「外国人の人材に関する報道について考える(企業戦略は変わるか)

2018年11月4日の時点では、まだ確定していない部分があるものの、おそらく従来の枠組みを拡張して、外国人の働く環境の整備が続くだろう。

外国人の就労、環境整備急ぐ 企業に支援や管理求める
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37328510S8A101C1MM8000/

の記事の冒頭で、下記の記載がある。

政府は2日、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案を閣議決定し、国会提出した。技能実習生らに限ってきた単純労働で初めて外国人の就労を認める内容。移民政策と一線を画しつつ、深刻な人手不足に対応する。来年4月の運用開始に向け、受け入れ体制の整備を急ぐ。

早ければ、来年から制度の運用が始まるかもしれない。
旧来であれば、短い期間/短い時間での働き方が前提であった技能実習生や留学生の働く場が増えるかもしれない。

すでに「外国人」の働きに依存している産業も多いと聞く。
単に出稼ぎという枠組みで考えるのではなく発想を変える必要がある。

職場には、日本人も外国人もおり、能力があれば上位職種に就けるという発想も求められる。

例えば、
外食店長、外国人に門戸開けるか
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/100501236/?ST=pc

に記事には、下記の例が提示されている。

7月12日。大手外食チェーンが加盟する日本フードサービス協会の髙岡慎一郎会長(人形町今半社長)が自民党本部を訪ね、食料産業調査会の会合で特定技能の在留資格に外食産業を含めるよう訴えた。
 特定技能に指定されるには、単純作業ではないことを認めてもらう必要がある。飲食店の従業員は食事を運ぶ仕事とみられがちだ。同協会は「これから必要なのは、店内の状況に合わせて柔軟に接客ができる人材や、人とコストの管理ができる店長を務められる人材。それを外国人に担ってもらいたい」と主張する。人材難が続くコンビニエンスストア業界でも、各社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会が新在留資格への追加を求める方針だ。

 日本人だから、外国人だからと言った区別をすることは時代遅れになるかもしれない。
 実際、給与面や社会保障の側面で日本人と差別をすれば人材など集まらないと考え、賃金体系や待遇面を外国人と日本人を同じにしている企業もある。

 しかし、こうした外国人の受け入れについて、一般の会社がノウハウを持っているわけではない。そこに目をつけたビジネスも始まっているようだ。

増加する外国人労働者 広がる受け入れビジネス
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/262664/101500264/?ST=pc

では、スタッフ調達で以下の記載がある。

オープニングスタッフが集まらないと頭を抱えていた時、望みをかけたのが「カタコトバイト」。カタコトバイトは、文字通り、日本語は苦手だが、アルバイトを探している外国人と、外国人労働者を採用したい企業を結びつけるインターネット求人サイトだ。求人の掲載料は無料で、採用が決まれば1人5000円の手数料を支払う。コストの安さも求人を出す動機につながった。
 開店までに集まったスタッフ34人のうち23人を外国人が占めた。国籍はバングラデシュ、ネパール、ベトナムと様々で、来日して3カ月たっていない学生も多かった。

 今回の、外国人の人材に関する法律とは直接対象とならない分野かもしれないが、すでに日本人だけに頼らないスタッフィング戦略が始まっていると考えられる。

 こうしたことは、外国人についてだけではない。
 いろいろな意味でダイバーシティを考える必要がある。
 外国人、高齢者、女性、障害者などの、いままでの日本人・男性中心の価値観だけではやっていけないだろう。
 しかし、ほとんどの企業は相変わらず危機意識はなさそうだ。
 あいかわらず、外国人を安い労働力と見ている節もある。

 こうしたことへの警鐘にもなるだろう。下記にその背景などが記載されている。

外国人労働者さらに十数業種で受け入れ拡大を検討  成長望むなら腰を据えて
https://www.businessinsider.jp/post-176632

 だが、外国人労働者抜きで回らない業態があるのは事実にせよ、実際の受け入れを世論がすんなり受け止めるかどうかは別問題だ。少なくとも日本社会において賃金停滞がこれほど論点化している時に「海外から安い労働力を輸入する」という政策選択をすることには、摩擦も覚悟しなければならない。普通に考えれば「人が足りていないのに賃金が上がらない」ということはあり得ないのだから、受け入れ拡大方針に疑義を持つ向きは必ず出てくるはずだ。
 こうした釈然としない現状をどう解釈すべきなのか。やはり「“賃金の低い”労働力が不足している」というのが実情に近いのかもしれない。さらに踏み込めば「大きく賃金を上げるつもりはない」という経営者側の思惑に突き当たる可能性もある。

 そのためだろうか、しばらく前までは「外国人労働者」という呼び方が多かった。
 しかし、彼らは「労働者」ではなく「一人ひとり名前を持った心あるひと」なのだということを自覚してほしい。
 企業が市場に提供する価値を生み出してくれるビジネスパートナーなのだ。

 そうした環境では、どのような人材がどのぐらい必要であり、そのための調達・教育・再配置・処遇・セカンドキャリアを含めたキャリア設計などの対応が必要になる。
 漫然と、大卒一括採用や困ったときだけの中途採用と言った無能な戦略は辞めるべきだろう。

(閑話休題 1)
今は普通にビジネスパートナーという呼び方になっているが、かつては「業者」という呼び方しかなく、「下請けごとき」という侮蔑が入っていた時期がある。

コンサルタントの支援はすでに20年以上やっているが、かつてデータの整理の仕方で打ち合わせの時に意見を言ったら、「業者は黙っててください」と言われたことがある。
お互いの信頼関係が壊れた瞬間だった。

外国人労働者という呼び方も、相手を軽んじた言い方になっていないか。
今時、社員を「労働者」という単語で呼ぶことはないだろう。
外国人も、「労働者」ではない。
ビジネスを一緒にやるパートナーと考えると、いろいろな記事の違和感が浮き彫りになる。

(閑話休題 2)
外国人人材が増えてくることにより、当社が進めている「社員満足度調査」「賃金シミュレーション」にどのような影響が出てくるだろう。
価値観の異なることを前提に、調査やシミュレーションの工夫が必要になってくることだけは確実だろう。

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