70歳定年延長をあざ笑う「早期退職」の拡大

70歳定年延長をあざ笑う「早期退職」の拡大

と、すこし過激なトーンで始まったのだが、本音に近い。
私自身は、自分の働き方は自分で決めるべきであり、それが自分の意思であれば同じ職業を70歳まで続けることには反対ではない。ただし、他に選択肢がなくて同じ会社にいることを余儀なくさせられているのであれば不幸だと思っている。

「40歳定年制」という書籍が発行されたのは2013年であり、すでに7年を過ぎている。内容は陳腐化しているかもしれないが、その意図自体はまだ新鮮であり、また何も実現していない世界観だ。

人生を、自分なりに納得の行くモノにするためには常に自分の武器である知識や技術、経験による知的財産を殖やして行かなくてはならない。

経験的には、15年ぐらいをサイクルとして計画的なキャリアアップをするべきであり、目標をさだめ、成果を出すための時間を創出する必要がある。企業も、それに対し投資をし、より高いパフォーマンスを出す社員で会社を固めるべきだろう。

最初のサイクルは、22歳に入社したとして、その3年後を起点とし、40歳、55歳、70歳がターニングポイントとなる。

最初の収穫期は40歳だろう。この時点で高いパフォーマンスを生み出す様にキャリアプランを作成しなければならない。定年という概念をなくすためにも必須の取り組みのはずだ。

ところが、最近のニュースを見るとこれに逆行する事例が目をひく。

【希望退職者の募集】年明け後も拡大|“渦中”の東芝機械は300人募集
https://maonline.jp/articles/voluntary_retirement202002

『2020年に入り、第1号となったのは経営再建中の曙ブレーキ工業だ(1月16日発表)。募集人数は200人で、曙ブレーキ本体の全従業員のほぼ2割にあたる。対象者は2020年1月1日時点で①勤続3年以上で40歳以上の正社員②60歳以上の再雇用契約社員③勤続3年以上の契約社員。』

サッポロで早期退職募集 45歳以上、特別金上乗せ
https://this.kiji.is/600630102162375777

佐鳥電機<7420>、60人程度の早期退職者募集を発表
https://maonline.jp/news/20200130jp2

『佐鳥電機は30日、60人程度の早期退職者募集を内容とする特別転進支援施策を発表した。対象は同社とグループ会社の満40歳以上60歳未満で勤続10年以上(管理部門は満35歳以上)。』

ファミリーマートの早期退職に応募殺到、リストラ資料が明かす大混乱の裏側
https://diamond.jp/articles/-/227920

『ここに一束の資料がある。管理職社員の間で通称、“リストラマニュアル(以下・リストラ資料)”と呼ばれている代物だ。ファミマのリストラ計画の対象となるのは、勤続年数3年以上で、現場社員は40歳以上、本部社員は45歳以上が条件だ。』

ラオックスが希望退職者募集、新型肺炎流行で中国観光客依存の事業体制見直しへ
https://www.fashionsnap.com/article/2020-02-14/laox-colonavirus/

『募集の対象者は、ラオックスが販売専門職の正社員と契約社員、販売専門職以外で在籍する40歳以上かつ勤続2年以上の正社員および契約社員、シャディでは在籍する50歳以上かつ勤続10年以上の正社員および契約社員。』

上記以外にも、金融系や情報系の有名な会社でも行われている。
多くは業績を理由にしているが、その背景には事業構造の再構築もある。

従来型のビジネスモデルでは立ちゆかなくなるので、新しいビジネスモデルに合った人材を再配置したいという企業側の思いもあるのだろう。

40歳以上をターゲットにするのは「人件費が高くて切りやすいのが管理職。事業規模が小さくなるとマネージする人はそれほどいらなくなるります。その次は中高年のスタッフ職。年功制が残っているため彼らの人件費は相対的に高いからです」と言うのが本音にあるという。

しかし、40歳になるまで何も手を打たない状態で突然の切り捨ては組織力の低下を招きかねない。また40歳以上の社員のパフォーマンスの向上を放棄して切り捨てているという印象を持たれることは企業にとってブランドを傷つけかねない。

社員からも反乱を引き起こしかねない。「泥船から逃げ出す」様に優秀な社員から辞めて行くこともある。経営者は一考した方が良い。

社会保障を維持するためには、70歳まで働いてもらわないとという政治的な要請もあるのだろうが、それをあざ笑うように、40歳過ぎたら切り捨てるという「荒技」が横行しないことを願う。

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