、読み飛ばして良い記事なのだろうか。

ということで少し調べてみた。

大雑把な表現だが、GDPは以下の数式で表される。

GDP=消費+投資+政府支出+輸出入

さて、では実際の数字はどのぐらいだろう。
内閣府のホームページで調べることができる。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h28/h28_kaku_top.html

国内総生産(支出側・名目・年度)を見てみよう

グラフにしてみる

グラフにするとわかるのだが、国内総生産はリーマンショック直後は急激に落ち込み、自民党が政権を取ったあたりから回復基調にあることがわかる。
2009年には490兆円であったものが2016年には540兆円まで回復している。
その内訳を見ると、民間最終消費支出が270兆円であったものが300兆円に増えている一方総資本形成が147兆円から一時期は100兆円まで下がり、2016年でも127兆円までしか回復していない。民間の設備投資などが進んでいないことがわかる。
これをカバーしているのが政府最終消費支出であり、1994年に76兆円から106兆円まで増えていることがわかる。

一般にGDPが伸張しないということは経済活動が停滞し豊かな暮らしが維持できなくなるということが指摘されている。
経済成長が止まれば、国内の企業競争力も弱まり、結果として財政上も望ましい状態ではなくなる。
単純にGDPをあげるだけであれば、公共投資を増やせば良いのだがこれでは対処療法的にしかならない。

マクロ経済学的に見れば、長期的成長を担保するものは生産性向上と言われている。
生産性向上を実現するためには
・物的資本の増加(最先端設備の拡充)
・人的資本の増加(高度な専門技術者の教育)
・技術の進歩
が必要になる。

こうしてみると、政府が行おうとしている「働き方改革」「入管法の改正」や、先端設備の導入に関する補助金による支援なども目指している方向性がわかる、

設備投資を進めるためには金融機関から企業に回るお金を増やして行くか、市場にお金が回る施策を平行して勧めざるを得ないだろう。

当然金融機関は、スルガ銀行のようにザルの審査で貸すことはできないが貸し出し機会を狙っていると考えられる。

老朽化施設の代替という視点ではなく、市場拡大という視点で最先端設備を入れるという視点では周囲の協力を得易いであろう。

また、人的資本の確立も重要になる
リストラという選択肢ではなく、教育と再配置を確り考えるべきだろう。

(参考) GDPと経済政策については下記参照

 

ガバナンスを人任せにすることの危険

選挙に行ってきた。

今日(2018/10/28)は草加市長および草加市議員の選挙と言うことで投票に行ってきた。最終的な投票率はわからないがかなり低くなるだろう。

 

有権者の一部の意向しか反映されないのではないかという危惧がある。
もちろん、多数で選んだからと言って最善とは限らないが、監視するメカニズムが働かなくなり、一部の利益誘導のための政治になってしまうことも怖い。

投票率の低さを危惧する記事もある。

こうした記事は偏っているという主張もあるだろうが、最近経済学に関する本を読んでいた中で、やはり政治を好きにさせておくとろくなことが無いのだろうなと言う記載を見た。

ミクロ経済学の本のまとめとして以下が記載されている。

①市場は、限られた資源を配分するための非常によくで来た仕組みである。生産性アップや技術革新、資源の節約、消費者のニーズの充足と言った目的が効果的に実現され、生活水準の向上につながって行く。

一方で

②市場の仕組みはうまくいかないときもある。独占や不完全競争、公害に代表される負の外部性、技術の停滞や公共財の不足、貧困、格差、情報の非対称による弊害、監視のコントロールの難しさなど。

これを支えるものとして

③政府は市場の問題を解決する上で大事な役割を担っている。しかし、政府も不完全な存在であり、問題をかえって大きくしてしまうことがある。

スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 ミクロ編

単に正義を振りかざしても問題は解決しないかもしれないが、無関心の行くつく先は取り返しの困難な資源の無駄遣いに陥りかねない。

身近な問題として、昨年、団地の理事長になる羽目になった状況が思い起こさせられる。

ガバナンスを人任せにすると取り返しがつかないことになりかねない。
現在起きている企業の不祥事も同じ根っこにないだろうか。

失業率を減らすことの意味

「マクロ経済学入門 マクロ編」ティモシー・テイラー著

での失業率を減らすことは、社会的コストの低減を意味するとしている。
その中での記述に以下のようなくだりがある。

 長い目で見れば、賃金上昇の原動力となるのは生産性の向上です。労働者の平均的な生産性が高くなれば、労働市場全体の賃金も上がってくるはずです。
 そして生産性を上げるために必要なのは、教育や設備投資、それに技術の革新です。

 技術革新への対応と教育はマクロ的な視点だけでなく企業にとっても重要な視点だろう。

 この記述に目が向いたのは、下記のニュースを目にしたからだ。

富士通、配置転換5000人規模 ITサービス注力で
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3700804026102018TJC000/

冒頭に下記の記述がある。

富士通は26日、2020年度をめどにグループ全体で5000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。非中核と位置付ける製造分野の切り離しも進め、事業の選択と集中を加速する。

都内で開いた経営戦略説明会で発表した。対象となる間接部門にはグループ全体で約2万人の社員がいる。研修を通じて営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種への転換を促す。グループ会社の間接機能を富士通本体へ集約することも検討する。

経営方針進捗レビュー説明会(2018年10月26日実施)の資料でも
http://pr.fujitsu.com/jp/ir/library/presentation/pdf/20181026-03.pdf

上記を確認できる。
抜粋すると下記の通り

成長に向けたリソースシフト
■ 5,000名規模のリソースシフトによる成長領域の増強と間接/支援機能の効率化、適正化
 ○コーポレートファンクション等の業務ノウハウを活用した営業、SE、業務コンサル、SAPコンサル人材等の育成
 ○グループ会社の間接/支援機能を富士通本体へ集約
 ○サービスカンパニーに相応しい人材投資の拡充
 ○グループ内外へのキャリアチェンジ、転進を支援
■ 製造体制は、事業規模・業態に応じたフォーメーションの見直しを進める

事業環境が変化する中で、今のヒューマンリソースの再配分をしないと対応できないと言うことなのだろう。

さて、こうした記事は素直に読めなくなってきている。

「企業は再配置とリストラのどちらを望むのだろう」

5,000人の再配置というのは想像がつかない。
最初に勤めていた会社でも1,000人程度だ。
ちょっとした会社を複数再構築するようなものだ。

しかも、事務系の人間を技術系の仕事に就かせることも出てくるだろう。
同じ技術系であっても、かつてIT系でもあったが、COBOLとJavaでは知識基盤が異なるので再配置ができなかった事例も知っている。

新しい分野での技術教育は必要になる。
また教育したからと言ってすぐにパフォーマンスが出るわけではない。

ひとりあたりの教育コストと採用コストが天秤にかけられる。
ただし、従業員の組織に対するロイヤリティも考える必要がある。

さて、人材が市場にあふれ採用コストがかからない場合には、リストラして、必要なスキルを持った人を確保した方が良いかもしれない。流動性が高い場合には自然とそうなるだろう。
一方で、いわゆる売り手市場の場合には、必要とした人材がなかなか集まらないで採用コストだけ高止まりするという状況になる。みすみすリストラして人材を流出させるのは得策ではない。
優秀な人から辞めて行くと言うことも忘れてはならない。

経験的に、事業の縮小をするのでリストラするというのは経営者が無能であることの証左と言われることを見聞きする。

以下に人材に対して手を打って生産性向上や技術革新への対応ができるのかが企業の競争力向上につながる。

さて、富士通の取り組み。3,4年後に振り返ることはできるだろうか。

情報の非対称に関する問題:賃金シミュレーションを考える上での課題

お互いが保有している情報が同じで無いことを情報の非対称と言う。こうしたことは、相互コミュニケーションの難しさを誘発する。その一例として、自分は正当に評価されてないと感じ、賃金というのは、どこまで行っても何かしらの不満を相互にもたらします。

先日、経済学の本を読んでいたら、情報の非対称と絡めて、下記の文章を見た。

 雇用関係で言えば、雇われた側の仕事ぶりがはっきり見えるとき、雇い主としてお金を支払うことができます。
 たとえば、自動車のフロントガラスを取り付ける仕事ならきちんと取り付けていれば合格です。果物を摘み取る仕事なら、摘み取った量に応じて評価できます。
 しかし、そうした評価をするのが難しい仕事のたくさんあります。
 成果が目に見えにくい仕事のことです。
 たとえば、基礎的な研究をしている科学者や、ファーストフードのレジ係を、何に基づいて評価すれば良いのでしょうか。彼らと同僚の働きぶりを比較するとき、どこを見て優劣をつければいいのでしょうか。また、本人の努力だけではどうしようもない問題については、どう扱うべきでしょうか。機械が故障したり、吹雪になったりして売上げが落ち込んだら、その人の評価を下げても良いのでしょうか。
 こうした問題を客観的に判断することは困難です。そのためほとんどの場合、授業院の宝珠を決定するときには、雇い主の主観が入ってきます。

経済学入門 ティモシー・テイラー かんき出版 P241

 

作業内容と結果が対で対比できるものは情報の非対称が起きないが、成果がすぐに出ない仕事や仕事ぶりと結果がいつも対とは限らない仕事では、働いている人と雇用する側では情報に質も量も異なる。その結果、情報が非対称になり、報酬に対しての納得度が下がる。

それでも従来の一律の賃金制でもよかったのは大多数が情報の対称性で評価できる仕事だったからだ。いわゆるブルーカラーの仕事を時間単価で計算できるからだ。

ただし、AIやロボティクスの発達で単純作業は機会がやることになり、上記にもあるように、成果がすぐに把握できない業務、外的要因で結果が左右する業務がますます増えて行くだろう。

経済学の発想から言えば、従業員の賃金はその従業員が生み出した価値に相応して支払われることになる。従って、個々人の働きを情報化する必要がある。

しかし、個々人の成果などというものを正確に把握することはできない。
現在、多くの企業で行われている報酬制度とリンクさせている目標管理制度は評価者の主観に左右されている現実を見ると容易ではないだろう。

将来的には、AI使った個人別報酬システムを作る時代がやってくるだろう。
しかし、当面は複数の報酬システムを構築して、これを個々人に当てはめることが実際的だろう。

その時の報酬システムを検証するためのツールとして、当社が用意している賃金シミュレーションシステムが有効になると考えている。