『ペンローズが論じたように、企業成長に必要な人的資源、チェンジ・マネジメントは、企業特殊的である。当然の結果、こうした資源はどの時点においても、企業内での利用可能性によって制約されてしまう。換言すれば、経営能力は無限かつ無意識的に拡張することができない。拡大するには、高位の人的資源の新規採用・開発が追加的に求められる。』
(DYNAMIC CAPABILITIES & STRATEGIC MANAGEMENT とり引用)
企業の成長、イノベーションの創出、事業構造の変革などを目指す企業は、従来の経営資源では対応が難しく常に動的な変化を生み出すことが求められている。最近の経営学の教科書を見ると、そのように指摘されている。
新しい技術開発には単に働く環境などの入れ物だけでなく人財育成も欠かせないのだが、企業の人財育成に関する投資はどうなっているのだろう。
厚生労働省のデータからその一端を見てみよう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/00002075_000010.html
平成30年度「能力開発基本調査」の結果の報告で、概要として以下の三つをあげている。
1 教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は 56.1%。
2 企業のOFF-JT費用の労働者一人当たり平均額は 1.4 万円(前回 1.7 万円)、自己啓発支援費用の労働者一人当たり平均額は 0.3 万円(前回 0.4 万円)。
3 事業内能力開発計画の作成、職業能力開発推進者の選任を行っている企業は概ね 4 社に1社。
人財育成の投資がほとんど行われていないことが分かる。その内容を確認してみると、最も多いもので「新規採用者など初任層を対象とする研修(77%)とあるが、その次は50%にも満たない。その内容は、
・マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)
・新たに中堅社員となった者を対象とする研修
・ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識
・新たに管理職となった者を対象とする研修
・コミュニケーション能力
・法務・コンプライアンス
・技能の習得
・キャリア形成に関する研修
・品質管理
・財務会計
・プレゼンテーション・ディベート
・OA・事務機器操作(オフィスソフトウェア操作)
・工作機械・輸送用機器等の操作
・IT(システム開発、システム運用、プログラミング等)
・語学・国際化対応能力
(図26 実施したOFF-JTの内容)
とあるがとてもこれからのキャリアを実のあるものにする内容とは思えない。
企業の変革を促すという視点では下記のような考え方がある。
(1)経営の置かれている状況を感知する能力
例えば、情報収集力であったり,観察力、変化を読み取り「なぜ」を発する能力などがある労。
(2)可能性を見つける能力
テクノリジーに対する造詣が不可欠だろう。AIやDX,クラウド技術を含みIT技術の評価能力がなければ始まらない。同じように社会からのニーズの変化としてSDGs等に目を向けることが求められる。
(3)組織の運営力
前提としての経営や戦略、次世代リーダーシップなども求められる。
理念・ビジョンなども人を鼓舞するものが求められる。
「IhaveaDream」や「Moonshot」も構築することが求められる。
イノベーションを生み出すための人財の投資は、一つは純粋に優秀な人間を探し出してくることだが、一人ですべてを生み出すことはできない。脇役とも云うべき人財も必要になる。彼らは、特定分野での専門能力に優れ、学習意欲が高く、積極性も高いだろう。そうした人材を支援するための人材施策が必要になる。
そうした人材に必要な知識として最近ではリベラルアーツなどにも着目されている。従来型のOffJTとは一線を画すべきだろう。
こうした人材は市場に転がっているわけではない、育成という視点で投資をする必要がある。間違っても、コストと見なし「目先の金儲け」のために社外に流失して良い物ではない。
2020/02/24
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